罠の執行人(エクスキューショナー)
星色輝吏っ💤
第0話 殺しの代償
――病に臥した親友を想って、泣いてみたい。
――誰かに笑いかけられたら、全力で笑い返したい。
――辛い現実に行き当たって、胸が苦しくなるのを一回でもいいから感じてみたい。
暗殺者というものは、感情というものをほぼ失って、ただただ依頼に従って、悪者を殺す――それが誰かのためになると信じて。
実際、何度も感謝されたことがある。陰に潜む殺し屋だが、正体を知っている者からは激しい賞賛を受けた。命を奪うのは残酷なことだが、血を流さないでみんな幸せに、ってのは無理があるだろう。
そうやって、自分を責めるんだか擁護するんだかわからないようなことを考えて、僕はいつも…………特に何も感じない。
生存意欲はとうに失っていた。
依頼人からの賞賛が、唯一僕が縋れるものだ。
このままで、いいのだろうか……。日常も、時に残酷だ。
僕は次の依頼を確認する。
「はぁ……ジョセフねぇ……同じ名前の人間を何度も殺した」
眼光はいつしか消えていた。僕は血しぶきを見ても全く動揺しない。以前はそんなに冷酷な人間ではなかったはずだ。当時の自分のことなど、記憶には残っていないが……。
感情を失った暗殺者は、息をする間もなく任務に纏わりつく。暇だ、それしかやれることがないんだ。
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