ウェルト
伊織
第1話 何すんねんドアノブ
この世の生命はみな、過去を知らない。知っているのは作り上げられた人々の幻想に過ぎない。自らが生を授かり見てきたものだけが真実であった。
では、 過去とは、この世の始まりとは何か。誰が作ったのか。どのように発展してきたのか。それらを知るもの。それを我々は神と呼んだ。
『おーい!焔(ほむら)!火ぃつけてくれ』
凍えるような寒さの中、男性は毛布にくるまりながら言った。
『ちょっと待ってくれ!今行く』
少年は男の元へ駆け寄り、言われた通り火をつけた。
『ったく、冬は吹雪が酷くて外に出られないから薪とか準備しとけって何回もおばさんに言われたろ』
『まーそう怒んなよ、おめぇが指振れば解決すると思うと薪取りに行くのがバカバカしくてよ。それにしてもやっぱ不思議でならねぇよ、お前の火は何もしなくても''消えない''んだからよ』
暖炉の火が赤くを放ち、2人を優しく包み込んだ。
男性の名はエルド。女房と2人暮らしであったが、半年ほど前に森で冬の保存食のため狩りをしていたところ、薄汚れて倒れている少年。焔を見つけ、保護している。最初はただの捨て子か家出少年と思い、親の事を探していたが焔の魔法?の力により火が付けられる事を知り、エルドは大層焔を気に入り、女房の反対を押しのけ、自らの手で育てることを決めたのであった。
『なぁ、俺にもその火の付け方教えてくれよ』
『無理だって何回も言ってるだろ?これは''特別''なんだ』
エルドには''特別''の意味はあまり分からなかった。が、彼の性格上分からないことを深く考えるのは嫌いなようで、いつもこの会話はそこで終わる。
『まぁなんでもいいけどよ、俺はおめぇがその火使って俺を楽させてくれるならいつまでだって面倒見てやるからよ、これからも頼むぜぇ〜』
面倒を見ているのはこっちの方ではないか。焔はそう思ったが住む場所を与えてもらっていることは事実なので黙っておいた。
『そろそろ晩飯の時間だ、スープを温めてくるよ。』
そう言い残して焔がリビングを出ようとした時、
〝コンコン〟
ノックの音だ。
誰だ。いや、待て。おかしい。外は1歩先の景色も見えないほどの猛吹雪だ。人が出歩けるはずが無い。
〝コンコン〟
いや、やはり''何か''いる。そこには確かに気配があった。
『おじさん、大人しくしててね。』
焔がドアノブに手をかけたその次の瞬間、焔は見覚えのない場所にいた。大きな屋敷、いや教会ともとれる。その煌びやかな装飾は、焔を魅了した。
『ここは。。』
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