第4話 とりあえず、魔王になってみた ボーナスステージ自粛版

「早く始めたい気持ちはわかるけれど、これから簡単にボーナスステージの説明をさせてもらうよ。魔王アスモ君は今回魔女優子を捕らえることに成功しました。別に捕えないでそのまま他の人みたいに殺害しても良かったんだけど、君はあえて女の子だけを捕まえちゃったみたいだね。その気持ちはわかるよ。でも、捕まえただけで君は満足出来るのかな。そんな事ないよね。じゃあ、せっかく魔王としてこの世界に君臨しているわけだし、君の欲望の赴くままにあんなことやこんなことを試してみてはどうかな。君には相手の弱点を自動的に見抜く能力があるんだけど、それは戦闘だけじゃなくてこんな時でも役に立っちゃうんじゃないかな。この子がどんなことをどの程度の強さでどれくらいの時間責められると弱いのか、君ならわかっちゃうよね。それに、君は相手に合わせた最高の道具を魔法で作り出すことも出来ちゃうんだぜ。君の作り出した道具は目の前にいるその子の為だけの一点物なんだぜ。つまり、君が見抜いたその子の弱点を的確につくことの出来る専用アイテムって事だ。魔法で作り出すって言ったって心配しないでくれ。君の魔力量なら一晩中アイテムを作り続けてたとしても枯渇することは無いさ。その前にこの子が死んじゃうことになっちゃうかもしれないから無理はしないようにな。さ、前置きは長くなっちゃったけど、ここからは君が思うままに楽しむ時間だぜ。最後に自己紹介だけさせてくれよ。俺は名も無きインキュバスさ。魔王アスモ君が捕らえた女の子が絶頂を迎えるたびに君の貢献度が上がっていくんだが、その評価を担当させてもらう事になっているのさ。相手が男の子の場合は俺ではなく名も無きサキュバスが担当することになるんだが、君が男の子に興味がない事を願っているよ。出来ることなら俺だけが君の担当でありたいからね。じゃあ、女の子もこれ以上待っていられなさそうなんで、早く楽にしてあげなよ。やりすぎないように注意しておいてね」


 ボーナスステージの説明をしてくれたインキュバスはどう見てもおじいちゃんのようにしか見えなかったのだが、その笑い顔は俺にとっては生理的に受け付けられないものであった。

 魔王城の奥に用意されている特別監禁室に魔女優子はいるようなのだが、そこまで歩いていくのも緊張してしまう。先ほどの戦闘は正直に言えば何が何だかわからないまま終わってしまったので緊張などする暇もなかったのだが、これから俺が魔女優子に行う行為を考えると、命のやり取りをするよりも何倍も緊張してしまっていた。もっとも、俺に与えられた力のお陰で戦闘は何の苦労も無かったわけなのだが、上手に出来るかと心配になってしまっていた。

 魔王ともあろうものがそのような考えで良いのかと思ってしまうのだが、女性には優しく丁寧に接してあげるのも魔王の務めなんだと自分に言い聞かせていた。とらえた女を丁寧にもてなすのも魔王の責務であるのは間違いないだろう。

 俺は柄にもなく緊張してしまっているのか、特別監禁室の扉の前で立ち止まって緊張を解くかのように深く深呼吸をしていた。いったん落ち着こうと思って覗き窓から仲の様子をうかがってみたのだが、そこには魔女というよりも妖精と呼ぶべき可憐な少女が手枷と目隠しをされた全裸の状態でベッドに横たわっていた。

 その姿を見た俺の心臓は異常なテンポで鼓動を始め、全身が熱くなるのを感じていた。さっきまで見ていたのと全然違うじゃないか。あんなに透き通るような肌をしているなんて思いもしなかった。そもそも、あんなに幼い見た目ではなかったと思うのだが、いつの間にか他の人と入れ替わったのか?

 俺はその疑問を確かめるためにも早く特別監禁室の中に入ろうと思ったのだが、どういうわけか俺の手は扉を開けることが出来なかった。力が無いわけでもないし、鍵がかかっているわけでもないのだが、俺は何故が扉を開けることが出来ずにいた。自分自身を落ち着かせる意味もあって引き返そうと思っていたのだが、不思議な事に扉から一歩離れると大きな音を立てながらゆっくりと扉が開いていった。

 ベッドに寝そべっていた魔女優子は大きな音を立てて扉が開いたことに驚いてベッドの端に身を寄せているのだが、手枷がベッドの端に繋がれていて手は俺に向かって伸ばしているような格好になっていた。


「お前はこれから何をされるかわかっているのか?」

「え、その声は魔王様ですか?」

「そうだ。我こそが魔王アスモである。そなたはこれから自分の身に何が起こるか理解しているのか?」

「はい、恥ずかしながら理解しております。ですが、あなたが私を満足させることなど出来ないと思っております。なぜなら、私は今まで一度も気持ちいいと思ったことが無いのです。演技をしたことは何度もありますが、私が今まで誰かに満足させてもらったことなどないのです。私はたとえ死んだとしてもあなたに屈するような女ではないと理解してくださいね」

「それって、この世界に転生する前は満足するようなエッチをしたことが無いって事?」

「そうですけど。なんか急にフランクな感じになってませんか?」

「まあ、俺もそんな意味では誰かに満足させてもらったって経験は無いんだよね。口でしてもらっても気持ちいいとは思っても、自分でした方が早く絶頂するって言うか、その行為自体じゃなくてしてもらっていることが気持ちいって思ってただけかも」

「あの、言ってることは何となく理解出来るんですけど、急にキャラが変わってません?」

「俺もさ、この世界に転生して魔王になったから君達と立場が違うだけで同じようなもんなんだよね。実を言うと、俺は魔王になるのが二回目で、一回目は何も出来ずに死んじゃったのよ。結構ゲームとかやってたからやれる自信はあったんだけどさ、一回目の時は理不尽な死に方をしちゃったんだ」

「理不尽な死に方と言えば、私の仲間だったマモルとアキラもあなたに理不尽な形で殺されたと思うんだけど」

「それはさ、申し訳ないんだけど俺も力の使い方をわかってないわけよ。魔王として何が出来るかわかってないって言うか、これから色々と試していく段階なんだよね。だから、もしよければなんだけど、君も魔女として俺の側で働いてみない?」

「ええ、これから私にイヤらしいことをしようとするあなたがスカウトなんてするの。ちょっと信じられないんだけど。でも、あの戦い方を見てて私じゃ絶対に勝てないんだろうなって思ったもんな。最強の核爆魔法でもダメージが無かったみたいだしね。ちょっと考えてみようかな」

「無理にとは言わないけどさ、もしもよければって事で」

「そうね。じゃあ、あなたが私を満足させてくれるんだったら考えて見てもいいわよ。でも、私って今まで誰が相手でも満足したことってないから無理だと思うけどね」

「そうだったね。出来るだけ頑張ってみるよ」

「楽しみにしてるわ。でも、目隠しってちょっとワクワクしちゃうかも」


 俺は別に自分の腕に自信があるわけではないのだけれど、相手の弱点を見抜くことが出来るという能力のお陰で何となくいけそうな気がしていた。

 優子は口では強がっているようなのだが、体が以前壁際に引けているので俺に恐れを抱いてはいるようだ。俺がベッドに乗ると同時に優子の肩に力が入ったのがわかった。明らかに俺を警戒しているようなのだが、最初はその警戒心を解くことにした方がいいだろう。

 俺は優子の手を優しく握ったのだが、優子は手と足の指先に力を入れていた。その証拠に手と足の指先が両方とも力強く閉じられていたのだ。

 そんな風に怖がってては気持ちよくなれるものもそう思えなくなると思い、緊張が少しでも和らぐようにと俺は優子の体を優しく包み込むように抱きしめた。そのまましばらく抱きしめていると緊張が解けたようで、優子の肩に入っていた力が抜けたように全身がリラックスした感じで俺にもたれかかってきていた。


「あなたって本当に魔王なの?」

「まぎれもなく魔王だよ」

「うそ、今まで私が付き合ってきた人はみんな自分本位だったのに、こんなことしてくれた人なんていなかったよ」

「今までの人は君の事を大切に思ってなかっただけなんじゃないかな」

「そんな事ないと思うけど。でも、あなたにこうして抱きしめられているのって、今までの誰よりも落ち着く気がするわ。ねえ、この目隠しを取ってもらってもいいかしら?」

「その目隠しを取ったら目の前にとんでもない姿の魔王がいるかもしれないよ」

「そうかもしれないけど、こうして何も見えない相手に抱きしめられているよりはいいかも。ダメかな?」

「君がそれを望むなら構わないよ。目隠しをとっても後悔なんてしないよね?」

「ええ、後悔なんてしないわ」


 俺は優子の腰元に添えていた手を少しずつゆっくりと上へ移動させていた。その時に少しだけ優子の背中に触れて見たりもしたのだが、その度に優子は微かに吐息を漏らしていた。何も感じていないというのを演出するためなのか、僕が触れてもなるべく反応をしないようにしている姿が僕の感性を刺激していた。

 わざとゆっくりじらすように目隠しに手をかけたのだが、僕はその掛けた手を動かさずに反対の手で優子の腰を抱き寄せると、そのまま優子の耳元に顔を近付けた。ちょうど僕の口が優子の耳を迎え入れる形になったので、少しだけ甘噛みしてみたのだが、僕が想像していたよりも優子は過敏に反応をしてくれたのだ。


「ちょっと、目隠しを……外してからに……してよ」


 優子は俺にそう懇願してきたのだが、俺はそのような願いを聞くはずもなかった。このまま目隠しをさせ続けて色々してみようかと思っていると、年老いたインキュバスが俺と優子の間に割り込んできた。これからというところで、こいつはいったい何をしようというんだ。


「伝え忘れていたことがあったのでちょっとだけ邪魔させてもらいますけど、あなたは究極極楽モードを選択してますので、戦いはほぼ自動で行われるってのはご存じでしょうか?」

「ああ、それは知っているよ。そのシステムのせいで俺は勇者たちと戦ったって感覚が一切ないんだよ。簡単なモードだとしても、もう少しやってやったって感覚は味わいたかったな」

「まあ、そう言うのもぜいたくな悩みってもんですよ。それに、このモードだとあなたはよほどのことが無い限り負けませんからね。常に相手の弱点をついて一方的に攻撃し続けることも出来るんですからね」

「それで、何が言いたいんだよ」

「これからあなたが魔女優子と行おうとしていることは、言ってみれば男女の戦いに他なりません。つまり、私が言いたいことというのは、あなたはこれから魔女優子と行う営みは全て自動で行われるという事です」

「ちょっと待て、それじゃ俺は何も出来ないっていうのか?」

「まあ、そう言うことになりますね。ですがご安心ください。魔女優子の体にはあなたにされたことが鮮明に記憶されていきますから。その点は我々インキュバスにとっても大事な事ですからね。それでは、ゆっくりとお楽しみくださいね。あなたが気付いた時には全て終わった後だと思いますが」


 なんという事だ。俺が難易度選択を間違えてしまったせいでお楽しみまでも自動で棲んでしまうのか。なんてついてないんだ。俺ってやつはよ。

 俺は両手に持った凶悪な吸引機と超振動機が一体になったモノを優子にあてがってみたのだが、優子は悲鳴にも似た絶叫を一晩中上げ続けることになった。

 俺はそれを見て確かに興奮していたのだけれど、ただ見ているだけの時間というのはとてもつらいものがあった。


 翌日、悲鳴にも似た喘ぎ声が一晩中魔王城から響き渡っていた事を知ったのだが、その声の主が魔女優子であり、その表情はこの世の快楽を全て味わったかのように見えたらしく、その事を知った多くの勇者たちを嫉妬させることは出来たようだった。

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