第28話「膝とふくらはぎのもみ方」
武田は、コーヒーのチェーン店で新規にオープンする店が従業員を募集していたので、チラシにあるQRコードをスマートフォンを使い開けて応募のしかたを見た。
すると、スマホを使い履歴書を書き、スマホのカメラを使い自己PRを録画して、応募した理由を書き、そのままスマホで会社に送るというものだった。
全部スマホでやるのか!?
噂には聞いたことはあるが自己PRを自分のスマホで録画できるんだ。
武田は、四苦八苦して半日かけて応募用のデータを作り送信した。
採用だと翌日に電話しますと書かれていたが、電話は来なかった。
❃
金曜日、早坂さんの健康教室。
今日は武田と娘のマナミ、マナミの息子タケル、それと中年のご婦人の4名だけだった。
「さて、今日は何をしましょうか?」
早坂さんがみんなに聞いている。
「あの〜っ、私し、立ち仕事なもので足が疲れるのと膝が痛くなるんですが、治す方法ってあるのでしょうか?」
ご婦人が控えめにたずねる。
「膝ですか、あなたは、まだO脚にはなってないので膝とふくらはぎのもみ方を覚えると膝の痛みは取れると思いますよ」
早坂さんの言葉に、ご婦人の顔が明るくなった。
「武田さんも娘さんも膝とふくらはぎをもむと下半身の気血の流れがよくなるので骨盤内にもいいですよ」
早坂さんが武田達にも勧める。
「僕も足はむくみがちですし、膝もゆるくなってときどき関節が外れるんです」
武田は自衛隊で硬い半長靴と言う革靴を履いて走っていたので膝も傷んでいた。
「それでは、今日は膝とふくらはぎのもみ方をやりましょう。ふくらはぎをもむということは心臓に戻す血流が増え、心臓が楽になりますし、腰にも血流が戻り、腰痛や便秘の裏技でもあるんです」
早坂さんがヨガマットの上で仰向けになる。
右足を上げて膝の間に右手を入れ膝を閉める。右足の膝の内側に右手を挟んでいる。
右足の甲に左足のかかとを乗せて左足を下に動かすことで右膝の内側を右手が押す。
「右手を微妙に動かすことで膝に溜まっている古い血を出すのと、狭くなってる膝の関節のすき間を広げます」
早坂さんの説明を聞きながらヨガマットの上で行う4名、タケル以外は痛いようだ。
「早坂さん、膝の内側が痛いです」
武田は、膝を手で挟むと痛みがあるようだ。
「あたしも痛い!」
マナミも痛いようだ。
「あの〜っ、私も痛いです」
ご婦人である。
「あまり無理をしないで下さい。ゆっくりでいいです。何度かやれば、膝の裏はわりと簡単に痛みが無くなりますから」
早坂さんは安全の為に無理をしないように言うが、血栓がなけれぱグイッとやれば、その場で膝の痛みは引いていく。
ご婦人は痛みに耐え、悲鳴を上げながらけっこう曲げている。
「あの〜っ、先生。右膝の痛みがかなり減りました。こんな簡単に……不思議……」
時間にすると、わずか5分くらいである。
ご婦人の膝に溜っていた古い血が流れ、膝関節も広がって痛みが減ったのだろう。
「左膝も同じようにやってください」
早坂さんの指示で左右の膝を手で挟んで圧迫をする。
人は立っていれば、自分の体重が膝にかかる。膝の骨には隙間があるが体重により隙間が狭くなると痛みがでる。この方法で隙間を広げてやると不思議と痛みがなくなるのだ。
「次はふくらはぎをもみます。これは膝を手で挟んだ続きで、右手をふくらはぎにずらします。ふくらはぎの上から下へと手をづらします。この時、左足で押すこともできますが、左手で右足の足首を掴み丁寧に押しさげる方がいいです。右手も甲で圧迫するだけじゃなく、手をいろいろと動かし人差し指の関節を使うとふくらはぎの芯をもむことができます」
早坂さんの指示どうりふくらはぎを手で圧迫して押さえる4人。これは、それほど痛くないようで、膝関節の時のような悲鳴は聞こえない。
ふくらはぎは、普通に手でももめるが芯の部分はこの方法を使わないと難しい。
ひと通り、早坂さんの指示どうり左右の膝とふくらはぎを揉んだ4人。
ご婦人は、両膝の痛みがかなり無くなったようだ。
武田も膝の痛みがなくなったようだ。
❃
今日の早坂さんの健康法教室を終えて帰る武田一家。
「何か食べて帰ろう。タケル、何が食べたい?」
武田はタケルを見てたずねた。
「ハンバーグ!」
「ハンバーグか、それじゃファミリーレストランに行くか!?」
車でファミリーレストランに向かう武田一家。
武田がサラダバーにおかわりをもらいにいった時、左足のふくらはぎの中がボコボコと動き出した。
(なんだ、これは!? ふくらはぎの中が動いている。血液が動いているのか?)
しばく立ち尽くして動きを感じている。
痛みはまったくない。
ボコボコと湧き上がる温泉のように動いているのが感じられる。
「マナミ、俺のふくらはぎの中がボコボコと動いている」
ファミリーレストランの席に戻った武田が娘に言う。
「なに、それ? よっぽど詰まっていたんじゃないの? あたしはなんともないよ。足は軽いけど……」
「歳のせいか!? でも、こんな感覚は初めてだ……」
タケルは、でっかいハンバーグを食べてソースが美味しいと言っていた。
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