『道の花束』
かおりさん
第1話
『道の花束』
私は、車を運転している時に、ふと横を一瞬向いた時に、道路の脇に花束が置かれているのを見ることがある。
旅行先の山の峠の道を何十分走っても民家もなく、ここがこの山の頂上かと真っ直ぐ平らな道に出た脇にも見た。
車の同乗者は、私以外誰も花束に気づかない。
こんなに山深い所へ花束をお供えするのは大変な事だろうな、と思いながらも何で私だけが見てしまうのだろう、と同乗者の楽しげな旅の話しを聞き流しながら進んで行くと、道がものすごい急カーブの連続になって道路には急ブレーキの轍がアスファルトにくっきり輪を描いて道の外へ逸れて行くのを見た。
私が車のアクセルを一切踏まずに、延々とのろのろと山道を下っていると、同乗者がそのスピードに気づいて「どうしたの?」と聞いて、私はとにかくこの山を降りたい一心で無言で走り、ようやく下って来た所でまた急カーブの道に円を描く轍がアスファルトにくっきり見えて、同乗者達が皆静まり黙った。
ここは危ないからゆっくり行くよ、と皆がそれぞれ言葉もなく理解して黙り込んだ。
ほどなくして、人里民家がある場所まて降りて来て、ほっとしてちょっと怖かったと思いながらも皆暗黙に黙っていた。
あの花束は、誰かがその先は危険だよ、と警告に置いてくれていたのではないかと思った。
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