桜の下でまた逢おう

いつかの喜生

きっかけ

世の中は馬鹿で溢れてる

幸隆はそんなふうにいつも考えていた。

幼い頃に両親から虐待にあっていた家庭環境が原因なのか、学生時代にイジメにあっていたことが原因なのか、信じていた親友に裏切られたことが原因なのか、それとも大切に思っていた彼女に裏切られたことが原因なのか、いや、むしろそれら全てが原因なのかもしれない。

彼は28歳になった今も、そう考えている。

心の傷も時間が癒やしてくれるというけど、今も彼の心には大きな傷があり、人に対して、苛立ちや憎しみ、不信感を常に抱いていた。

そして自分に自信がなく、選択や決断が苦手で自己肯定感がない。

彼の心は歪んだいるのかもしれない。

幸隆は現在、海の近くにワンルームマンションを借り、一人暮らしをしている。

部屋を出ると、そこには広大な海と空が広がっている、

心が疲れると、海を眺め、深呼吸して、独り言を口にする

「世の中は馬鹿で溢れてる。人生つまらない。俺はいつまで生きるんだろう。こんな世界、なくなってしまえばいいのに」

水平線に沈む太陽は眩しくて、けれど何処となく切なくて、少し涙が溢れ落ちた。

小さな波の音に耳を澄ませ目を瞑ったとき、ジーパンの左後ろポケットがバイブした。

ポケットからスマホを取り出すと、友達の青柳からの着信だった。

幸隆は通話ボタンを押しもしもしと声をかけると、青柳が話出した。

「もしもし森本、俺だけど」

いつもお調子者の青柳、彼とは高校の時の同級生だ。

いつも通りハイテンションで元気よく話しかけてきたが、幸隆はそんなテンションにはなれないが、とりあえずは返事をした。

「おお、青柳、元気か?どうしたんだ?」

青柳は幸隆の声に元気がないのを感じとっただろうが、そんなのお構いなしに話し出した。

「なぁなぁ森本、最近流行りのSNS知ってるか?結構楽しいぞ。 お前もやってみ‼︎」

機械音痴の幸隆は、そういうのは苦手なのだが、寂しさからか、やってみようかと、この時は思えた。

「分かったよ青柳、やってみるから教えてよ」

その選択が、全ての始まりだった。

幸隆は自宅に帰るとスマホを開き、青柳に教えてもらったSNSに登録をすることにした。

ニックネームやら年齢やら、登録に面倒さを感じなからも、なんとか登録する事ができた。

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