第38話
酒見晴之は、五年前、柳岡達二の運転する車が原因の事故に巻き込まれた。当時は女の子だったからなす術もなく、ましてや、警察も弁護士も、柳岡の味方をした。
今は、違う。男になってから、まず、ロッククライミングをしはじめた。ガタイもよくなり、二階か三階くらいまでならよじ登ることが出来るようになった。
柳岡達二は、慢心していた。
だから、サクッと殺せて、そのまま、四階から壁を伝い三階に行き、二階から飛び降りた。
あとは、協力者を殺すだけだ。
更級「田母神牡丹、彼女があんな会見をした理由は、柳岡達二の協力者だったから、違うかな、酒見晴之さん」
晴之「なっ」
不意に話しかけられ流石に焦った。
そして、そう、田母神牡丹は、柳岡達二の愛人だった。だから、五年前の証拠をもみ消した。自分もあの事故の関係者だってことももみ消した。
更級「今、彼女別の記者会見してますよ」
晴之「え?」
更級「これこれ」と女はスマホを見せた。
『事故は、飲酒をしているのにも咎めなかった』
『警察の幹部が愛人』『事故をもみ消した』
あの高慢なメガネをかけた女が化粧すら台無しにするくらい泣きながら謝罪していた。
更級「これでも、殺しにいきますか?」
晴之「ははは、なんかバカらしくなりました、自首します」
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