第23話 おとな子どもな彼

「お待たせいたしました、イチゴパフェになります」

彼のコロコロ変わる表情に、また見惚れていると店員さんがさっき注文したデザートを運んできてくれた。

「それでは、失礼いたします」

ぺこりと頭を下げて、店員さんはカウンターの奥に消えていった。

「じゃあ、いただきます」

「どうぞどうぞ」

手を合わせてから、私はスプーンでアイスを一すくいして口に運んだ。

「ん~! 美味しい」

甘すぎず、少し大人な味わいのバニラアイスがあまりにも美味しくて、つい声を上げてしまうと、不意に

「かわいい……」

彼の口からそんな声が聞こえてきた気がした。

「え?」

びっくりして反射的に聞き返すと、彼は頬を少しだけ赤らめて、

「あ、なんでもない。それより久保は、本当に美味しそうにご飯を食べるね?」

平静を装って、自然な口調で返してきた。顔が赤くなってるのには気づいてないみたい。かわいいな……。

「そうかな? でも、甘いものは大好き」

自分の気持ちは奥にしまい込んで、私はもう一つ乗っかったイチゴ味のアイスを口に運んだ。

「なんか、美味しいものを素直に美味しいって言えるの。すごく良いね」

加藤君は柔らかい笑顔でそんなことを言う。

「私は、自分の好きなものを隠さないで話せるのもいいなって思うよ?」

だから私も、彼のすごく良いと思う所を口にする。

 ――なんかこれってカップルっぽいのかな?

周りをチラッと見ると、私たちを見てひそひそと話している高校生たちがちらほら見える。どんな話をしてるかは分からない。普段なら悪口だって考えちゃうけど、今はなんかいい言葉を言われてるような気がして心が熱くなった。

 今日一日で、多少はカップルみたいに見えるようになったのかもしれない。そう思うと、やけに嬉しくて綻ぶ表情を抑えられなかった。


「この後どうしようか?」

私がパフェを食べ終わった後に、加藤君が優しく聞いてくれた。

「う~ん……」

優柔不断な私は、この後の行き先を決めることが出来なかった。というよりも、加藤君と行ってみたいところがあり過ぎて選べなかったというのが正しいかもしれない。って、それを優柔不断って言うのか。

 心の中で勝手にツッコんでいると、

「また俺の都合に付き合ってもらっちゃうようで悪いんだけどさ。俺、身体動かしたいかも」

加藤君は私の様子を伺うように、伏し目がちにそう言ってくれた。

 ――かわいい!

心の声が漏れだしてしまいそうで、ごまかすように小さく咳ばらいをして

「じゃあ、あそこにしよう」

私が提案したのは、スポーツからリラクゼーションまで楽しめる某複合型エンターテインメント施設だ。私の提案を聞いて、加藤君は嬉しそうに大きく首を縦に振って、

「じゃあ、お金払っちゃうから外で待ってて?」

サラッとそう言った。

「え。さっきも払ってもらっちゃったし」

「いいって。待ってて?」

「ごめんね」

私は小さな罪悪感みたいなものを抱えてお店を出た。

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