うす皮
青山えむ
第1話 私の恋愛は妄想の中だけ
私の恋愛は妄想の中だけ。
知り合ったメンズをかっこいいなと思っても「絶対彼女いるよね」で自己完結する。
万が一彼女がいない、なんて情報があったとしても振り回されてはいけない。彼女がいなくても「遊ぶ女」が多数いる場合もある。聞いた話だけれども。
遊ぶ女。決して「本命」ではないのだけれども、なぜだか敵わない気がしてレベルが高く見える。不思議だ。
私は以前、告白をしてフラれたことがある。とてもショックだった。自分を全否定された気がした。恥ずかしくてもう、相手に会えないと思った。死のうと思った。泣きながら、お金がかからず苦しまずに死ねる方法を検索した。実行したけれども苦しくて途中でやめた。情けなかった。本気ではなかったのだろう。
告白しようと思ったのは「きっと相手も私に好意を持っている」と思ったから。だから告白をした。結果は違った。
恋は盲目、とは、こんな思い込みも表しているのかと痛感した。相手が私に笑いかけるのは、ただ単に人間関係を潤滑にするためだけだった。以前私が話した内容を覚えているのは、単に記憶力が良くて会話を潤滑にするためだけだった。私だけが勘違いをしていた。
それからの私は、気になるメンズがいても必要以上に気持ちを膨らませなくなった。
「絶対彼女いるよね」そう思っておけば、傷は浅い。むしろ傷はつかずに済むはずだ。
特別面白いことも
恋愛話になると、極力否定的な意見を述べる。気持ちがそちらに向かないように。
今まで聞いた恋愛話の悪い例ばかりを並べる。ネタがなくなると、本当かは分からない漫画やドラマの例まで持ち出していた。
結果、「頭で恋愛している」とか「頭がかたい」だのとよく言われるようになった。
それでも時には期待をして、メンズと少し話をしてみる。優しい口調と愉しい会話に胸が高まる。
数分後には会話の中に「彼女が」の単語が出てくる。そうか、彼女がいるから優しい口調なのか。優しい口調だから彼女がいるのかもしれないけれども。
優しいだけじゃない。こちらの話をよく聞く。気遣いができるし気が利く。会話のリズムも良いし粋な言い回しをする。
彼女がいるメンズは「やっぱり」と、納得してしまう。
そして私は少しだけ傷つく。なんでか分からないけれども傷つく。わくわくと傷の度合いは同じなのだろうか。期待した分、落ちるというやつだろうか。
期待……。ただの同僚、ただの友達の友達。深い意味はなく話しただけで何を期待するというのか。本当に情けない。
情けない姿を悟られたくない。そうするには人との接触を減らす必要がある。それが一番簡単だと思っていたから。私は意識して、人との距離をとった。
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