第8話

だが。

そんなある日の事だ。

俺は住宅街で疲れた顔してる男の子に

声をかけることとなる。

俺の家のすぐ、脇の道路で蹲る少年。

ちょうど、家の玄関に入ろうとしたら目に入った。

見て見ぬ振りをしようと思ったが、

どうも、様子がおかしい。

一度は知らんぷりして

家の中に入った。


しばらく経ったらいなくなるだろうと思って、ほっといたが、いなくならなかった。

二階から前の道は丸見えで、

ガキが同じ場所にまだいることは

一目瞭然だった。

「あいつ、まだいるよ...」

仕方なく家から出て声をかけることにする。


「どうしたんだ、ガ...」


どうしたんだ、ガキ、といいそうになって

やめた。ここは少しめんどうでも優しく声をかけることにする。ただでさえ、不良の俺。

言葉すら返してくれないかもと危惧した。


「ひぇっ...」


「別に怪しいもんじゃねぇよ。

俺はこの家の住人。おまえが家の前の道路で

蹲ってたらさすがに気になって声くらいかけるだろーよ」


最初は黙っていたが、その少年はおもむろに語り出した。


「猫を追っかけていたら迷子になっちゃって。気がついたらここに来てて、

家に帰ろうと歩いてはみたものの、ダメだった。疲れたからちょっと休憩してんだよ」


「ふーん」


「猫ってどんな猫?」


「黒と白のブチネコだよ」


「あー、それ、俺の家で飼ってる猫だ。

ブッチーっていうんだよ」


「ほら。疲れてんだろ。

おんぶしてやるから、家の住所教えろ。

連れてってやる...!」


「え、いいの!?」


「おう」


「見かけは怖いけど案外やさしーんだね」


「...まぁな」

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