第33話うれしい

【うれしい】

「裕子さんにそう言われると、なんだかうれしいです。」


「……あの、裕子さんがくれたチョコは、どっちなんですか?」


「……会社の人にチョコ配ってるけど、後で君にあげたチョコは他とは違うチョコだったでしょ?」


「はい、わかってましたけど、俺、あれです」


「何?」


「あの、裕子さんは俺の事、弟みたいにしか見られてないのかな って思っていたので」


「ごめんなさいね、私、恋愛経験も本当に好きになった事もないから、こんな言い方しかできなくて」


「それじゃあ、改めて、裕子さん、結婚を前提に、真剣に僕と付き合ってもらえますか、」


「ごめんなさい」


「えっ? ダメですか?」


「ごめんね、私、今年32歳で ×2 だから慎重にって思ってるの。

本当は一生独身かなって覚悟していたから、それに君はまだ20代で初婚でしょ、だから私なんか対象外って思ってたの、その君からこんな事言われてちょっと驚いてるし、好きっていう気持ちがよくわからないから、ちゃんと君の事好きになれるかな、とか もし結婚するならこれで最後にしたいとか、色々考えちゃって、簡単に付き合うとか結婚を前提とかまで今はまだわからないのよ」


「でも、俺の事、カッコイイって思ってくれてるんですよね、『素敵』なんですよね」


「うん、そうよ」


「今まで、身近で、そう思った男性っていなかったんですよね」


「そうね」


「じゃあ、結婚前提っていうのはなしで良いです。うまく行ったら結婚もありかなってくらいでもかまいません、俺と付き合ってくれませんか」


「そんなのでいいの?」


「はい、裕子さんの事情を聴いたから。

だから、だんだん好きになってくれたらって思ってます。

裕子さんと付き合いたいです。ちゃんと彼氏と彼女の付き合いがしたいです」


「うん、私も彼氏と彼女の付き合いって言うの?

 経験してみようかな」


「それじゃあ、よろしくお願いします」


「はい、よろしくね」


「あの~」


「何?」


「気になっていることがあるんです、聞いても良いですか?」


「いいわよ」


「齋藤部長の事です」


「あ~ 」


「はい、時々裕子さんのところに来ますよね、裕子さんは橘専務の名前を使って断っているようですけど・・・」


「気になる?」


「はい」


「そうよね」


「噂ですけど、齋藤部長は全国に色々とその~いるような噂がありますよね」


「そうなのよね、噂だから本当かどうかわからないけど・・・」


「いつもなんて言ってくるんですか?」


「うん、普通に食事とかのお誘いなんだけど・・・橘専務との噂を聞いて、そっちの方もね・・・」


「やっぱりそうですか」


「一応創業者一族だから・・・」


「折れちゃあダメです、俺が絶対守ります」


「うん、そうね、ありがと」


「ねえ、本当に私でいいの?」


「はい、裕子さんが良いんです。よろしくお願いします」


「はい、改めて よろしくね」


「じゃあ正式に俺と付き合うというか、その裕子さんの意志の確認というか、キスしていいですか?」


「えっ?」


「恋人になった証のキスです」


「・・・でも・・・」


「普通のキスです、恋人になったらちゃんと恋人のキスがしたいですけど、今は我慢します、だから」


「本当にチュッだけだけだからね」


「はい」


本当に軽いチュッだった。 


海外だったら挨拶でかわすようなチュ 

だけど、ちゃんと口と口のチュ、

俺にはとても意味のあるものだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る