第2話 アイドル
「
「伊東さんはバリアが強いから」
人との接触は確かに減った。けれども心地良いかと聞かれたら、そうではなかった。
感情が動かないんじゃない。怖くて出せないだけだった。自分の本音を相手に出して、もめるのが怖いし面倒だった。
私だって愉しいことを考えたい。幸運は前向きな思考をする人についてくると有名な占い師が言っていた。
それを意識したのかは覚えていないけれども、私はアイドルのファンになった。
そのアイドルを、いつ好きになったのかは分からない。気づいたら好きに、ファンになっていた。
私の
顔もスタイルも綺麗な男の子たちが歌って踊る。それは愉しいに決まっている。今も昔も。
こんなに素敵な人を見つけて認めている自分の目は確かだと自信もついた。アイドルが輝けば輝くほど、私の目とセンスは確実なものだと証明される。
推しメンが表紙の雑誌は当然買う。新譜が発売した周辺の月は大量に推しが表紙を飾る。ファッション誌にアイドル誌、週刊誌にまで載る。すぐに部屋には雑誌が山積みになる。このままではすぐに保管場所がなくなる。そこで活躍するのがファイルだった。
推しが載っているページだけを切り抜き、ファイルに保管する伝統的なシステム。切り抜き用ファイルは、たくさん収納出来ることが条件だ。百均でバインダー本体とリフィルを幾つか買う。
最初は一枚のリフィルに一ページずつ入れていたらすぐに満杯になったので、一枚のリフィルに一冊の雑誌掲載ページ分を全て収納した。
それでもすぐに満杯になった。満杯になると、バインダーのまん中についてある
六冊目のバインダー本体を買った次の日、アイドルが新しい髪型を披露した。
とても趣味の悪い髪色だった。ダサいと思った。SNSを見てもその髪色を良いと言っているファンはあまり見かけない。私はなるべく見ないようにした。
男子に流行の色なのだろうか? それとも海外で流行している色なのだろうか? いずれにせよ、ダサいものはダサい。
私はしばらく、アイドルの推しを見ることを避けた。
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