第15話 パワーバランスってなんすか?
『おお。。これが神。。!!』
『我々が待ち望んだ存在だ。。!』
『イデアルの奴らを皆殺しにしてくれ!!』
『ボルクの民を救ってくれ!』
『俺をここに閉じ込めていたのはお前らか?』
騒ぎ喜ぶ白衣を着た男たちの中で比較的冷静さを保っていた男が答えた。
『ああ、そうだ。そしてお前はこの箱の中で絶望を味わう必要があった』
『何故だ。俺が何をしたって言うんだ?』
『もう分かってるんだろ?お前はウォンカ一族の末裔だ。そして特殊な才能があった。。。なんの才能か、この世界を乗り越えたなら分かるはずだ』
『神になる。。か。』
『その通りだよ。神だ。神。我々人類が思い描いた、頂点に立つべき存在だ。』
『その頂点の神を、戦争に利用しようと?』
『ああそうさ。神を味方につければこの長く続いたイデアルとボルクの戦争は終わる。』
『俺の幼い頃の記憶では、戦争など始まっていなかったぞ。』
『ん?ああ、チップが上手く作動してないのか。まぁ今更そんなこと覚えていたってどうでもいいさ、早く戦争に出向いてくれるか?俺たちは一刻も早く戦争を終わらせたいんだ』
『答えてくれ。なぜ俺は戦争が始まる前からこの世界に?』
『今は知る必要が無い。戦争が終わったら話そう。』
『お前たち。。俺に命令できると思っているのか? 』
『おいおい、何を言い出すんだよ。ここはお前の母国ボルク半島だぞ?守りたいに決まってるよな?』
『ああ、そうだ。母国だな。でも俺は正直どうだっていいんだよ。そんなこと。家族を失ってまで守りたくない。それなら戦争に負けて家族と皆で奴隷生活でも送ってるほうがマシだよ』
『言うじゃないか。。』
『なんだ?やるか?今の俺と』
焔の右手には、炎が宿っていた。それは今にも研究室を覆い尽くしそうな勢いで膨れ上がった。
『ああ、悪かった。落ち着けよ。俺たちはお前に勝てるわけないんだから。。な!!!』
その時男は胸ポケットから小さいUSBメモリのような物を焔の首に差し込んだ。
『。。なんのつもりだ??』
『はは。もう遅い。終わりだよお前は。本当の平気になっちまった。。ギャハハハハハ!』
さっきまで冷静に話していたとは思えないほど男は笑い散らかした。そして焔はそれを止めなかった。いや、止められなかった。
『さぁ焔、早く行け。イデアルを滅ぼせ!』
焔は言葉を発することはなく、無言で部屋を出ていった。
『おい、良かったのかよあれ使っても。』
『ああ大丈夫だよ。。。戦争が終わればなんだっていいんだ。』
『てー!!!』
鼓膜が破れそうなほどの轟音が海の上で鳴り響く。
そうして、鉄の塊が飛び交う中、一つ、いや、一人だけ違うものが飛んでいた。
神だ。
人々はその姿を目にし、恐れおののいた。
『おい。!あれ!人が飛んでる!あれってボルクの奴らの兵器じゃないのか!?イデアルからその兵器の開発を阻止するための精鋭が行ったはずじゃなかったのか!』
『あそこに神がいる。。つまり、我々は負けたということだ。技術も、戦争も。。』
『あれが神か。。』
『やっと完成したのか。。』
『いけー!イデアルのヤツらを皆殺しにしろ!』
焔は、そっと右手を上げた。
『え?』
ドォォォン!!!!!!
その場にいた数十隻もの艦隊は、イデアル、ボルク関係なしに全て''地面''に落ちた。
『いっでぇぇ!!』
一瞬無重力状態になり、床に叩きつけられる軍人たち。そう、焔は海の水を一瞬にして全て蒸発させた。まだ浅い所で敵を迎え撃っていたボルクの人々は全身打撲程度で済んだが、イデアルの軍人は全員、とてつもない深さまで落ち、潰れた。
『これが神。。か。』
『俺たちは、勝ったんだ。。』
うぉぉぉぉ!!!!!
痛みも忘れて喜びに浸る人々。そんな彼らを背に、焔はもう一度手を振り上げた。。。
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