10月19日

 無事に朝早く出発できた。今は七時半ぴったりでマンションを出たところ。学校に行こうと思う。かなり余裕を持って家を出られた。

 この一週間ほど、帯刀とは学校で会話していない。学校で、という条件付きであるのでそれ以外、例えばラインや電話で連絡は取っている。なぜ僕らが同じクラスにいながらにして直接話していないのかというと、放課後に会えないからだ。僕らが会うのは基本放課後だが、最近は放課後が騒がしい。テスト期間なのだ。帯刀は友人と帰宅するので三日に一度くらいのペースで会う僕は全くその機会を失った。別に直に話したい訳じゃない。事実を述べたまでだ。本日は中間考査最終日である。長い戦いだった。

 駅にいつも通り定期ICカードで入場する。相変わらず朝は人が多いし、皆がピリピリしていて嫌いだ。とっとと高校へ行ってしまおう。とは言え、電車は定刻通り動くので早いも遅いも無いのだが。駅の階段を上って高架を歩き、他線ホームと下りホームを通過し、上りホームである一番ホームの階段を降りる。のんびり来たのにあと八分ある。一本早く行けるかもしれない。そう思ったのだが僕は目を疑った。人が多すぎる。ここまで混雑しているのを目撃したのは初だ。何があったのか確認する間もなく、僕は新たな発見をした。階段から四、五メートルの所に帯刀がいる。ホームの壁に体を預け、殊勝にも参考書を熟読している。僕はそれを不思議に思った。帯刀は急行で一駅下った所が最寄り駅なので、僕の乗る駅で降りることがまず無い。そういったことを尋ねる目的でも声を掛ける。あまりにも集中しているので申し訳なかった。

「帯刀、おはよう」

 帯刀は左のイヤホンを外すと、僕に微笑んだ。生徒は十月に入ってからブレザーを羽織っているが、僕に春の帯刀の印象がほぼ無いので新鮮である。

「おはよう。まさかとは思ったけど唯都くんに会えるなんてね」

「うん。帯刀は何でここにいるの?」

「唯都くんを待ってたの」

 きょとんとした顔で言う。

「違うよな。何かあったのか」

「ふふ、あれ見て」

 帯刀が指差す先にはホームの天井から吊るされた電光掲示板があった。いつもと違い、電車の行き先と時刻が載っていない。代わりに「──いて発生した人身事故のため遅延──」という文字が流れている。納得した。

「電車が止まっちゃってここで降ろされたの」

「打ち切りになったのか。飛び込み?」

 遅延は今までも数回あったが、再開の見通しが立っていない状況は初めてだった。僕は勉強する帯刀の隣で同じように背中を持たれ掛ける。昨日遅くまで勉強したので今日はしないことにした。眠たい。

「友達の情報に拠ると、都内の手前辺りで飛び込み自殺があったらしいよ」

「ふうん。困ったね」

「本当にね。死ぬなら最期くらい他人様に迷惑かけるなと思うよね」

「はは。飛び込みって惨いって言うよね」

 帯刀は僕の目を見て笑った。何だよ。

「帯刀、この後どうする? このままだと遅刻しそうだな。振替輸送とかある?」

「さあ、あるかもね」

「テスト受けられるのかよ、まったく」

「遅刻嫌だ?」

「僕が? 別に」

「……何それ! 最初遅刻が——」

「あー、はいはい。勉強したいならしてて」

 僕は帯刀が勉強したくて話を切り上げたいのだと思った。たぶん四日間も続いた徹夜のせいでイライラしているのだろう。帯刀とは不即不離の絶妙な距離感を築いていると思うので、これ以上はここにいる必要は無いと思った。立ち去ろうとすると、帯刀は僕のリュックを摘まんだ。僕の意向を察知してか、帯刀はステイを指で伝える。まあ、僕はどっちでもいい。

「唯都くんは勉強しないの?」

 帯刀は参考書に目線を落としたまま質問を投げ掛けた。僕は腕組みをしている。さっきも言ったように眠たいのだ。

「今更足掻いても何も変わらないだろ。天命既に決せり」

「あのねえ。成績とか気にしないわけ?」

「まあ。頭も良くないし。順位で言うと百五十番目だ」

 うちの学年が約三百数十人なので平均だ。ここから這い上がろうとする向上心も、下がってもいいという度胸も無い。一応帯刀にも同じ質問をしてみよう。

「帯刀は何位なの?」

 帯刀は真っ直ぐ前を見て照れ臭そうに笑った。どっちの反応だろう。

「大体六位」

 理解し損ねた。聞こえてはいたのだが意味が飲み込めなかった。時差五秒で脳みそがやっと反応する。帯刀はやはり恥ずかしそうに僕に向かって笑う。知らなかった。帯刀が成績優秀だなんて。普段の行動からは考えられない。人は見かけによらないのだ。

 遅延証明書を取りに行くなどした後、四十分弱待つと電車が来た。ギリギリ乗れたけど苦しかった。乗車率百二十パーセントってやつだ。帯刀も勉強どころでは無さそうだった。ずっと僕のリュックを両手で掴んでいた。高校のある駅には十分ほどで着く。人を搔き分けて電車から降り、後ろで健気に掴まる帯刀も何とかそのまま引っ張り出した。

「圧死するって」

 帯刀は笑っている。死んだら笑い事じゃない。しかし本当に苦しそうだ。態度は僕より大きいが、体は一回り小さいから。構内を歩いて外に出る。帯刀が背後から付いて来た。朝の駅で一緒にいるのは九月以来だ。駅前のロータリーに出て、僕は帯刀に提案する。

「先に行ってくれ。二人で登校してあらぬ疑いをかけられたくない」

 前は彼氏の存在を知らなかったから迂闊にも一緒に歩いたが、知ってしまった以上はそうもいかないだろう。僕としてはもっともな意見だったのだが、帯刀は口角を上げながら目はじっと僕を見据えた。何か言いたいことがあるのか。

「あの、えっとさ、今日は一緒に帰りたい?」

 妙に流暢にいかない。それに質問の内容がよくわからない。僕が帯刀と共に帰るときは放課後にたまたま合流したときと決まっている。こうして事前に約束することは無かった。

「どっちでもいいよ。どうせ暇だから。帯刀が話したいと思ったら声掛けて」

「ねえ、私、唯都くんと帰りたい」

 こんなこと言われたのは初めてだ。意図が伝わらない上に、冗談っぽいトーンでない。

「わかった、いいけど」

「私は放課後ちょっと予定があって一度教室出るから、唯都くんは教室に残ったまま待っててね。迎えに行く」

 放課後に教室に残れと。それを言うと、帯刀は振り返ることもなく歩いて行ってしまった。本当に体調が悪いのかもしれない。


 ——テスト中。この世にはまだ知らない物事がいっぱいある。世界はなんと奥深いのだろうか。今度こそ無事では済まないかもしれない。


 放課後。最前席の帯刀が教室を出て行くのを見送った。僕は言われた通り座ったままだ。腹が減った。窓にうっすら反射する自分を見て時刻を確認したくなる。十一時五十分。昼食は家でとるつもりだったので何も持って来ていない。ちょっとお腹の様子が深刻だ。教室の中を見ると午後の部活に備えて大盛の弁当を食っている生徒が大勢いた。

 そこで気付いた。僕は教室で待てと言われただけだ。要は探す手間を省くため待ち合わせようということだ。購買でパンでも買って来よう。結局これは間違いだとわかるのだが、知る由が無いので止めようも無い。エネルギー不足の体を持ち上げる。財布だけ持って行く。僕らの教室は四階なので一階の購買に行くには途方もない量の階段を下る必要がある。背に腹は代えられない、と割り切って茨の道を進む。階段をいつもより素早く下った。一階に着いたらすぐそこだ。

 僕は一階に着いてから足を食堂の方へ向けたが、女子とばったりぶつかりそうになった。いかんな、ぼうっとしていた。僕もその子も立ち止まってしまう。その女子は俯いていて顔が見えない。右に避けようと思ったらその子も鏡のように動く。何だ、通せんぼうか。ずいぶん古典的な遊びをするものだ。僕が左に行くとやはり同じように。たまにこういうことはある。面倒なので道を開けてやるとその子は顔を上げた。知ってる人だと思った。クラスメイトで最近名前を覚えた人だ。西川美海(にしかわ みなみ)といって、西だか南だか不思議な名前だ。一つで結った同じ髪型の西島さんもいて識別は最近ついたのだが、確かこの子とは文化祭の準備で一緒にゴミ捨てで協力した。一緒にカフェにも行った。それ以外はこれといった接点も無い。西川さんは僕を見上げると結構大きな声で言った。

「常磐君、話があるの。こっち来て」

 体育館と校舎を繋ぐ渡り廊下に連れ出された。僕の軽食はどうなったのか。そのまま屋外の体育館横通路に。他の誰の姿も見えない、遠くで喧騒が聞こえるだけの場所だった。風の音がやけに耳に障る。

 西川さんは明らかに緊張していた。意識的に深く息をしている。体の前で両手を握り締めていた。僕までその緊張が伝わる。そもそも呼び付けられる心当たりが全く無い。

「えっと、何かな?」

 西川さんは一直線に揃った前髪を揺らして目線をきちんと僕に合わせた。

「常磐君に言いたいことがあるの。私たち文化祭で初めて話したよね。元々大人しい人だと思っていたけど、優しくて面白い人だなって思った。あと、カフェに行ったとき─—」

 その後、いくつもの思い出を勝手に喋った。未だ目的が不明だ。

「——それと、文化祭の校外公開日に吹奏楽部の演奏聴きに来てくれて嬉しかった」

 記憶に無い。たぶん暇だったから薄暗い休める所を探していて、体育館に入ったときのことだろう。最後列に座って軽音楽部の出番のときは確実に聴いた。が、吹奏楽も聴いたのかな。恐らく寝ていただろうし、西川さんが何部に所属しているか知らなかった。すごく返答に悩んでいた。西川さんはなぜか切羽詰まった様子で話を止めず、手はぎゅっと握っている。そして次の一言が僕を愕然とさせた。

「それで私、常磐君のこと好きになりました。いきなりだけど、私と付き合って下さい」

 震える声で言う。申し訳ないが、ついさっきまで単なるクラスメイトとしか思っていなかった。特別西川さんと仲が良いとも感じていない。どういう心境で僕に告白をしたのだろうか。本心か? ドッキリではあるまいな。延々説明されたが、僕を普通の女子が好くなんてことあり得るのか。僕は後ずさりするしかなかった。どう反応するのが正解だろう。戸惑っていると西川さんは明らかに泣き出しそうになっていた。僕は確実に何も言ってないのに。本当にわからない。

「その、常磐君に彼女がいるかもしれないとは思ってたけど。それなら諦めます。違うならダメですか」

 そう言われても。彼女がいないから西川さんにしようとはならない。面倒なことになったと思っていると救世主が登場した。

「あれ、唯都くん? こんな所で何してるの? 早く帰ろう」

 帯刀が通路の角からひょいと顔を覗かせた。よくこんな所に来てくれた。こちらへすたすた寄って来て僕の手首を掴む。

「待って。帯刀さん」

 西川さんが先ほどよりワントーン下がった声を出す。帯刀は笑った。

「唯都くんを捜してたら、こっち行ったよって聞いたの。まだ唯都くんに何か?」

 西川さんは口を閉ざした。これは帯刀にどう説明すべきか。僕はまず西川さんに断った。

「あの、西川さん。後で連絡するから」

 西川さんは「……わかった」と愛想笑いを向けた。流石に良くないことをしたと思った。

「行こ。唯都くん」

 帯刀に引っ張られる。体育館裏から抜け出し、校舎に戻った。教室に帰らなくては。リュックが置いたままだ。腹が減った。

 教室で荷物を取り、校門を出た。今日は曇りだ。気温は適温でこれ以上表現しようがない。どちらかと言えば快適かもしれない。駅方向に並んで歩き出す。アスファルトの歩道を進む。せいぜい十分で着く。自然と駅の徒歩十分圏内の所で生きている気がする。

「もうバカなの、唯都くん。教室にいろって言ったよね」

 帯刀は怒っている。きっと教室に戻ったときに僕がいなかったのだろう。それより元気が戻ったようで何よりだ。やはりテストがナーバスの原因だったのかもしれない。余談だが僕が左、帯刀が右という立ち位置ができた。

「パン買いに出ていたんだ。それより——」

「告白されたんだー。美海ちゃんからでしょ。やるな、お前」

 帯刀が僕の肩を小突いた。いやどうして知っている?

「知ってたよ。昨日の放課後、美海ちゃんが友達と話してた。明日唯都くんを昇降口で待って告白するって。盗み聞きしたんだから」

「……言えよ」

「言うワケにはいかないじゃん。でも唯都くんは面倒臭がると思ったから、教室に留まっておけって言ったからね。私と二人で下駄箱に直行すれば告白もされなかったのにー」

 それならそうと言え。本当に由々しき事態だ。もう仕方ないが、これからどうすべきか。

 電車に乗る。帰りは下りだし、十二時半だし、人はさほど多くない。座席一列に間隔を空けて三人ずつくらいいて、七割はお年寄りだった。朝とは大違いだ。座れるから助かる。僕が座席の端、帯刀がその隣に着席する。僕はスマホを取り出す。メッセージが西川さんから来ている。『常磐くん。今日はいきなりでごめんなさい。答えはゆっくりでもいいです』だった。

「ははは! 面白いなあ、唯都くん。いつの間にか美海ちゃんを落とすとは」

 静かにしろ、電車の中だ。帯刀は勝手に僕のスマホを覗き込んでいる。やり取りが筒抜けの西川さんの気持ちになれ。返信に困っていると帯刀が助け船を申し出た。

「私が代わりに返信してあげるよ」

「頼む」

「頼むじゃ駄目だよ」

 そりゃそうだが。西川さんという人もよく知らないのに返事なんてできっこない。途中の駅に着いて数人降りて数人乗ってくる。プラスマイナスゼロだ。

「西川さんってどう?」

「あれ、興味持った? 思う壺じゃん」

 まずは質問に答えて欲しい。

「美海ちゃんは落ち着いた感じでしょ。吹奏楽部で超可愛いよね」

 ますますなぜ僕なのかと思う。丁重に断るしかないだろう。数駅を経てもう次で降りることになってしまった。帯刀から有益なアドバイスは得られずじまいとなった。

「じゃあね。もう降りる」

「頑張れよ。美海ちゃん泣かせるな」

 溜息が漏れる。帯刀は笑顔で僕を見つめた。電車のアナウンスが入ったので、僕はそれに応じて立ち上がる。

「そう言えば、西川さんは帯刀のこと、さん付けなんだな」

 ふと気になったので訊いてみた。特別帯刀の反応は無かった。左のドアに向かう。電車が止まり、慣性でおっと、とよろけて外に出た。

 階段へ歩く間、帯刀のことを考えてしまった。帯刀はクラスで女子に「しおちゃん」と呼ばれていた記憶がある。男子は「栞さん」とかだろうか。「帯刀」なんてわかりにくい名前で呼ぶのは僕か教師くらいだった。僕は何となく呼びやすいのだが。西川さんはどうして「帯刀さん」と呼ぶのか。

「さっきの回答だけどね、別にみんなと同じくらい仲がいいわけじゃないからだよ。さん付けの人も結構いる」

 そうか。まあ、そういうこともあるだろう。

「──って、何で帯刀がいるんだよ」

「しっ、見られてる。静かにして」

 思わず声を張り上げてしまった。いつの間にかいた帯刀が隣で慌てて苦笑している。

「帯刀が降りるのは次の駅だろ。どうして降りたの? ほら、行っちゃうよ」

「うん、ドア閉まったね。大丈夫。今日唯都くんの家でご飯食べるから」

 何言っているんだ、こいつ。

「何言ってんの? みたいな顔で見ないでよ」

 ずいぶん表情の表現力が上がった。僕もこの一カ月で成長しているのだ。

「帰れ。君に食わせる飯は無い」

「着いていくもんね。東口? 西口?」

 僕は諦めた。帯刀相手に強情を張るのは得策じゃない。家までの道は、あえて教えない。帯刀は暴走しがちだから後ろを付いて来てもらう。が、結局西口改札を帯刀、僕の順で出た。東西二つの出口しか無いので西側に足を向けた瞬間、即座に追い越された。

「家どっち?」

 右だと答える。駅を出て右の線路沿いに少し進み、住宅街に入ったらすぐのマンションが僕の家だ。帯刀は右に体を向けると、真っ直ぐ歩くかと思いきや駅の建物にくっ付いているアイスクリーム屋に入った。言わんこっちゃない。すぐ勝手なことをしでかす。僕が付いていくと、中のアイスケースの前でしかめ面をした帯刀が選んでいた。

「唯都くん、アイス奢ってね」

 笑顔を作って「嫌だ」と拒絶する。

「だからー、美海ちゃんの件の相談料。返信の文面付きで。ほら、前払いして!」

 調子乗るな。コンビニで弁当が買える額を渡す。もったいない。

「ふふ、サンキュー」

 帯刀は再びケースに向かい合った。選ぶのに時間が掛かったので待っている間、試食を貰った。僕はチョコ派だ。

「お待たせ! さあ出発だー」

 現れた帯刀はアイスをコーンに二個も重ねていた。どう考えても僕の渡したお金じゃ買えないだろう。店を出てから帯刀は僕と同じ歩調で歩いた。ストロベリーソースのアイスの上にチョコミントアイスが載っているのをパクパク食べている。帯刀が静かなのは唯一食っているときだけだ。

 その間は暇だった。帯刀が静かだなんて困る。僕は何をこいつに期待しているのだろうか。たまに美味しいことを表情で示す帯刀の方を見ると色々考えてしまう。マンションに着いたときにはアイスはまるっと消えていた。エントランスを通り過ぎ、エレベーターを待つ。帯刀が横でニコニコしている。

「家は十三階だから」

「うわ。不吉だね」

「嘘だよ、四階」

 帯刀はすんなりとエレベーターに入って行って階数のボタンを押した。

 我が家にやっと帰って来られた。鍵を開けて僕が先に入る。帯刀が後に続いて入り、靴を揃えてから上がって来た。

「唯都くん、手洗いしようよ」

 僕は洗面所を指差した。僕の家はキッチン、リビング、寝室、自室、洗面所と風呂、トイレで構成された何の変哲も無いものだ。

「帯刀、上着貸して」

 ブレザーとアイスのゴミとリュックを受け取ってリビングに向かう。ゴミを捨て、リュックをソファーに置いて、ハンガーラックに二人分のブレザーを掛けた。照明を点けようとすると、帯刀が足をじたばたさせて呼んだ。

「唯都くん、来てよー」

 三階の方に迷惑だろう。帰ってから忙しい。せっかく休めるはずだったのに。リビングの電気のスイッチを押し、洗面所で帯刀が手を拝んでいるのを見た。手洗い中らしい。水を止めたのは褒めよう。

「私の腕捲って!」

 確かに帯刀の右袖がずり落ちている。そんなことで同級生をこき使うな。仕方ないので近付いて捲ってやった。シャツとカーディガンのどちらも掴んで肘上まで引き上げる。最中に帯刀が話し掛けてくる。顔が近い。

「唯都くんは洗った?」

「キッチンでするから」

「そのままお昼作って。カップ麺じゃ嫌だよ」

 強いて作れと言われればそうしようと考えていた。時刻は一時半過ぎ。空腹だ。それに帯刀には伝えてなかったかもしれないが、僕は朝晩に家族分のご飯を用意している。帯刀に食べさせるくらいの飯は拵えることができるだろう。僕は帯刀から離れる。キッチンへ行く。

「あるもので作るから限られているけど、アレルギーとかある?」

「無いよ。好き嫌いも」

 僕は頷いた。シンクの前に立ち、まずは帯刀が言ったように手洗い、うがい。それからメニューを考える。パスタが余っていた。冷蔵庫を開ける。パスタと相性のいい物はあるか。

 帯刀がリビングに踏み入って来た。ソファーにどっかり座り、テレビを点けて横になる。何も言わない。僕が帯刀の家に来たような気分になる。そんなことより、今日の昼食が思い付いた。ペペロンチーノだ。

 制服のままでは良くないので、エプロンを巻いて材料を準備する。スパゲッティと唐辛子とニンニクくらいだろうか。パスタをまず茹でる。二人前をお湯を沸騰させた鍋に突っ込み、くるりと捻って三六〇度に広げる。そして唐辛子の種を取り除いて数等分に切り、ニンニクの下処理をしてから細かく切り刻む。フライパンに刻んだニンニクとオリーブオイルを放り込んで弱火くらいで炒める。いい匂いがしたら唐辛子も投入。適度に炒めているうちにパスタの茹で時間に近付いてくるので麺を引き上げておく。茹で汁を少し取ってフライパンに注ぐ。そしてパスタ投下。火を強めて混ぜていく。いい感じ。

「唯都くーん。喉乾いた。ジュースある?」

「確か、麦茶と牛乳とコーラならあるよ」

「フルーツジュース買って来て! 炭酸抜きだよ。ついでにスイーツも」

 無理だろう。カウンターキッチンなので帯刀がゴロゴロしているのが視認できるのだが、お前が行くという選択肢は無いのか。「ただいま調理中」と言うと答えが返って来た。

「じゃあ私が交代するから行って来てよ。私、家の鍵持ってないから閉め出されるかもしれないでしょ。私を信頼してパスタを託してくれたらいいよ」

 僕は信頼されていないが帯刀は信頼しろと。あとしれっとパスタを作っているとわかっていたようだ。

「しょうがないな。もうすぐ終わりだから、塩と胡椒をお好みで足して」

 帯刀がソファーからとんで来た。僕からフライパンを奪うと菜箸も受け取り、楽しそうに僕の仕事を受け継いだ。

「じゃあ行って来る」

 リュックからスマホと財布を取り出し、出立の準備をする。

「エプロン外した方がいいよ。外すならワイシャツちゃんとしまいなさい」

 そうだな、正しい。ただ、同級生をパシリに使う人間は正しくないと思う。近所のコンビニでリンゴジュース一パックとティラミスを二つ購入して、十分弱で帰った。

「あなた、お帰りなさい。ご飯できてるわよ」

 夫婦ごっこならやめとけ。帯刀はどちらかと言えば愛人だろう。リビングに行くと帯刀がソファーテーブルの前に座り、パスタとフォークとスプーンを二人分用意していた。僕はコンビニ袋から取り出したジュースをテーブルに置く。ティラミスは袋のまま冷蔵庫へ入れる。

「先に食べていいよ」と僕は手を洗う。

「私はね、食事って全員揃って『いただきます』と『ごちそうさま』をするのが大事だと思う。それは譲れません」

 タオルで手を拭いて、帯刀が方角でいう西に座っているのだが、僕は北に座した。皿を見て驚愕した。

「質問がある。なぜ目玉焼きが上に載っかっているんだ」

 帯刀は喜んでいる。料理が趣味の僕にちょっとした意地悪をするのが趣味なのか。

「好きだから。美味しいものと美味しいものをミックスしたの」

 まあ塩胡椒の塩梅も帯刀に任せてしまったから自分の料理ではないのだけど軽くショックだ。僕はコップにジュースを注いであげる。

「目玉焼きには塩だけを振るのが私のおすすめだよ。それではいただきます!」

「いただきます」

 帯刀は言うなりフォークで真っ二つに目玉焼きを切って混ぜた。やる瀬ない気分になる。僕は目玉焼きに少々塩をかけた。

「美味しいかい?」

 帯刀は一口目をフォークで掬い上げてスプーンの上でくるりと巻いた。卵は半熟なので黄身が丁度良く混じっている。咀嚼。一拍置いて飲み込み、返事をする。

「美味しいよ。だけど店で出て来たら微妙。素人が作ったと聞かされていたら、普通レベルかな」

 そうかい。まあまあへこむ。美味しい、と言われたい気がしなくもない。僕も口に運ぶが想像の域を出なかった。卵がアクセントになっていて、無かったら本当に標準だ。でも不味くはない。空腹にはうってつけだと思う。お互い食事中は静かになる。もぐもぐと食べ進めて、テレビが唯一の音源となる。半分くらい食べてから帯刀が切り出す。

「そう言えば返信どうしたの?」

 僕はテーブルに置いたスマホの黒い画面を見せる。何も無いとのサインだ。帯刀は取り上げると当然のようにロックを解除してラインを開いた。なぜ開錠できる?

「はい、返信書いてあげたよ」

 帯刀が一分ほどで打った文面はこうだった。

『今日はごめんなさい。いきなりで上手く返事ができなかったです。俺はまだ貴方のことをよく知らないのでお付き合いはできません。まずは友達からではどうですか? 折角勇気を出してくれたのにごめんなさい。貴方の気持ちは伝わりました』

「この『俺』を直して送ろう」

「いいじゃん、モテるヤツっぽい」

「遊びじゃないんだよ」

 僕はそこだけを修正して送信した。内容は考えなしで提供されるがまま了承したが、果たして良かったのか。

「これで私の責務は終了ね。そうだ、唯都くん。わざわざ家まで上がり込んだんだもの。昔のアルバムとか見せてよ」

 とんでもない提案をしてくる。どうせ散々にいじられて終わりだろう。そんな一過性の興趣のために過去を晒す気は更々ない。

「無理だね。お金払うならいいよ」

「つまらない人間。モテないでしょ」

「癪だな。手料理を振る舞っただろう」

 帯刀は僕の目を見て頬を膨らます。その目で見るな。

「わかったよ。ご飯の後だ」

 とりあえず全部平らげてからでもいいはず。一緒にごちそうさましたいんだろ。数分後には食べ終えた。悪くない満腹感がする。お待ちかねのごちそうさまを済ませ、すぐにでも行こうとしたが、帯刀に止められた。

「歯磨きしたい」

 洗面所に帯刀先導で行く。電気を点けて鏡の前に二人で立つ。

「唯都くんの歯ブラシ貸して」

 もちろん拒否。首を横に振る。帯刀はなぜか怒った。

「あのね、女の子にニンニク料理食べさせておいてそれはあり得ないです。いいから貸しなさい」

 それは失礼なことをしてしまった。配慮の欠片も無い行動をしていた。しかし僕のものは貸せない。どんなへきだ。

「新しいのやるよ。あとこれ」

 黄色の新品歯ブラシとミント風味のタブレット菓子の容器を渡した。帯刀は渋々頷いた。

 僕は手早く歯磨きを終わらせ、自室に向かった。帯刀に押し入られる可能性は完全に無くなった訳ではないが、そんな雰囲気はしない。あれでも常識はほどほどにあるから。

 押入れを開ける。アルバムは奥だ。最近は見ていない。やっぱり学校のアルバムは見せたくないなという気分になる。面倒にもなってきた。僕は一度寝転がる。テスト後だし満腹だし眠たい。


 ——と思っていたらやはり寝てしまった。机上のデジタル時計は三時十二分を表示している。しまったと部屋を飛び出すと、リビングのソファー上で横たわる帯刀を確認できた。そっと近寄ると、どうやら眠っているらしいとわかった。ソファーの前にあぐらをかく。

「帯刀、やっぱり疲れてたんだ」

 すやすや寝息を立てる帯刀に話し掛ける。もちろん聞いていない。僕は帯刀の労を労ってやりたくて、起こすことができなかった。きっとテスト勉強の疲労がどっと押し寄せているのだろう。それだけじゃない。何だか申し訳ない気がした。日頃、帯刀に世話になっていると感じている僕がいるからか。面白くも何ともない僕とこうして時間を過ごさせているのは本当に悪いと思う。だが、ずっとこうして寝かせておけないので起こす。テーブルの上のタブレット菓子を一粒口に放ってから帯刀の肩を叩く。

「帯刀、起きて」

 帯刀は物憂げな顔で夢の中にいる。

「帯刀! そろそろ帰ったらどうだ」

 起きない。それどころかちょっと顔をしかめたと思ったら、寝返りを打ってそっぽを向いてしまった。

「しーおーりー」

 肩を揺すると、やっとのことで目を開けた帯刀は急にこちらを振り返った。

「わ! 唯都くん、近いよ」

 クッションを抱いたまま、また元の態勢に戻った。そして声だけが飛んで来る。

「今何時?」

「もうすぐ三時半」

 帯刀はのっそり起き上がった。髪を手で直してニコリと僕に笑う。

「名残惜しいけど帰ろうかな。もっと遊びたかったね」

 立ち上がると、リュックを背負った帯刀は玄関にゆっくり大股で歩いていった。僕はテレビを消し、冷蔵庫の中のコンビニの袋を持って追い掛ける。靴を履いた帯刀は礼をした。

「お邪魔しました」

「いいって。これ、ティラミス入ってるから持ってけ」

「え? 二つ入ってるけどいいの?」

「構わないよ」

 帯刀はティラミスの入った袋を受け取ると、代わりに僕の手の平に硬貨を載せた。

「アイスもジュースもこれも、色々買わせちゃって悪いから。アイスの分は返すね」

 帯刀は躊躇って笑う。僕は溜息を吐いた。

「要らないって。僕は絶対受け取らないよ」

 西川さんの件の相談料という意味と同じくらい、帯刀の喜んだ顔に投資したつもりだ。これは口が裂けても言わないが。帯刀は笑ってポケットにそれを戻した。

「じゃあね。お皿水に浸けてあるだけなんだけどお願いね」

「うん。またな。マンション出られるか?」

 僕は手を振って見送る。帯刀も同じようにした。姿が見えなくなったところでドアを閉じ、鍵を閉める。空のリビングに戻って何となく皿洗い。終わってソファーに座るが、生ぬるい体温が残っていた。置きっぱなしのスマホを見ると西川さんから返事が来ていた。

『ありがとう。わかりました。友達からよろしくね! (笑顔のマーク)』

 それには『よろしく』と返しておいた。他にやり残したことは無いか。そこで、自分がまだ制服を着ていることに気付いた。僕はセーターを脱いでブレザーを捜した。あれ、ハンガーラックに二着ある。

「どうしたものか」

 流石に頭を抱えた。帯刀は自分の上着を忘れやがった。寝ぼけてたんだ。さて、どうするか。二択だと思う。一つは帯刀に連絡を取ってどうするか決めてもらう。その場合「取りに行く」か「月曜まで持っていて」と言われるだろう。二つ目、このまま追い掛ける。こちらを取るなら、今すぐ出発しないと間に合わない。

 僕はセーターと上着をまた着た。必要最小限の物とブレザーを持って家を出る。マンションを出ると走った。電車によっては行ってしまってもおかしくない。間に合って欲しいとも間に合わなくていいとも思った。

 その間、僕は帯刀との関係を再考せざるを得なかった。朝も言ったが、僕と帯刀は付かず離れずの間柄だ。この行動はそれに明らかに反している。お昼で人通りもまばらで、車も少ない閑静な道を疾走する僕はどんな目で見られているか、どうでもいいから帯刀に会わなくてはと思う。

 帯刀と僕との間に架かる橋を駆けて行く。あいつの心に上陸して踏み込む。これは怖いことでもあった。人との関わりを疎んじる僕にとって、誰かと距離を詰めること、嫌われることさえ覚悟で相手の心に立ち入ることは勇気が要った。

 今までもこうして相手の心に立ち入ることは無いでもなかった。初めて話したとき、帯刀は僕に友達がいないのかどうか尋ねた。帯刀から僕の方に上がって来て、土足で踏み荒らされるような気分がしたものだ。遊園地で僕は帯刀に彼氏がいるのか訊いた。どういうつもりで僕と会うのか詰問した。あれは、まあやり過ぎた。でもそうすることで、より深くお互いを理解できた気がする。壊して直すことで強くなる。人との関係はそうして築くものだったのかもしれない。ただ、壊したままになることもある。それが怖い。怖いってことは帯刀を失いたくないのだろう。

 今僕は帯刀を追い掛けている。橋を駆けて行って、あいつの心を模した島に入ろうとしている。自発的にこうしたいと思って踏み入ったことは初めてだった。

 走っていても前に進んでいる感覚がしなくなってくる。でも、行かなくてはと自分勝手に思う。元が独りだった僕はいくら友達が出来ようが、彼女が出来ようが、今からどうなろうが、きっとこうして自らが正しいと思うことに突っ走ってしまうだろう。いつかそれが決定的な失敗を犯してしまっても、それがこれからすぐだとしても、帯刀に訊きたいことがある。

 普段の半分の時間で駅にたどり着いた。いつもはどれほど怠慢に歩いていたのか。着いたからといって止まっていられない。構内に入ると階段を駆け上がり、下りホームに向かった。電車がもう来ている。慌てて下るとすぐ帯刀の姿を見つけた。呼び止める時間は無い。僕は帯刀が乗車したドアから電車に乗り込んだ。帯刀はドアの傍の座席に座っていた。昼よりはわずかながら人が多い。帯刀の横に座る。

「ええ! 唯都くん?」

 声が大きい。乗客から見られている。僕の渡したブレザーを帯刀は恐る恐る受け取った。

「これだけのために? ありがとう」

 帯刀は戸惑い気味にお辞儀をした。僕は息を荒くしているが、なるべく抑えて背もたれに寄りかかる。

「それだけじゃ来ない。一つ訊いてもいい?」

 帯刀は苦笑した。

「心当たりがあり過ぎるなあ。待って。ちょっぴり怖いから、一回違う話しようよ」

 僕は頷く。一時停止を強いられる。仕方ない。今となってはどうせ引き返せない。

「と言うか、起こしたとき『栞』って呼んでくれたよね。何でまた『帯刀』って呼ぶの?」

 そうだったかな。栞と呼ばれてやっと起きたのだったか。単純に呼ばれ慣れているからだろう。

「帯刀、話が無いなら──」

 帯刀は体の前面に抱えたリュックから文庫本を取り出した。ページを数枚めぐる。『潮騒』という題が見えた。紙を一枚抜いた。

「……しおり。『栞』とかけた名刺か?」

「ははは、そうかも。私の手作りだけど欲しければあげるよ」

 黄色のしおりには白いウサギのイラストが載っていた。

「僕はしおり嫌いだな」

「え。どういう意味……」

「いや、しおりは使わないんだ。本は一気に読む派でさ」

「ああそういう。私はしおり好きだよ。話を中断するセーブアイテムでしょ? 単に集中力が無いのか、もったいぶって読み進めないだけか自分でもわからないけど。要らない?」

「要るよ。大切にする」

 僕は上着のポケットにしまった。

「帯刀、それで僕の話だけど——」

「はいはい。でももう着いちゃった」

 アナウンスを聞いて帯刀が腰を持ち上げ、ドアの前に立った。僕は背中に話し掛ける。

「帯刀、やっぱり今日元気無いよ。朝もテンション低かったし、いつもの帯刀と違った。帰りの約束をした。家に上がり込んでも、部屋荒らしたりしないし、買い物を面倒臭がっ

たり、寝ちゃったり」

 帯刀は返事をしない。電車は減速していく。

「帯刀、何かあった? 嫌なこととか」

 ドアが開いて帯刀が降りた。僕は付いて行く。ホームで二、三歩歩いて振り返った帯刀は笑っていた。

「彼氏と別れちゃったんだー。えへへ」

 馬鹿だなと思った。僕が追い付くと、帯刀の歩きに合わせて出来るだけ速度を落とした。改札の方へ進む。

「今日のお昼に会って、私から『別れて』と言ったよ。だけどいいんだ。未練は全く無いし、これで唯都くんと気兼ねなく会える」

 帯刀は笑っている。僕は頭を掻いた。大丈夫と言われたら、来た意味が無いな。

「落ち込んでないのか。辛くはないの」

「え、辛いかって? そこまでじゃないよ」

 帯刀はむしろ笑顔が深まった。女子って本当にわからない。

「唯都くんが気付くんだなー。追い掛けて来て、傷心した乙女に『何かあった?』はイケメンだね。モテるでしょ?」

「……」

「あっ。今日告白された人だ!」

 楽しそうで何より。喜ばれると顔には出さないが照れ臭い。まあ、来て良かったのかな。ある程度は歓迎されたのかもしれない。エスカレーターで改札まで着くと、僕はまた上り電車に乗らなくてはいけないので止まって見送った。帯刀はいつかのように大きく手を振って帰って行った。

「ありがと。唯都くん」

 家に帰って、九時頃に帯刀と電話をした。親が帰っていたので、何となく部屋の布団の上で寝転がりながら。

『結局、美海ちゃんとはどうなったの?』

「何も」

『実はね、私とあの子は同じ中学なの』

「そうなの?」

『ねえ、いい子だし付き合っちゃえよ』

「嫌だ」

『へー。何で? 他に好きな子いるとか?』

「いない。もう切るよ」

『ちょっと! 意地悪するとモテないぞ』

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