第8話思い出
窓を開けると、目の前は壁だった。
コンクリートブロックを積んだ汚い壁で、屋根近くまで高くそびえていた。
おかげで、部屋には光が入らない。朝でも昼でも照明が必要で、窓際に干した洗濯物も生乾きだった。
壁の向こうは小学校。たまに昼に部屋にいると、賑やかな子供の笑い声がした。
校庭を覗かれたら困るから、この壁は必要なんだと心得てはいたが、なんとも憂鬱な気分だった。
せめてもの慰めにと、窓際にゼラニウムの鉢を置いた。でも、陽の射さない薄暗がりの中で、花も咲かずに枯れてしまった。
あの頃は、まだ学生で貧乏暮らし。月三万の安家賃。ガス台、トイレは共同で、お風呂なしの安アパート
隣の住人が夜逃げして、大家さんがあわてて飛び込んできたこともあったっけ。
大人になれば懐かしい、そんな学生時代の思い出。
(窓を開けると…… 06)
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