イアンパヌの産後の肥立ちは良好だぜ
さて、1月ほど経ったがイアンパヌも生まれた赤ん坊も両方なんとか無事だった。
このくらいの時期が一番危ないから心配だったが無事でなによりだ。
年齢的にはそろそろ子供を産める限界かとは思うけどな。
この時代だと30すぎの高齢出産は相当危険だからな。
ちなみに今回は男の子だぜ、名前はまだない。
小さい時は男のほうが弱いことが多いので、しばらくは気は抜けないがまあ今のところは大丈夫なように思う。
そして俺は当然増えた家族を養わないといけないので食べ物を取りに行く。
前より扶養家族も増えたのであんまりのんびりはしていられなくなったんだよな。
「じゃあ食いもんを取りに行ってくるな」
「はい、行ってらっしゃい。
気をつけてくださいね」
イアンパヌと生まれたばかりの赤ん坊は家に残って、残りのみんなで食料を取りに行く。
イアンパヌの栄養の確保とそれにともなって赤ん坊に与える乳の確保は大事だからな。
「今日はどうしましょうか?」
「そうだな、今日は呑川のそばの小川に行くか」
「わかりました、そうしましょう」
チニタとの一緒の行動は乳母をしていたもらったときも有ったからまあお互いによそよそしくはない。
と言うか縄文人は個人の区別をあんまりしないので、誰とでもフレンドリーだったりする。
誘拐婚のようなことが起こる時はたしかにあるが、そういったことを除けば揉め事が殆ど無いのは、この時代のいいところだな。
まあそれだけ人が少ないということでもあるけど。
シャンやシャオは相変わらず今の時期でも素潜りでアワビやサザエをとってるが、双子やチニタの娘はまだ小さいから、あんまり危なそうなところにはいけない。
しかし、シャン達は子供が出来たらどうするのかね。
まあ、雑木林で山菜野草を採ったりや砂浜で貝を採ったり、小川で網で魚をすくうだけならそこまで危険でもないし、仕事の手伝いができるようになったら手伝うのがこの時代では当たり前のことだ。
「がんばうー」
「がんばうー」
「がんばー」
双子とチニタの下の娘達は魚をすくうための網を持ってごきげんだ。
三人で並んで楽しそうに歩いている。
息子たちも相変わらず仲がいいんだか悪いんだかよくわからない感じで、お互い張り合いながら釣り竿を持って並んで歩いている。
俺とチニタはアシリレラと一緒に並んで歩いている。
のんびり歩くと呑川に流れ込む小さな川にたどり着く。
「お前ら落ちないように気をつけろよ」
チビ助たちにそう声をかけながら川に近づいていく。
やはりきれいな水の流れと言うのは良いものだ。
「あーい」
「あーい」
「あーい」
そう言いながらワキャワキャ言いながらそろそろ小川の側に近づいていくチビ助たち。
水に近づいたら水の中の足の根元などにタモ網を入れて魚を取り始めた。
息子たちは少し離れた場所で鮒狙いで釣りを始める。
まあ餌はいつも通りそこら辺を掘って捕まえたミミズだ。
「じゃあ、どっちが多く釣れるか競争だね」
「ああ、今日は負けないよ」
俺とチニタとアシリレラはチビ助たちの様子を見ながら川エビを捕まえる。
なんだかんだで川エビもうまいし、捕まえるのも割りと簡単だ。
「さて始めますか」
「はい、そうしましょう」
「じゃ、みんなで引き上げましょう」
予め沈めておいた、木の枝を縄で縛ったものの岸側に残っている縄を引っ張って静かに持ち上げてそれを竹籠で受けると、たくさんの川エビがとれる。
大きければ焼いて、小さければ煮て食べればなかなかうまいぞ。
「ん、大漁大漁」
チニタも嬉しそうにいう。
「そうですね、これだけ取れれば十分でしょうね」
そしてアシリレラもいう。
「大きいエビも取れてよかったですねお父さん」
俺はその言葉に頷いた。
「そうだな、焼いて食ったらうまそうだ」
そんなところにチビ助たちもやってきた。
「とえたー」
「とえたー」
「とえたー」
網の中にはピチピチ動いている鮒が入っていた。
「おお、えらいぞお前ら」
網の中の鮒を魚籠に移し替えて、それぞれの頭をなでてやる。
「えらいー」
「えらいー」
「えらーい」
なんとなく自慢げだな。
魚をとるということが楽しみでもあり仕事であるということが、わかってくれると言うのはいいことだ。
息子たちもそれなりに大きさの鮒を一匹ずつ釣り上げた所で家にかえることにした。
「ん、今日は引き分けだね」
「次は負けないよ」
多分ちびっこや俺達が騒がしくしてたからあんまり釣れなかったんだろうな。
息子たちよ、すまん。
家に帰ると赤ん坊はすやすやと寝ていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
まあ、イアンパヌとはそれだけの言葉でもうなんとなく通じ合うような仲だ。
今日のご飯は川エビを焼いたものと、さばいた鮒と小さな川エビにアク抜きして残っている野草の残りの煮物だな。
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いただー」
「いただー」
「いただー」
チビ助たちも最近はあんまり手間がかからなくなっててて何よりだ。
そして皆で炉を囲んで笑い合いながら、今日もうまいものを食えることをカムイに感謝しよう。
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