第3話

4月19日(木)

病院に向かうことになった、当の本人である俺が一切気づかない、という訳の分からないシチュエーションだったが、顔色が著しい変動だったらしい、樹に言われて病院に向かった。

寮から徒歩20分くらいのあのカーネルサンダースの日本人顔の先生のところに行くと、また物珍しい顔をされた。


「ふむふむ、君は本当に良い題材に成り得る人材だな、生理を行うために身体が仕上がりを見せているんだ、まあ、いわば、女性の身体に完全になりかけているから、顔色も変動している、たぶんおそらく、その顔色変動が終わった頃には、完全に女性に性転換しているだろう」

なるほどなぁ、と思いつつ受付で待っていたら、ナースさんがやってきた。

確か、春日奈津美(かすがなつみ)さん、だったはず。

「先生から、ナプキンの付け方とか今のうちに教えてあげなさい、って」

「あ、あー」

「あとね、俺じゃなくて、私、私が嫌だったら自分、とか、言葉使いも気を付けてよ」

「は、はい」

「あと、スカートはくことになったら、絶対股広げて喋らないこと、分かった?」

「はい!!」


口うるさい姉貴を思い出した。


4月20日(金)

そんな事を書いたら、昼間に姉貴が寮にやって来た。

寮長の渡辺道夫(わたなべみちお)さんが、「明夫、お客様だぜ?」と言って通したのが姉貴だった。

広瀬和久子(ひろせわくこ)、口うるさい姉貴だ。空手も習っていて、口喧嘩も喧嘩も勝てる試しはない。


「本当に女の子になってんじゃん、ここ男子寮なんでしょ、女子寮に移るとかなんとか、話はどうしてんの?」

「一応、男女混合に住んでる寮に移り住む予定」

「そうなの良かったわ………」

姉貴がジッと見始めた。

「な、なんだよ」

「いやはや、女の子になるのは良いけどさ、私より胸デカくない?サイズいくつよ?」

「E、って下着屋さんに言われた」

「あははー、ふざけんな」チョークスリーパーに腕ひしぎ十字固めを決められた。

「あ、父さんも会いたいから、家に来いってさ」

「そのうち行きますって、言っといてよ姉貴」

「わかった」


そして、トイレで貧血起こして倒れた。

どうやら、月経とやらが起き出したらしい。

タンポポ、じゃない、タンポンとやらを付けだした時に、涙がポロポロこぼれた。

あと、完全に女性になったようである。

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