第32話引き下がるな

【引き下がるな】

やっぱりそう言われるとへこむ・・・・


どう言おうか考えていたら、裕子さんが話し始めた


「でもね、それだけで女性の1人住まいの部屋に男性を泊めると思う?


確かに、最初は失恋してかわいそうだからって思ったけど、だから最初は警戒したわよ、やけになって私を・・・って、ほんと次の日は寝不足で大変だった。


でも君は私に手を出さなかった、それからもずーっと私に手をださなかった。


すごい信用できると思ったわ、それからは気持ち良い朝を迎えられた。


だから大晦日も誘ったの、そうね、大晦日は2人でゆったり心地よく過ごせたわね。


それに不倫の噂の時も、私のためにがんばったよね」


「・・・はい」


「うれしかったわ、……あのね私、今まで本気で好きになった男性ってないの、だから自分でもよくわからないんだけど、克己君と一緒にいる時は、落ち着くの、最初は信頼できる弟みたいな。

最近だけど、1人の時は無機質な感じがしてなにか殺風景なんだけど、君といるときは、心が和むっていうか、安らぐ感じがするの、これって好きになったのかな~」


「そうです、それが好きって事です、裕子さんは俺の事が好きになってるんです、だから……」


「ストップ!」


「勝手に話を進めない!わかったから、克己君の気持ちは良くわかった、でもね、まだそんな気分じゃないの、っていうか・・・やっぱり×2はね、慎重になるのよ」


「そうですか・・・わかりました。じゃあ、もう1度聞きます。


告白されて、俺を見る目が変わりそうですか? 


俺を弟じゃなく男性として見たらどう見えますか?」 


「そうね、君はイケメンじゃないもね」


「うっ、 そうはっきり言われると、事実でもへこみます」 


「でもね、カッコイイよ」


「イケメンじゃないけどカッコイイって、スポーツがすごいとかですか?」


「ううん、そのカッコイイとは違うの、私にとってのカッコイイなの」


「すみません、何が違うんですか?」


「私なりの解釈だけど、大人の男性で言うなら『素敵』かな、ただ見た目が良いのがイケメンよ、でもこれ一番つまらない男で、軽かったり、自分本位で強引だったりして、見た目だけの信用できない人が多いわ、スポーツのカッコイイも、スポーツしている姿がカッコイイ、プロから誘われた、日本代表候補とか結局は、見た目と肩書じゃない、君は顔はイケメンより堕ちるしそんな肩書もないけど、何より性格とか姿勢・態度とか中身が良いのよ、わたしのための行動してくれた事も、とても信用できる。

『素敵』の方のカッコイイが本当の意味でモテルと思う、克己君ってもてたでしょ」


「いえ、そんなことないです。学生時代はやっぱりイケメンがもててました」


「でも、それってやたらテンションの高い派手なグループの中にいたり、不特定多数の女子がキャーキャー言ってたり、告白したり、バレンタインデーでチョコレートを十数個とかもらったとか、そんなのでしょ。 

克己君の場合、同じ委員になったとか、同じ係になった子とか、仲良くなった子に告白されなかった?バレンタインデーのチョコもそうやって親しくなった子からとかじゃない?」


「そうですね、そういう言われてみれば、そうだった気がします」


「チョコも義理チョコ、って言われてもらってたでしょ」


「はい」


「でもね、それ、本当は本命チョコよ、その子はきっと チョコは家族と君だけしか用意していなかったと思う」


「私が学生の時もいた、陽キャ、っていうんだっけ?恥ずかしい話だけど、私も、その連中に囲まれてた。


だから後になってわかったんだけどね、どんな人がカッコイイのか。


その時知ってたら私も人を好きになってたかもしれない。


私から見ると、君はカッコイイわ、とても『素敵』」




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