第16話ハイ、狙ってました
【ハイ、狙ってました】
それからは、橘専務からの内線は気にならなくなって、むしろ橘専務からの内線がないと心配になるくらいで、齋藤部長には異常なくらい聞き耳を立て、夜、帰りの際、こっそり裕子さんに聞きに行ったりするようになった。
あいかわらず、平日は遅く、土日出社の平日休み、裕子さんも同じ、決算はとっくに終わっているけれど、全国の店舗が深夜まで営業しているから本部も当然そうなって、残業の毎日なんだけど・・・
時々終電間際になって、裕子さんも残っているとき、明日が休みの時は、わざと終電に間に合わないようにして、裕子さんに声をかけてもらうのを待っている。
裕子さんも、明日が休みという時は俺に泊まっていく? って声をかけてくれ
「はい、ありがとうございます」
「狙ってた?」
「はい」
「それじゃあ、これからは、高谷君からも声をかけてよ」
「いいんですか?」
「もちろん」
「ありがとうございます」
「じゃあ、明日は休みだし、部屋で飲もっか」
「はい!」
裕子さんのマンションには俺のルームウェアが1着、そして替えの下着、シャツが一式おいてある。
当日着ていた服は、裕子さんが洗濯しておいてくれて、泊った次の日が会社の時はそれを着て一緒に出社する。
洗濯はいいですって言ったけど、だって靴下とかパンツだよ……
でも『私×2よ、それくらい平気、慣れてるから』って、恥ずかしいし、なんか申し訳なくって
でもまったくそんな素振りもなく平気で言ってくるもんだから、それ以上はなにも言えず、お言葉に甘えてる。
だから俺が泊るときはスーパーの買い物は全部俺が出すという事で話はまとまったけど、会社では裕子さんはその噂があるので、誰も近寄らず、俺だけが裕子さんの知り合いというか友達というか、そんな関係。
でもどちらかというと会社の同僚で後輩と言うより、弟とか従弟とか そんな感じなんだろうな。
それでもうれしいんだけど・・・。
何度も言うが、彼女はとびっきりの美人で体つきがエロっぽくて×2で、第一印象はクール、でも性格は二重丸!!
うわさもあって、誰とも一緒に行動する事がないし、ボッチの中途入社で、よく1人で残業していたり、特にクリスマスイブや年末年始にも仕事しているので、橘専務の愛人で、橘専務とラブホ街を一緒に歩いていたとか、齋藤部長が目をつけているから近寄るなとか悪い噂が流れているけど。
俺は、あれから何度か彼女のマンションに行って泊まった事があるけど、俺とはそういう関係はまったくなく、それに、裕子さんの言う通り、俺以外の男性が泊った形跡がなかった。
あの時受け取ってもらった高いバッグも、そういうプレゼントだろうと噂を助長している原因だったので、ちょっと申し訳ない気持ちもあったけど・・・・少なくともあいつを除いて。
それからも、何度も泊めてもらうようになり、時々だけど休みの前日の時は、俺から泊りに行ってもいいか聞けるほど仲良くなった。
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