第3話冷静な俺?

【冷静な俺?】


バッグ買っちゃったよ~どうしよう……


あんなの見た後なのに妙に落ち着いている俺……


そのまま会社に戻って・・・普通に仕事をして家に帰った。


驚くほど普通に仕事ができた、家に帰っても泣かなかった。


ここ半年、ほとんど会っていなかったし、最近は、まともに話もしていない。


数か月前からはRINEのみの関係が続いたから、このままだと愛想つかれるな~とは思っていたところに、あの現場を見たから。


・・・・・・なんとなく自分でも覚悟していたんだろうと思う。


確かにショックだった。


だけど、どちらかと言うと “やっぱり” という気持ちと、今まで彼女に時間が取れなくて申し訳ない、 という気持ちから解放された、ほっとした、情けない俺。


せめて直接フってくれた方がすっきりしたのにな~、電話しようか・・・なんて思っていても結局何もせず、次の日、ただRINEで “お幸せに” と打って、しばらく様子を見たけどその日は既読にならず翌日既読にはなっていたが返信はなかった。


あっけないな~


それ以来仕事一筋・・・なんてかっこ良いものではなく、残業の嵐の社畜生活を過ごす毎日。


 学生の頃はいろんな趣味があった、フットサル、スノボ、車も持っていたし冬はスキー場、夏は海、キャンプ、当然彼女とドライブや温泉旅行も行った。


皆でバーベキューもした。


それが、いつの間にかスポーツはしなくなっていたし、車も処分してしまい、もっぱら移動は電車。


スノボやウェアなんてもう型が古くて、ただ部屋を狭くしているだけのお荷物で捨てる手間が面倒で…どうしようかなんて思うくらいに・・・・・・


毎日残業でおまけに変則休日だと、学生時代の友達とも会わなくなるからどんどん会社という狭い世界だけの生活に。


そうなるとだんだん無表情化、感情がなくなってしまうのかな~、なんて考えるようになっていた。


元カノと新しい男との現場を見た帰り、会社に戻って仕事をしていると、俺以外に彼女も1人仕事をしているのに気づいた。


彼女の名前は裕子さん、たしか30代前半で×2。 


クールな印象でとびっきりの美人でエロいスタイルの持ち主。


それまでは職場の廻りに誰がいるかなんてあまり気にしていなかったけど、そんな事もあってこんな日に仕事している人ってどんな人・・・


と思っていたからちょっと驚いた。


その頃すでに、裕子さんには、あまりよくない噂があったから、こういう日はぼっちなのかな~とか思って気に留めなかった。


彼女は年末年始も出勤していたけど、噂の相手は家族持ちだからこの時期は1人か?なんて考えたりしていたけど、まあ、あれだけの美人で、クリスマスイブに残業して年末年始も出勤だから噂は本当なのだろう。 


そういう人だから、男女の事は俺より詳しいよな~なんて思って、声を掛けたら普通に感じ良い人でちょっと驚いたけど、それからは気楽に話かけてくれ、年末年始は、なんだかんだ言ってずーっと裕子さんと話をしていた。


年上で×2の経験者、さすがに落ち着いている。


明らかに俺にとって人生の先輩たる貫禄があり、雑談はいつの間にか俺の人生相談にまで及んでいて、元カノとの一連の話も裕子さんに相談していた。


裕子さん曰く、6:4で彼女が悪いって慰めてくれたけど、俺の行動についても叱られた。


『会えなくてもこまめに連絡したり、自分の休みの日は彼女が仕事でも彼女の家に行ったり2人の時間を作る努力をしなかったのはダメ、そんなことしてたらこれから新しい彼女ができても、浮気されて振られるよ』 って、


『でもやっぱ彼氏がいるのに他に男と一緒にそういう事はしちゃいけないわね、何もなかったとしてもそれはダメじゃないかな』だって、


『浮気だと思ったのなら、なんで怒らなかったの?』とも言われた。


結構真剣に・・・


その時は、あのうわさの人=裕子さんに、浮気はダメ、って言われてもな~、不倫ならいいのか?・・・と思いつつ、何も言えず、言われるまま頷いていた。


それでも、そういう事もあって、自分の中ではかなり親しくなったつもりで、元カノに渡しそびれたバッグを、裕子さんにもらってほしいと言ってプレゼント(?)しようとしたところ、こんな高いバッグ、ブランド買取とか質屋に売ったら? 簡単にベルカリにでも出品してもいいんじゃない?とか言われ断られた。


俺自身、質屋に持って行ったり、ペルカリに出品する手間が面倒だったし、そんなのに時間をかけるくらいならせっかくの休み、家でごろごろしていた方が疲れもとれるし、それにそれほどお金に困ってない(というより使い道がないだけだけど)。


それよりも年末年始の寂しい職場で話し相手になってもらった美人でエロイ裕子さんにちょっと下心もあって(噂が本当なら・・・もっと親しくなりたい)


「この会社にいる限り、ベルカリの出品作業や質屋に行く暇なんかないです。

このままだと、このバックが、単なるお荷物になってかわいそうなので、どうかもらって使い倒してください」 


とお願いしたら。


「じゃあ、克己君からのクリスマスプレゼントという事でもらうわね、ありがと」

「いえ、こちらも、もらってくれて助かります、ありがとうございます」


いわくつきではあるが、裕子さんにクリスマスプレゼントとして受け取ってもらった。


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