第14話
「ほう……。魔法の使い方……ねぇ?」
「あっ……!」
慌てて隠そうったってもう遅い。
セリカは悔しげに俺を睨んでいる。
「べ、別に原点に立ち返ろうとしてるだけだし」
「嘘つけ」
「う、嘘じゃない!」
そんなキョロキョロ落ち着かない様子で誰が信じれようか。
俺はニヤリと笑いながら授業で俺が感じた違和感について言う。
「お前、使ってた魔法全部威力弱かったよな?」
「……っ。それがなに」
「そして、全部──俺たちが使ったことのある魔法だけだ」
「……ッッ!」
セリカは目を見開いた。図星だ。
そうだ、俺がずっと感じていた違和感は、セリカの魔法についてだ。
実技授業の際に、セリカはいつも最後に行動していた。そして放つ魔法の威力も弱い。
ここから考えれる事実は一つ。
「さては、コピーの術式持ちだな? そして、コピー以外の魔法が使えない、そうだろ?」
「……なんで」
「あれだけヒントがあれば分かるぜ?」
「あんたも……あたしを馬鹿にする気なんだ」
心なしかその瞳には憎悪が渦巻いていた。
黒く淀んだ瞳がセリカの過去を物語る。
それにしても何を言ってるんだか。
「お前馬鹿か? めちゃくちゃ嫉妬しとるが?」
「……え」
セリカは拍子抜けした表情をした。まるでそんなことを言われると思っていなかった、と言わんばかりだ。
「揃いも揃ってこのクラスは馬鹿ばっかかよ。コピーなんてクソ強いじゃん」
「なんだ、あんたも勘違いした口なの。コピーは所詮コピー。本物より威力が格段に下がるし、消費する魔力が多い粗悪品よ」
「それが馬鹿だって言ってんだよ」
それでも厳しい入学試験を乗り越えてきたやつか? 発想の転換というものが出来ていないのはいただけないな。
「お前、最初に諦めてコピーを十全に扱えてないな」
「なっ、あたしだってちゃんと研究してっ」
「……こっち来い」
「ちょ、引っ張るな!」
俺はセリカの腕を掴んで移動する。
途中で観念したのか腕から手を離しても渋々だが付いてきた。
「ここって……」
「そう、練習場だ」
セリカを連れてきたのは練習場だった。
「【
念には念をと、元から張られている結界の上に二重に展開した。
なにせそれくらいせねば最悪練習場がぶっ壊れる。
「魔法を発動させたって無駄だし」
「無駄かどうか判断するのはお前じゃない。さて、コピーしたらその魔法はずっと使えるか?」
「使えるけど……魔力消費激しいし」
「んじゃ、これ覚えろ。【
俺の体をキラキラした緑色の光が包んだ。
魔法の威力を上げる強化魔法だ。
「あっ……!!」
セリカはようやく気づいたようで、喜色を浮かべると一瞬にして渋面へと変わった。
「あたし……こんな簡単なことにずっと気づいていなかったの……」
セリカは愕然とした様子で項垂れた。
「視野錯綜とはこのことだな。一つのことに拘ると、見つかるものを取り落とすんだ。お前は属性魔法を使おうと躍起になりすぎたんだ。まあ、良いお灸だな」
セリカは顔を上げると、結界に向けて小さめの杖を掲げた。
「【強化】【強化】【強化】【強化】【強化】……【
多くの強化の果てに産み出された火球は、最早『球』と呼べるものではなかった。
人を100人単位で焼き尽くせる青い火球が結界に向けて飛び──
ドガアアアアン!!!
と轟音が響いた。
「あっぶねぇ……。結界張ってなかったら壁突き破ってたぞ」
何とか俺の結界に阻まれたものの、余波として地面は融解しグツグツと煮えたぎっていた。
「これ、本当にあたしが……」
「そうだよ、お前が地面ぶっ壊してあわや学校崩壊の危機に陥れたんだよ」
「……ごめん」
セリカはバツの悪い顔で謝った。素直とは珍しい。
それにしてもアホみたいな威力だな。
普通の人は【強化】を重ねがけすることはできない。消費魔力も少なく使い勝手が良いのだが、一回の強化が限界だった。
しかし、セリカは厳密に言えば魔法を発動していないという屁理屈がまかり通った結果、時間をかければ世界を崩壊できるほどの力を再現できるようになったのだ。
ヤバイな……セリカが比較的常識人で良かった……流石に俺でも勝てるか怪しい。
まあ、強化する前に素早く魔法を発動させればどうとでもなるが。
「……どうしてあたしなんかにアドバイスしたの」
「それは最初に言っただろ?」
元からそういう目的だし。
「まさか王子に勉強を教えるだけで? ……あんたもお人好しだね」
ふっ、レインのためなら──ってんなわけあるかよ。
「は、馬鹿か。この借りは大きいぞ? 具体的に言えばこれから色んなことに手を貸してもらうくらい大きいぞ。精々俺のために働くといいさ」
「ふ、流石クズ」
「褒めるなよ」
「貶してるんだけど」
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