第3話うごめく闇

 窓を開けると、暗闇だった。ひとすじの光もない、漆黒の空間だった。


どこからか、生臭いような、鉄錆びた臭いがただよって来て、ねっとり湿った空気が、体にまとわりついた。


うごめく気配が感じられた。音もしないのに、ザワザワと背中をザワつかせた。


何かが足もとに広がって行く気配に、気味悪さを覚えながら、それを見極めようと目を凝らしてみた。


しかし、闇は闇でしかなく、ゆっくりと気配だけが近づいてくる。


恐怖なのか、あせりなのか、自分でもわからない感情が渦巻いて、うしろを振り返ると、そこも闇だった。


部屋はどこへ消えてしまったのか、ベッドが消え、クローゼットが消え、床が消え、うごめく闇だけが体を包んでいく。


(窓を開けると…… 03)

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