美少女を前にすれば男子の友情なんて皆無

 「とりあえず薪集めればそれだけで楽しいんじゃない?みんな初めてだろうし」


 このままではいい方向に話が進んでいかないのは明白なので僕も何も思いついてないがアドバイス風に案を出してみる。


 「んまぁ、そうかもな。どうせ明日もあるからそんな焦らなくていいか」


 聞き分けのいい森くんが賛成してくれることで彼方くんも鞍馬くんも賛成してくれた。はじめからこうしとけば良かったと後悔したのはこれで100回目ぐらいかな。


 「女子の部屋行ってきます!」


 「待てよ光輝、俺もついていくぜ」


 「待てよ智、俺もついていくぜ」


 アホだ。クラスで人気な3人がこんなアホトリオだったなんてもう周知の事実だが、ここに来てさらにヒートアップしてる。誰か止めてくれ、止めれる人がいるのならば。


 3人の視線が僕に集まる。これは流れ的に僕もついていくぜと言わないといけないやつだ。が。


 「僕は行かないよ。もう十分」


 十分とは美少女3人から得られる栄養がだ。


 「なんだよノリ悪いな」


 「僕をノリに巻き込むなよ」


 「ってことだから行こうぜ


 「お前、言い方変えても意味は変わんねぇからな」


 ということで僕は1人この部屋に残ることにした。監視役としてついていくのもありかもしれないが、動くのもめんどうなのでやめておく。


 「待ってろよー神代」


 「うん」


 彼方くんはスマホを充電器に挿して、少し遅れてみんなに合流した。


 「早くしろよ、チ◯毛」


 「え、お前、人を下ネタで呼ばないと死ぬ病気でも患ってるのか?心配になるレベルにキモいな」


 「おいおい、褒め上手かよ」


 「こいつまじやべぇ……」


 彼方くんは天然パーマでセンター分けをしている。でもとても似合っていてカッコいい。そう見えるのは見慣れたからもあるのか。


 人を下ネタでいじって怒られないのはみんな聞き飽きたからだな。


 ダルそうに森くん、鞍馬くんについていく彼方くんの背中は今にも魂が抜けそうなほど疲労しているように見えた。


 そして2分後、思ったよりも早く騎士たちは帰還した。


 「おかえり」


 「なんで俺ら3人なのに、1人で行った神代より早く帰ってきてんだ?」


 微々たる差だが、わずかに僕のほうがあの部屋にいた時間は長い。いや、拘束されていたと言っても過言ではないな。


 「どうだった?」


 森くんに構うと、ずるいだの、許さないだの言われるので無視して結果を聞く。


 「それはオッケーだったけどよ……」


 「ならいいじゃん」


 「でも男子は男子で女子は女子で別れて探すってさ。はぁぁぁ、なんでこうも俺らは負けるんだよ」


 何の勝負をしてるかは知らないけど、きっとこれから先勝つことはなさそうな勝負だとは聞かずとも分かった。


 「今から雫たちには会えるんだからいいんじゃない?」


 「そうだな……」


 たった2分でここまでボコボコにされたのかと、改めて雫の強さを知る。基本、話であれなんであれ主導権を握るのは雫だ。


 だから為す術もなく男子は従わざるを得なくなる。これが美少女パワー。恐るべし。


 「それじゃ外行くか。先に待ってるのが男ってもんだろ」


 「そうだね」


 この時点でもう無理なんだよな。フラグ、立ってますよ。


 各々、スマホだのなんだの暑さの中で動ける格好と持ち物を持って部屋を出る。彼方くんのスマホはたった5分ぐらいの充電でどれだけ%は溜まったのだろう、きっと10%もない。


 エアコンはしっかり消す。この冷風にはずっとハグしていてほしかった。そう思えるほど部屋の外は暑く、ジメジメしていて気持ち悪い。


 玄関を開け、外を見るとそこにはすでに美少女3人しっかり集まっていた。


 ほら見たことか。


 これには男子陣は僕を除いて口をポカンとさせていて、やらかしたと顔に書いてあった。


 「遅いじゃん。暑い中待たせないでよ」


 いじわるを言うのは陽菜さん。


 「まじで申し訳ないです」


 真っ先に謝るのは森くんで、謝罪も女子に話しかけるのも、ほとんど真っ先にするのが森くん。行動力はピカイチなんだけどな。


 「俺は急げって言ったんだけどね。ごめんね」


 「おい、嘘つくな智。お前が1番ノロマだったろ」


 「楓斗、俺とお前は友達だよな?それなら友達のために嘘はつけないのかよ」


 「勘違いすんなよ。俺はこのキャンプ期間、お前を友達とは思ってない」


 酷い争いだ。女子と関わること、好感度を上げるためなら友達をも裏切る者という最悪行為に出始めた。これが冗談じゃないとこも鞍馬くんと彼方くんの面白いところだと思っている。


 冗談じゃないからと言って、仲が悪くなるなんてこともない。


 「このチ◯毛め」


 「病院行くか?」


 さすがにそれは男子にしか聞こえない声で言った。女子に聞かれてはまずいとバカなりに考えたみたいだが、僕や森くん、彼方くんからしてみればイカれた野郎としか思えない、変態行為だった。


 「はいはい、冗談だから。私たちも今来たとこだし。それで薪集めってただ落ちてる木を集めればいいの?」


 「ああ、その通り」


 薪を集めるのは主にキャンプファイヤーのため。調理用の薪とか炭は用意してあり集めたものは使わない。まぁ衛生面と考えたらちょっとってとこもあるからな。


 ご飯を食べたあと、暗くなったときの灯りとして集めるのが今から集める理由となる。


 「それじゃ誰が1番多く集めれるか勝負しようぜ」


 ということで7人で始まった薪集め。今のところ最下位に罰ゲームとかはないが後々出てきたら困るので真剣に集めるとする。

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