キミと私の嘘
翠
可愛い隠し事
高校1年生の私、カンナとシュウは小さい頃からの腐れ縁。
過疎化が極端に進んだこの田舎で私と同い年の子どもはシュウだけだった。
2人しかいない学年にクラス替えなんて存在するはずもなく、中学校を卒業するまでずっと同じクラスだった。
男子だ、女子だなんて意識は全くなく毎日田舎の田んぼ道を二人で走り回っていた。
高校に進学してやっと離れる時が来たと思ったらまた同じクラス。
それまで私と同じくらいの背丈だったシュウはバスケットボール部に入ってから急激に身長が伸びた。明るいシュウは女子からの人気が高く、いわゆるキレイどころによくちょっかいをかけられていた。
今日も女子にからかわれているシュウを横目に私は一人本を読んでいた。と言っても読むフリ。内心シュウのことが気になって、声がする方をチラチラ見ていたから本の内容など全く頭に入っていなかった。シュウのことをカッコイイと思っているのはキレイどころだけじゃない。私だってその一人だ。いや、何なら私の方が先にシュウの良さに気づいてたんだから!心の中で小さく威張った。
テスト期間に入り、部活が休みになったシュウと一緒に帰ろうと駅で電車を待っているとキレイどころ集団がやってきた。
「あれ?シュウ部活は?」
「テスト期間だから休み。」
「え、じゃあカラオケ行こうよ~。」
キレイどころの一人がシュウの制服の袖をつかむ。
「勉強するからダーメ。」
そう言いながらシュウは優しく手を避ける。
いたたまれなくなった私はスマートフォンを取り出し、大して興味もないネットニュースを見始めた。
カンカンカンカン
踏切の音が聞こえ、電車がホームに入ってきた。
「シュウは乗らないの?」
キレイどころが聞く。
「この快速は俺らの最寄り駅停まらないから。」
「そっか。じゃあ、また明日ねー。」
ようやく解放されたシュウはフーと小さく息を吐いた。
「なんかどっと疲れたな」
そう言ってシュウは笑う。
「ずいぶんおモテになるのね」
私は少し意地悪な言い方をしてしまった。
「モテるとか知らねえよ。恋愛も興味ないし…第一、女子は苦手だ。」
「私だって女子なんだけど?」
「カンナはカンナだろ。女子とかそういうんじゃないよ」
シュウは額の汗を笑いながら拭った。
「そうね。私は女子にカウントされないもんね。」
私は少しだけ拗ねて横を向いた。
「ごめん、そういうことじゃなくて」
シュウは私の顔を覗き込む。
「カンナは特別だってこと。」
シュウの方を見ると目が合った。これまでに見たことのない表情をしていた。
そして顔が近づいてきたかと思うと、小さくキスをした。
「本当はカンナが好きなんだ。」
「知ってる。」
「え?」
「さっき気づいたの。シュウが汗をかいてるのを見て。」
シュウは目をぱちくりとさせる。
「知ってた?シュウって隠し事をする時に汗をかくんだよ。」
季節はもう冬に差し掛かっているのに拭うほどの汗をかいていたシュウを見て、もしかしたら?と思ったのだった。
伊達に幼なじみをやっているわけではない。
シュウはハハッと声を上げて笑った。
「やっぱりカンナには敵わないよ。俺って結構ポーカーフェイスだと思ってたんだけどなぁ。」
「ねえ、いつから?」
「え?」
「いつから私のこと好きだったの?」
「覚えてないよ。たぶんもうずっと前から。」
「なんで言ってくれなかったの?」
「カンナとの関係を壊したくなかったんだよ。下手に気まずくなるくらいなら黙っていようと思ったんだ。」
「ふーん。」
「カンナは?」
「ん?」
「カンナは俺のこと好き?」
私は答える代わりに小さく1つキスを返した。
遠くから電車が来る音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます