第8話 反論/侮蔑
「な、何を言うんだ兄上! アキエーサは長女でいる時点で十分恵まれているではないか! それに比べてワカマリナは次女にあたるから、親としての務めを果たすなら妹のワカマリナを優遇するのは当然だろう! それにアキエーサ、お前はいつ兄上に告げ口しやがったんだ!?」
「……」
「……」
「……え?」
妹を優遇するのは当然、などと言ってあからさまな姉妹格差を口にするリーベエ。
「そうよ! ワカマリナはアキエーサよりずっと可愛いわ! アキエーサは姉なんだから妹になんでも譲るべきでしょう! アキエーサもよくも義兄上に告げ口してくれたわね。妹のワカマリナが可愛くないというの? 貴女に人の心は無いの!? 恥を知りなさい!」
「……」
「……」
「……?」
姉なんだから妹になんでも譲るべき、貴族らしからぬ子供じみた理不尽な理屈を叫ぶフミーナ。
ルカスに反論するばかりかアキエーサに激昂し問題発言を発する両親を見て、ルカスもアキエーサも呆れ果てる。アキエーサの心は、悲しみや怒り、絶望したりすることは無かった。すでに両親に対する愛想は尽きていたからだ。もう何も心には響かない。
ついでに、ルカスはこの両親に怒りを感じており、クァズは理解が追いつかなくて呆けた顔になっていた。
「お前ら……いい年してそんな屁理屈にもならん道理が通用すると思うのか? 信じられねえよ……」
「私が誰に何を言おうとどうでもいいのではないですか。事実だけしか言っていないのですから」
「何だと!?」
「何ですって!?」
「そもそも否定の言葉がない時点で認めたも同然ですね。私を使用人として扱い、誕生日プレゼント等が妹の物
になってしまうことも」
「「あっ!」」
両親は揃って『しまった!』という顔になってルカスの方を振り返った。当のルカスは侮蔑を込めた目になってため息を吐いている。怒りに任せてとんでもないことを口走った両親は後悔してももう遅い。
「……はぁ、お前らがここまで酷くて馬鹿な奴らだったとはな。評判の悪いクァズ・ジューンズを婚約者にしている時点で悪い予感はしていたが、以前よりも最悪な感じになったな。これではあまりにもアキエーサが不憫だな。流石にお前もそう思わんか? アキエーサよりもその妹を可愛がる婚約者君?」
「……………………………………」
ルカスがクァズを見て聞いてみたが、クァズは何も言えない。アキエーサが両親に蔑ろにされていたのは知っていたが、クァズはアキエーサに問題があると思っていたからだ。そうでなければワカマリナがあんなに可愛がられるはずがないと。
しかし、今見て聞いた伯爵夫妻の様子からアキエーサに問題などないように見えた。それどころか両親の方に問題があるようにしか見えない。何しろ、使用人扱いもプレゼントを奪われていたことも初耳だったのだから。頭の整理がつかない。
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