第10話 ルカス視点/馬車
(ルカス視点)
イムラン侯爵の屋敷。つまり俺の屋敷に向かう馬車の中で、俺とアキエーサは先ほどのことで会話をしていた。まあ、家族のことだ。リーベエにフミーナ、それと馬鹿な義妹に馬鹿な婚約者のこと。あいつらのことを思うとアキエーサが不憫でならない。
「……あいつは、リーベエは本当にどうしようもないな。それに再婚した妻も酷いし、お前の婚約者も酷い。義妹のワカマリナも相当酷い。よくあんな家庭を耐え抜いたものだ。つらかっただろうに」
「そうですね。もうお父様のことすらも親とは思えないです。ワカマリナのことを何も知らないのに溺愛ばかり……。あの家に生まれたことが本当に恥ずかしいです。出て行くことができて本当に良かったです」
アキエーサはもうイカゾノスの家に戻るつもりはなかった。必要最低限の私物はすでに叔父の俺に預けていたのだ。アキエーサが信頼する親類は親ではなく伯父である俺とその家だけだったのだ。……彼女を産んだ母親が生きていれば、そんなことにならなかったのだろうか。
「正直、もっと早く気付いてやればよかったと思う。クァズのような男を婚約者にするよりも早く気付ければリーベエたちを虐待の罪で裁判にでも持ち込められたんだがな……」
申し訳ない、と言おうとしたのだがアキエーサは遮るように言った。
「伯父様が悔やむことはありません。義妹が自分の意思で出て行くのを機に行動に出る計画を考えたのは私自身です。その前に裁判沙汰にすれば彼らは暴走するでしょう。これを機にワカマリナのことを知ってもらった後で彼らを断罪することに意味があるのですわ」
「なるほどな。そして、アキエーサがどれだけ有能なのかも知ってもらうのも計画のうち。そう思えばあいつらがどんな顔するか楽しみなものだ」
真実を知った後のリーベエたちの姿を想像して愉快そうに笑い合う俺達は結構気が合う。
「ただ、あの婚約者が問題だな。あれでも侯爵家の跡取りだ。掌を返して強引に迫ってくる可能性が高い。しばらく護衛が必要になるな。それに新しい婚約者が必要になる。アキエーサに意中の男はいないのか?」
俺の息子たちはすでに既婚の身だ。アキエーサの意思を尊重したいから、俺が気を付けて婚約者を見繕ってもいい。
「それならいますわ。私の計画を聞いて婚約を願ってくれた男の子がいますの。昔からの幼馴染ですわ。それにクァズ様も断罪するつもりでいますので大丈夫ですよ」
「ほう、幼馴染の男が婚約を申し込んできたのか。そういえば彼はクァズとの婚約を反対していたし当然か。それにクァズも断罪できる材料は揃っているわけか。流石だな」
ほう、それなら安心だ。アキエーサの将来のことを考えていただけにクァズのことを懸念していたのだが、奴のことでも対策済みか。まあ、もともと問題の多い男だから勝てに自滅しそうだけどな。
「後はワカマリナの行方に関する情報を与えていくだけでいいのです。彼女の本当の姿を少しずつ知ってもらえればいいのですから」
「そうだな。あの娘の本当の姿を知った時、それでも溺愛できるのなら大したものだろうがな」
そんなことを言うが、あのリーベエなら流石に愛想をつかしそうだけどな。あの無駄に傲慢でプライドの高い男、我が弟ながら小物すぎるんだから情けない。だから実の娘にも見放されるんだよ。
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