第13話 覗き好きな勇者と近所のお姉さん
色々な世界から最強の勇者がやってくるのだけれど、俺とまともに戦えるような勇者は誰一人として現れなかった。多少は期待もしていたのだけれど、究極極楽モードの影響力は凄まじいものがあり、勇者や敵対する魔王にかかっているチート能力もすべて無効化してしまうのであった。そんな事もあって俺は相手の技を全て受けきってから倒すという事が定石として確立されてしまったのだった。
俺が戦っている姿はサキュバスとインキュバスのネットワークを介して多次元の世界にも広まっていったのだが、その事が幸か不幸かわからないが世間が俺に対する印象は物凄くエッチが上手い魔王から物凄くエッチが上手くて相手の良さを全て引き出してから叩きのめす魔王に変わってしまったのだ。俺は相手の力を出し切らせたうえで勝つというのは最強のプロレスラー見たいだなと自分でも感じてしまっていた。
俺に戦いを挑むような奴も今では月に数人いるかどうかという感じになっていたので、今日もそんなに期待はしていなかった。そんな時に今まで見たことも無い弱そうな勇者が俺のもとへ単身乗り込んできたのだ。見た目からは一切強さを感じず、その内面からもまるで戦う意思を感じさせない風体ではあったのだが、それが逆にこの勇者が強いのではないかと思えてしまっていたのだ。
だが、そんな俺の予想は全く当てが外れていて、この勇者は見た目通りに強くはないのであった。戦いが起こることがほとんど無いとはいえ、単身魔王城に乗り込んでくるような勇者なので弱いという事もないのであろうが、俺に戦いを挑んできた勇者の中では群を抜いて弱い部類に入ってしまうのであった。
「勇者が単身でここに乗り込んできたのは久しぶりなのだが、お前は魔王であるこの俺と戦おうというのか?」
「戦わないと話って聞いてもらえないもんなんですかね。でも、俺って全然強くないから戦ってもいい勝負にすらならないと思うんですよね。それでも戦わないと話を聞いてもらえないって言うんだったら戦いますけど、完全に時間の無駄でしかないと思うんですよね。それでも俺と戦ってくれるんですか?」
「いや、別に戦わないと話を聞かないとかそう言うのは無いんだけど、お前って勇者だよな?」
「一応勇者ですね。こう見えても俺が呼び出された世界の魔王は倒してるんですよ。でも、その世界ってここと比べるのも失礼なくらい戦闘が無くって、ほとんどボードゲームで勝敗を付けるような世界だったんですよ」
「そんな世界もあるのか。お前はゲームが強いのか?」
「いえ、全然強くないです。むしろ、ボードゲームとかやったことなかったし、コンピュータゲームばっかりやってました。でも、俺って要領が良かったんでなんとかかんとか勝つことが出来たんですよ。ま、ストレートに勝った事なんて一度も無くて、俺が勝つまでやらせてもらえてたってのもあるんですけどね。なんでかわからないけど、俺が呼び出された世界って勇者に勝つよりも負けた方が箔が付くってとこだったんです。ぶっちゃけ、それで俺が勇者だって言われても全然自覚なんて無かったんですよ。それに、そんなぬるい世界しか知らない俺がかの有名な魔王アスモさんに勝負を挑むなんてありえないですよ。だから、俺は出来ることなら魔王アスモさんとは戦いたくないんですよ」
「そんな世界もあるのか。俺がその世界に呼ばれてたら今以上に退屈だったかもな」
「え、魔王アスモさんってこの世界だけじゃなくていろんな世界でも有名なのに退屈なんですか?」
「俺はさ、この世界に呼ばれた時に勇者か魔王の好きな方を選べって言われたんだよ。で、死んだらまた選び直してイイよって言われたんだ。最初の頃は何もわかってなかったんで一番難しい難易度を選んでみたんだけど、その時は初期状態の魔王が伝説の勇者達に囲まれている状態でスタートしたんだけど、何も出来なくて終わっちゃったんだ。その次に難易度を下げてやり直してみたんだけど、その時に選んだ難易度が間違いだったんだ。死んだらまたやり直せるんだけど、どうやったって俺は負けないような難易度になってしまったんだよ。それだけだったらまだ戦ってても楽しいって思えるんだろうけど、俺が戦ってる時って俺の意思とは関係なく体も心も反応しててさ、戦ってるって感覚も無いし戦闘をスキップしてリザルトも確認してないって感じなわけよ。そんなんじゃ魔王になった意味もないし、負けることも無いから楽しくもないんだよね」
「それでか。俺って魔王アスモさんが戦ってるところを何度か見たことがあるんですけど、戦ってる姿が絶対に勝てないイベント戦みたいだなって思ってたんですよね。どうしてそう思ったんだろうってずっと考えてたんですけど、その疑問が今解けました。そりゃどんだけ強いスキルを持ってたとしても、負けイベだったら絶対に勝てないですもんね」
「そう言う考えもあるのか。俺の場合は勝ちイベで絶対に負けないって事だもんな。それはどっちも楽しくないって思えるよな」
「その後に本気の勝負とかあればまた別だとは思うんですけど、魔王アスモさんって同じ相手と何度か戦った事ってあるんですか?」
「同じ相手と戦ったことはあるけど、どんな風に戦ってたかって覚えてないんだよね。気が付いたら相手が血だらけになってたり死んでたりってのが多いからな」
「そうなんですね。でも、それって戦闘の時だけですか?」
「と言うと?」
「エッチの時もそうなのかなって思いまして。恥ずかしい話なんですが、魔王アスモさんがやってる姿を何度も見てるんですよね。その時って俺が見た限りでは魔王アスモさんも楽しそうにやってるなって印象なんですよ。戦闘の時はクールな戦闘マシーンみたいだとも思ったんですけど、エッチの時は伝説の男優みたいだなって思ってました」
「どっちの印象も良いのか悪いのかわかんないけど、俺がやってるところをそんなに見てるの?」
「他の世界がどうかわかんないですけど、魔王アスモさんがやってるところの映像は結構な値段で売ってましたよ。俺は勇者だったんでそれなりに収入があったんで全部買うことが出来たんですけど、周りの人達はそうでもなかったんじゃないかな。俺みたいに個人で所有している人はほとんどいなかったんですよね。たくさん持ってることが一種のステータスみたいな感じにもなってましたよ」
「俺的にはどうでもいいことなんだけど、それをたくさんの人に見られることでサキュバスが喜ぶことになるらしいんだよね。そういった意味では、高い値段で気軽に買えないってのは良いこととは思えないんだけどな」
「たぶんなんですけど、この世界のサキュバスと俺のいた世界のサキュバスがあんまり仲が良くなかったんじゃないですかね。そう言うのあるって他の勇者から聞きましたもん。そいつがいた世界では無料でエロ動画を楽しめたって言ってましたし、新しくやってきた勇者は魔王アスモさんがちょっとだけエロい漫画になって隠れたブームになってたって聞きましたよ」
「魔王モノってやつか。俺がいた時はそう言うのってあんまりなかったかも」
「そうでしょうね。俺のいたとこもそう言うのって無かったと思いますよ。でも、それだけ魔王アスモさんの影響力が凄いことになってるって事なのかもしれませんね。それか、俺が知らないだけでそういった種類のもあったのかもしれませんがね」
「ところで、お前って世間話をしに来たの?」
「違いますよ。魔王アスモさんにお願いがあってきたんです」
「お願いって、どんなの?」
「俺って、一応仲間がいるんですよ。その仲間ってのが、俺と一緒に呼び出された幼馴染のお姉さんなんですけど、そのお姉さんが魔王アスモさんとやってるところを見たいなって思ったんです。そのお姉さんってのが特別美人ってわけでもないですし性格も口も悪くて周りの大人たちからは煙たがられてたんですよ。別に俺も好きだとかそう言う感情は無かったんですけど、時々遊んでもらってたんで仲は良かったと思うんですよね。でも、今にして思えばお姉さんは誰からも相手にされてなかったから俺と遊んでくれてたんじゃないかなって思うんですよ。俺は別にそのお姉さんのことが好きでもないし嫌いでもないんですけど、そんなお姉さんがエッチしている姿を見てみたいなって最近思うようになってまして、どうせなら有名な人が相手だといいなって思ったんです。ほら、女優も男優もちゃんと知ってる人だったら興奮するじゃないですか。魔王アスモさんの事は映像でしか知らないけど、たくさん見てきたんだからある程度は知ってるって言ってもいいと思うんですよ。そういう意味では俺はお姉さんよりも魔王アスモさんの事の方が知ってるって言えるかもしれないですね」
「別に俺がそのお姉さんとやるのはかまわないんだけど、そのお姉さんの了承は?」
「もちろん取ってないです。俺が魔王アスモさんに挑むってのはこの世界に来たんでわかってると思うんですけど、俺が魔王アスモさんに負けた場合にお姉さんがどうなるかなんて考えてないと思うんですよね。普通に戦ったら俺が負けるってのは分かってると思うんですけど、それだとお姉さんはここに一緒に来てくれないと思うんですよ。で、相談なんですが、俺との戦いは普段と違ってボードゲームで勝負をつけてもらえませんかね?」
「ボードゲームで戦うのは良いんだけど、俺はルールとか知らないよ」
「それは大丈夫です。俺が持ってきたゲームのルールをまとめた冊子をお渡ししますので。と言っても、運要素が強いものばっかり持ってきてるんでルールがあやふやでも何とかなると思いますよ」
「そう言うもんなのか。ちなみになんだけど、そのお姉さんって美人じゃないんだよね?」
「元の世界では美人じゃなかったですけど、転生してからは凄く美人になってますよ。俺は元の姿も性格の悪さも知ってるんで好きになったりしないんですけど、俺が呼ばれた世界では美人アシスタントって言われてましたよ。見た目は凄く良くなってると思うんですけど、本当に性格が悪いんで付き合うとか結婚するとかは無いと思いますね」
「性格が良くないってのは考え物だけど、俺はそのお姉さんと長く付き合うってわけでもないし気にしないでおくよ。ところで、名前を教えてもらってもいいかな?」
「俺の名前はヒトシです。アシスタントのお姉さんの名前はウサミです」
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