魅了の魔眼持ちの勇者に追放されたけど既にざまぁ済みです
西基央
前編
この世界には邪龍と呼ばれる恐ろしい災厄が存在している。
俺達の住む世界はこれら六柱のドラゴンによって作られたという。
彼らが神様パワーでなんやかんやして世界は誕生した、というのが創世神話だ。
この世界の始まりとなったドラゴンは『始龍』と呼ばれて崇められていた。
そんだけ高位のドラゴンは神がかった力なんだけど、それだけに中には【堕ちたモノ】もいる。
そいつが邪龍。
ただのモンスターじゃなく多くの魔物を統率し、高い知能で人を害する魔王みたい なポジションだ。
邪龍はものすごく強いので普通の人間では倒せない……ということになっている。
そのため奴らを討つには特別な、勇者ポジが必要になる。
それが俺達のパーティーのリーダー、聖王国によって任命された『祝福の騎士』シウトくん二十歳なのだ。
で、当然勇者にはお供の仲間がいる。
祝福の騎士シウト君を筆頭に、
聖女ユノ(16)
傭兵戦士アデリア(19)
魔法使いセレイン・ソル・クラフト(17)
そして最後に俺、魔法使いゼルフィルド・アルスライン(24)。
俺達邪龍討伐チームは、災厄に苦しむ民草のため日夜戦い続けているのだ。
ちなみに俺以外のメンバーは全員女性かつ年下で、もちろんシウトくんが選んだ。もう目論見なんて駄々洩れだよね。
「さあ、今回の依頼も終わらせた! ゼルフィルド、お前は報告と後処理をしておけ!」
「ああ。で、シウト君は?」
「俺はリーダーだからな。次に備えて英気を養うのさ。ユノ、アデリア、セレイン。後はそこの雑用係に任せて、俺達は休もうじゃないか」
まあ唯一の男である俺の扱いなんてこんなもんだ。
もともとはアデリアのおまけで入っただけだし。
「はーい、分かっりました!」
いの一番に賛同するのが傭兵戦士アデリアだ。
ショートポニーがよく似合うカワイイ系で、鍛えられた肉体とは裏腹に大きなお胸が特徴の女性である。
活発元気で、俺とは傭兵時代から付き合いがある。だけど今のチームじゃ当然のようにシウト君を優先する。仕方ないとはいえちょっと悲しいぜ。
「ですが、ゼルフィルド様を置いては」
「いいのさ。所詮そいつは俺や、聖女たるユノのおまけでしかない。雑用をやらせてもらっているだけ感謝してほしいものだね。なあ、無能くん?」
「……分かりました」
三人の中でも一際麗しい美貌の持ち主、聖女ユノ。
長い金紗の髪をたなびかせる、スレンダー系なのに一か所だけちゃんとお肉のついた、同性を敵に回すスタイルをしている。
心優しい性格の彼女は俺の扱いに対しても苦言を呈してくれたが、結局シウト君に従う。
そこも仕方ない。聖王国から……というよりも、国教である龍神教から選ばれた祝福の騎士と聖女は、邪龍討伐チームの中心だ。俺がおまけっていうのも的外れではなかった。
「私はゼル様のお手伝いをするのです」
そんな中で、唯一はっきり拒否を示したのがセレインだ。
つるぺったんな青髪の合法幼女は、同じ魔法使いである俺に対して尊敬の念を抱いてくれている。だから、チームの中では一番俺を優先しようとしているのだが。
「セレイン、俺の瞳を見るんだ」
けれどシウト君はぐっと肩を掴み、彼女の顔を覗き込む。
「はっ……?! あ……」
「なあ、俺の方がいいだろ?」
「は、はい。シウト、様と一緒に、いくのです」
見つめられただけで彼の方に靡いてしまう。
いつもこうだ。誰が何を言っても結局最後にはシウトを選び、俺は一人で雑用ばっかり。
「はっはっはっ! そういうことだ、ゼルフィルド。お前は独り寂しく雑用でもやってろ!」
そうして女の子三人に囲まれてご満悦なシウト君は去っていく。
はぁ、と溜息一つ、俺はそれを眺めるだけ。
「……まったく、あいつらは」
最初はこうではなかった。
むしろ俺の方こそちやほやしてくれていたのに、今じゃ昼間は俺をおざなりに扱うのが当然な風潮だ。
「仕事、するか……」
換金手続きにアイテムの補充、情報収集とやるべきことはいくらでもある。
なんで一人で……と思わなくもないが、これも仕方のないことなんだろう。
◆
「ゼルフィルド・アルセライン。お前をパーティーから追放する」
そんなある日、シウトはそう冷たく言い切った。
「……は?」
その場には他の面々もそろっている。
皆いきなりの発言に困惑している様子だった。
「おいおい、冗談にしちゃ笑えないな」
「ふん。俺は本気だよ」
「なんでだ? こう言っちゃあれだが、俺はチームに貢献しているはずだろ?」
俺は魔法使いの最上位である識聖(アンフェリガ)の称号を賜っている。はっきり言うが俺を上回る術士なんて滅多にいない。
火力自体はセレインよりちょっと上程度だが、専門職には及ばなくとも前衛後衛どちらもこなせ、空間乖離による【切断】のように、防御力を無視して魔物を葬ることができる切り札的な一手もある。
だいたい、チームの雑用を一手に担っているのは俺だ。真面目にパーティの要のはずなんだが。
「どうだか。魔法使いという点ではセレインがいる。お前は別にいなくてもいい人材なんだ……が、追放の理由はそこじゃない」
「なんだよ」
「昨日の夜、と言えばわかるか?」
そう言われて、思い当たることと言えば一つしかない。
「夕飯の後、モンスターの物まね六連発でダダ滑りしたことか?」
「そんなことを理由に追放するわけないだろうというか俺それ知らないんだが!?」
あれ、そうだっけ?
アデリアにすげー冷たい目で見られたんだけど。
「ゼルフィルド様。それをした時、シウト様は町長のところへ行っていました。それにフェアリーの真似の時はクスリとしましたから、ダダ滑りでもないですよ」
「お前ら俺がいない間に何をやっているんだ……」
ユノの心温まるフォロー。
自信を持ったので新しいネタのストックも作っておこう。
「だけど、思い当たるのはそれくらいしかないぞ」
「とぼけているのか、本当に分かっていないのか。ゼルフィルド、宿屋の娘さんに話を聞いたぞ」
宿屋の娘……もしかして。
「ええと、あれかな。それは、シモのお話で?」
「ああ。彼女が言っていたよ、昨晩魔法使い様と“そういうこと”をしたとね。栄えある邪龍討伐隊のメンバーが、いったい何をやってるんだ!」
「いや、ちょっと待ってくれ」
「言い訳があるなら聞こうじゃないか」
シウトが軽蔑の視線を送ってくるので、俺は必死になって弁明する。
「確かに俺は昨夜、“大乱交! 生ハメ☆シスターズ”を開催した。でもシウト君。これは決して無理矢理ではなく同意の上で行われる性の饗宴なわけですよ。しかも膣出しはしてるけどちゃんと避妊薬も使ってる。防音の魔道具で周囲への配慮も完璧。それなのに追放というのはひどいんじゃないかなーっと俺的には思う次第で」
だいたい、俺が夜遊びするのは昼間にストレスがたまるせい。
言ってみればシウトの責任も少なからずあるのだから、そこは情状酌量の余地があるんでないか?
「大ら……なんだって?」
聞き終えるとなぜかシウトは怪訝そうな顔になった。
あれ、あの子から話聞いたんじゃ?
……まずい、墓穴っぽい。
「あー、と、皆で集まってイベントをやった、みたいな?」
「へえ? じゃあそのイベントはどういったものだ」
「あの、ですね。だいら、ん。なんというか」
「さっさと言えよ、無能」
説明しよう。
【大乱交! 生ハメ☆シスターズ】とは俺と複数人のセフレ女子とで行われる宴である。
その名の通り一晩中生ハメ膣出しセックスをして、女の子たちが仲良く竿姉妹になる深い深い交流イベントなのだ。
「じゃあなにか? お前は宿屋の娘さんだけでなく、他の女の子にも手を出したと?」
「まあ、うん」
「みんな、聞いたか!? ゼルフィルドがどれだけクズなのか! 無能のくせに性にもだらしない、こんな男、俺たちのパーティには相応しくない!」
舞台演者みたいな大きな手振りで俺を貶める。
ていうかニヤニヤ顔から内心が透けて見えていた。
でも他のメンバーの反応は芳しくない。シウトも遅ればせながら、様子がおかしい問い気付いたようだ。
「ど、どうしたお前ら。なぜ賛同しない! こいつがいなくなれば、俺と過ごす時間がもっと増えるんだぞ!」
「し、シウト様。ゼルフィルド様も男性なのですから、その、えっちくらいで追放というのは、ひ、ひどいのではありませんか?」
聖女ユノが再びフォローしてくれる。
ただし目はめっちゃ泳いでいる。
「私もそう思います。ゼル様を追放なんてあまりに短慮なのです」
反対に魔導師セレインは冷静かつ淡々と窘める。
けれどシウトはさらに興奮し、徹底的に俺を叩くご様子だ。
「なにを言っている! お前らが愛しているのは俺だろうが?!」
「でもさー。邪龍討伐も大切な任務でしょ? ここで人員減らすのはよくないよ」
アデリアが真っ当なことを言っても怒りは冷めやらない。
「邪龍討伐という崇高な使命があるからこそ、こんな無能は追放するべきだ。少なくとも、乱交をするような奴は必要ない!」
「いやぁ、あのね。うぅん」
俺が言葉に窮すると、青髪のロリっ子魔法使い、セレインが一歩前に出る。
さあ、ここらでネタばらしといこう。
「でも、それなら次女である私も追放になってしまいます」
「……は? どういう、ことだ?」
「だから、私がシスターズの次女、魔法使いセレイン・ソル・クラフト。好きな体位は後背位なのです」
このロリっ子儚げな容姿に反して性欲が強く、俺は普段からお相手をしている。
ちっぱいの先っちょをいじられながら後ろからガンガンがお好みで、ちょっと乱暴にしつつ耳元で「この淫乱、こんなに締め付けて恥ずかしくないのか?」と言ってやると胸も子宮もキュンキュンしちゃうタイプなのだ。
「え、え……?」
「昨日の大乱交には私も参加していました。それなのにゼル様だけ責めるのはおかしいのです」
「じゃ、じゃあ、お前は、ゼルフィルド……と?」
「セフレ関係になってから半年経ちますね」
物静か系なセレインが抑揚なく語る。
おお、シウトくんがあからさまに動揺している。
そりゃそうだよね、自分のハーレムメンバーが他の男とセックスしてるとか。
「な、なんだよそれ。俺の女、それも貴族令嬢に手を出したのか?」
「手というか奥にも出されてますね」
ごめんねセレインちゃん、ちょっと黙ってて?
「あ、私もだよー」
動揺するシウトを余所に、また一人女の子が手を上げる。
「傭兵戦士アデリア。私が長女ね。す、好きな体位は、その。せ、正常位で、キスをしながら、かな?」
えへへと笑うアデリアちゃん。
別に性癖暴露ルールとかありません。
「あ、アデリア、まで?」
「ええと、アデリアは元々傭兵仲間で、このパーティに雇われる前からカラダの関係があったんすよシウトの旦那。そこを責められてもなんともはや」
アデリアは純粋な近接型の戦士。
術士の俺とは能力的にも性的にも相性がよく、戦場でもベッドの上でも大暴れだ。
「この前はゼル様に激しく突かれながら、アデリアとキスしつつ突起をいじられました。正直最高だった……」
「うん、セレインと3Pの機会も多いもんね。そろそろ弱点も理解してきたよ」
「ええ。私達、仲良し姉妹」
いぇーいと掌を合わせるアデリアとセレイン。
仲良きことは美しきかな。
「いやぁ、これは俺のおかげでパーティの絆が深まったと見るべきでは」
「はっ、はは。お、面白くもない冗談だな」
シウトがすげーダメージ食らってる。
「ゼルフィルドが、二人と、せ、セックスを」
「二人?」
不思議そうにセレインが呟いた。
「……っ!? ま、まさか!?」
「あ、うん。まあ、なんというか。昨夜はいなかったんだけど、一昨日なら宿屋の女将さん(36)もいっしょにね。情熱を秘めた肉体を味わってみたかったというか」
一昨日は親娘丼、たいへん美味しかったです。
若いのもいいんだけど、にゅるっと柔らかくて熱い熟れたナカもいい感じ。10歳以上年上でもいけたから、今度はもう少し上を狙ってみようかとも思う。
「あっ! でも下の娘さん(10)とはしてないから! そこは安心して!」
「もし抱いてたらこの場でお前を殺していたが?!」
あらヤダ怖い。
「親娘まとめて姦淫だと?! 本気で何を考えてんだ!」
「いや、でも、えへへ。女将さん未亡人だしね。不貞でないなら問題は…ないんじゃないかなぁ……? ていうかね? パーティでハーレムとかやらかすシウトくんには言われたくないんだけど」
「ふん! それは俺がモテるというだけだ、お前とは違う!」
何が違うのか全く理解できないが?
それにモテるって君、相手に瞳を見せつけないと女の子寄ってこないタイプじゃん。
「あくまで俺の恋人はユノ。アデリアもセレインも、まあ肉奴隷としてなら使ってもいいというだけだ!」
酷い物言いだが、二人の女の子は怒っていない。
むしろちょっと嬉しそうに、だけどすぐ申し訳なさそうに俯いた。
「ユノは心から俺を慕ってくれているし、妾も認めてくれているんだ。なあ、ユノ?」
ものっそい熱を込めてシウトが告げると、びくっとユノが肩を震わせた。
沈黙が続けばそれに耐えられなかったのか彼女は一歩前に踏み出す。
「さ、三女……聖女ユノ、です。騎乗位からの密着体位で、ゼルフィルド様と深く口づけて唾液交換をしながら下から突き上げられて汗だく絶頂するのが大好きです」
それ絶対恋人の前で言っちゃダメなヤツですよね?
「あっ、はは。う、嘘、だろ? お、俺の恋人が。ユノだけは、あれを使わずに、心で繋がった、俺の恋人なのに……」
ああ、目が。目がやばい。
「待ってくれ。これに関しては俺も前々から言いたかったことがある」
ちょっと間を置いてから、準備しといた映像記録魔道具のスイッチをカチッ。
「シウト! お前には故郷に婚約者がいるはずだろう! ユノと恋人ってどういうことだ!?」
「う、うるさい! 俺ほど有能な男には、それにふさわしい女が必要なんだ! 田舎娘のリズなんて見合うはずがないだろう!」
そう、シウトは故郷の村にリズという婚約者がいる。
このリズちゃんは幼馴染らしく、素朴ながらに可愛くて料理も得意。寂しがりつつも旅に出るシウトを快く送り出し、今も帰る場所を守っている。
……にも拘らずシウト君は超が付く美少女であるユノと恋人になっちゃったんだけどね。
「なんだよ、別れ話でもするつもりだったのか?」
「ユノとはいずれ結婚するつもりだ。リズには、傍仕えになってもらうがな」
まさかの提案に俺びっくり。
「ふざけるなよ! 彼女が一体どんな気持ちで待っていたと……!? 料理の勉強をして、村の仕事を手伝って。お前が残してきた家族を支えてたのは誰だと思っているんだ!? それをちょっと美少女がいたらそれって、どれだけ不誠実なんだ!」
「関係ないだろう! だいたいお前のようなクズに不誠実だなんて言われたくない! 大体リズは俺を愛しているんだ、捨てないで肉穴として使ってやるだけでも感謝してほしいくらいだ!」
いやいや、間違いなく俺と同じ穴の狢です。
ここで魔道具のスイッチをオフ。
「勢いで誤魔化せると思うな! お前がユノと寝た事実は変わらない!」
「うっ……それはそうなんだが。裏切りというとブーメランなんじゃ」
「俺たちはセックスはおろかキスもまだだったんだ! 邪龍討伐の旅の途中でそういうことをするのはよくないと、他ならぬ彼女にやんわりと止められていた! すべてが終わった後に、結ばれようと約束していたのに……っ! なのにお前のような男に騙されてっ!」
マジ泣きである。
ていうかあんなハーレムしておいて、まだやってないとか言われましても。
ついでに少しは反撃もしておく。
「いや、そもそもユノ初めてじゃなかったし、あっちから誘われたんだけど」
「ウソをつくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
もうテンションがおかしいよ彼。
「ユノはっ、ちょっと指先が触れただけで後ずさって強張った笑みを浮かべるような純情な少女なんだ! それを、そんっ、そんなお前っ!」
「ごめんなさい、シウト様。ゼルフィの言う通り、誘ったのは私です」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
一つ、ユノ本人からの肯定。
二つ、ゼルフィというあだ名。
ダブルアタックをモロにくらってシウトが泣き崩れる。
「ひぐっ。なんでっ、俺は、我慢してたのにぃ……っ。うぇっ、この旅を終えた時が、童貞の卒業だと、信じて……。ユノとした後は、アデリアとセレインも交えて、無能の目の前で馬鹿にしながら4Pするはずだったのにぃ……」
「普通にクズじゃねーか」
これに責められる謂れ絶対ないよね。
まさかの童貞宣言だし。
「ふっ、ふふ……だが、もう、遠慮はしない」
なんか急に立ち直ったシウト君は、妙にイキったポーズで右目を隠す。
「無能くん。君は不思議に思っただろう? 何故、自分を慕っていた彼女達が急に変化し、俺を愛し始めたのか」
「いや、別に? 全員とヤッた後だし」
「お、お前ぇぇぇぇぇっ! 俺の右目に宿った魅了の魔眼の力、見せつけてやる!」
うん、だよね。
だって君の瞳を見た瞬間、態度変わったし。
「どうやって彼女達を操っているか知らないが、これでまた女どもは俺の奴隷だ!」
そうしてシウト君は、一気に魔眼の力を開放した。
というか操ってなんかねーよ。
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