第15話自分の気持ち

【自分の気持ち】

 それから、いつものようにビールを飲みながら雑談。


『今度、ルームウェアも持ってきたら』って言われて、その一言がうれしくて。


「ねえ、私が橘専務と不倫していたら、どうしたの?」


「柴田さんを説得して、その関係を精算してもらおうと思ってました」


「そう?」


「はい」


「どうして、そんなに?」


 ・・・今、自分の気持ちがはっきりとわかった。


 俺は裕子さんが好きなんだ、裕子さんが不倫していてもそれでも好きなんだ、だから・・・自分の気持ちがはっきりわかっていないのに、思わずあんな行動をとっていたけど、裕子さんに言われてはっきり分かった。


 でもヘタレな俺、この気持ちをそのまま言うにはまだ・・・


「裕子さんには、お世話になっているから、優しくしてくれるし、とても良い人だから・・・だから」


「そう?」


「・・・はい」


「まあ、いっか、ありがと」


「はい」


 とても気持ち良い、


 眠くなったので心地よく寝て、朝とてもすっきりした気分で起きると、裕子さんが朝食を用意してくれていた。


「高谷君、起きた?おはよう、朝ご飯できているから顔洗ってきたら?」


「はい」


 それから俺は、自分の気持ちがはっきりした。


 会社では今まで通り、休み前には


「裕子さん、軽井沢、楽しんできてください」


「うん、お土産買ってるね」


「ありがとうございます」


 橘専務の事がわかって安心してけど、そうなると今度は齋藤部長の事が気になりだした。


 あいつ、本当に裕子さんを狙ってるんだ、それから俺は会社で齋藤部長の事を調べた。


 裕子さんは橘専務との噂のままの方がそっち目当てのいやらしい連中の牽制になるからと言って放置しているし、たしかに、もし俺が地位も年収もそういう立場でどすけべだったら、目の前に裕子さんほどの美人で×2でおまけに1人者だとしたら、そういう目で見てしまうだろう・・・俺も人の事は言えないけど・・・、


 そんな事を思いながら、噂をそのまま信じている振りをして、齋藤部長の事を調べる事にしたけど、


 ただやみくもに齋藤部長の事を調べると、それはそれで目立つ『高谷、お前も紫田さんを狙ってるのか?』


 なんて俺が何かたくらんでいるように思われる。


 まあそれだけならいいけれど。


 そのことが、裕子さんに波及するかもしれないと思って、あくまでも野次馬のような体で、齋藤部長が裕子さんのところに来たタイミングで佐々木係長に聞いてみようと思った。


 いつものように齋藤部長がふらふら経理本部のフロアーに来て裕子さんのところに、


『今晩一緒に飯でもどう?』あいかわらず・・・


 裕子さんは橘専務と会う約束があると言って断る。


 それじゃあまた今度ね、と中年イケメン(もどき)スマイルで、そう言って齋藤部長が消えた。


 このタイミングで佐々木係長の所に、


「係長、齋藤部長ってどんな人なんですか?」


「どんなって?」


「なんか見た目がすごいっていうか、柴田さんの所に来て何かしているみたいだから、橘専務をも恐れない何かがあるのかな?って思ったんで」


「ああ、そういう事か、社長の従妹の旦那だよ、つまり会長の姪っ子の旦那、だからやりたい放題なんだよ、すっげ~派手で若作りしているだろ、おまけに服もすっげえ高そうなの着てるし、創業者一族だからな。

 そんなんだからあれで全国の店舗統括部長も兼務して、しょっちゅう出張に行ってるんだけど、どうも、支店や店舗の女に手を出しているって噂だよ」


「そうなんですか、でも柴田さんって橘専務のアレっすよね」


「ああ、橘専務は創業者一族じゃないけど、会長や社長と絶大な信頼関係があるから、柴田さんに声はかけるけどそれ以上手は出せないでいる。って感じかな」


「なるほど、そうなんですね」


「ああ、まあ俺達とは違う世界のどろどろした話だわな」


「そうですね」


「ある意味、柴田さんは気の毒なのかもしれないけど」


「はあ」


 そういう事だった、強いバックがいたんだ、だからあんなに強引なんだ・・・きらいなタイプ・・いや、だいっきらいな奴。


 絶対齋藤部長から裕子さんを守る。


 まだ好きだと告白してもいないのに、裕子さんの気持ちも確認していないけれど1人で勝手に決意していた。


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(一歩間違えるとストーカーだよねな、気をつけなきゃ)

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