【短編】同棲している義妹が0721している時に遭遇してしまった。そしたらブラコンになった。

藍坂イツキ

第0話 遭遇してしまった


 辛い辛い大学受験勉強から解放されてかれこれ3カ月。


 大学の講義やサークル、そしてバイトに慣れていって周りの同級生たちが同学年や先輩とキャッキャウフフにうつつを抜かしている中。


 しがない大学1年生である大石正也おおいしまさや(俺)は今日も今日とて台所に立っていた。


 開幕早々で申し訳ないが俺は妹が好きだ。


 名前は大石澪おおいしみお


 容姿端麗、学業優秀、文武両道。


 これら四字熟語はすべて妹のために作られていると言っても過言ではないほどの完璧女子高生である。


 すらっと伸びた長い黒髪に、瞳はやや赤みがかかった茶色。


 背丈は平均よりも少し低いくらいで、スタイルもよく、胸も小さすぎず大きすぎずの美乳でまさにあこがれの的。


 澪といえば美少女、美少女といえば澪。


 必要十分条件もびっくりなくらいである。


 昨年のホワイトデーには30個以上チョコを貰ったらしいが誰にも渡すつもりはない。


 絶対にな。


 実の妹じゃ好きになっても仕方ないだろうとマジレスの声が聞こえるが勘違いはしないでほしい。

 

 彼女は実際のところ本当の妹ではない。


 妹とは名ばかりの義理の妹ではあるのだが、現在はそんな彼女と二人暮らし。


 色々と諸事情合って、俺が面倒を見ているのだ。


 おっと、襲うのではないかとうるさい声が聞こえる。


 生憎と俺はシスコンなだけで変態ではない。


 さすがに妹を犯すなどと言う愚策は天地がひっくり返ってもやるつもりはないのだ。


 そのことを踏まえると、俺は変態紳士だ。



 ——さて、余談はこれまでにしよう。


 俺は今、台所で本日の献立について悩んでいる。


 料理が得意な俺もさすがに毎日違うメニューで妹が飽きないものを考えるのは骨が折れる。


 日々のの鍛錬で少しずつ創作料理やマイナー料理にも手を出してたくさんの料理を作れるようになってきたのだが——それもすでに限界が近い。


「万策尽きたな」


 全国のアニメーション会社の社員が口癖のように言っている言葉が漏れる。


 思考を変えて俺が食べたいものを作る――のでもいいのだが、俺はカレーや親子丼、かつ丼と言ったメジャーな料理が好きな傾向があるので中々できない。


 そこで、久しく試したことがなかった妹の澪に訊いてみようのコーナーを開催しようと思い立って、俺は澪の部屋へ向かう。


 台所を出て廊下をまっすぐ進んでいき、右手。


 しっかりと閉められたドアの向こうで恐らく勉強しているはずの彼女に声を掛ける。


「澪~~、聞きたいことがあるんだけどぉ~~」


 ……。

 しかし、返答はない。


 そこでもう一度。ドアをノックしながら同じように訊ねる。


「澪~~、聞きたいことがあるんだけどぉ~~」


 ……。


 ただ、やはり返答はなかった。


 いつもの彼女ならすぐさま「お兄ちゃん‼‼ 今日は一緒に寝るの⁉ やったぁ、ささ、早くベットにぃ~~」なんて秒読みの台詞をツンデレ必至の黒々とした声で返してくれるのだが——今日は違ったらしい。


 まぁ、彼女の事だ。


 きっと、2週間後の夏休み前期末テストに向けて勉強しているに違いないと思った俺が引き返そうとしたその時だった。






 ——————ガタンっ‼‼‼‼‼‼





 凄まじく大きなにぶい音が澪の部屋の方から聞こえた。


 大きな音に驚いて一瞬だけ言葉が出なくなったが、さすがにこんな音が聞こえて無視している兄ではない。


 まさか、何か怪我でも——とウサインボルト氏もビックリする素早さで部屋まで駆けて行く。


「——大丈夫かっ⁉」


 グルんとドアノブを回し、中に入り込む。同時に叫んで、状況を確認すると俺は今度こそ言葉を失った。


「あ」


「っ」


 目と目が合う。


 そして、一気に冷や汗が額から脇から、さらには背中からぞわっと湧きだす。


 俺はその瞬間、理解したのだ。


「っお、お、お…………」


 自分の妹が0721をしている場面に遭遇してしまったことに。


「——————お兄ちゃん!?」


 








 澪の絶対領域のシミは一生瞼の裏に焼き付けておこう。






「お兄ちゃんっ!! と、と、扉閉めてぇ!!!!!」





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