イアンパヌが出産したが母子ともに健康でよかったぜ、みんなで協力して母子の面倒を見ないとな

 さて、去年スッポンを食った時にハッスルしちまってできた子供だが、今回もなんとか母子ともに無事な状態で生まれた。


「いや、毎回のことだけど子供が生まれる時はヒヤヒヤするな」


 なんせ、この時代では俺に出来るのは出産時の母子の健康を神(カムイ)に祈ることだけなのだから。


 そして出産後の産後の肥立ちとか産褥期と呼ばれる期間は母親は栄養状態が悪く、子供が胎内に居た状態からまだ正常な状態に戻ってないからからなるべく安静にさせたほうが良い。


 そういう時に子供を育ててくれる別の女性がいるというのは実にありがたいし、母親の面倒を見てくれる娘がいるのもありがたい。


「イアンパヌは無理しないで、ゆっくり休んでくれ。

 無理してお前さんが死んだらみんな悲しむからな」


 イアンパヌは笑いながら答えた。


「はいはい、ゆっくり過ごさせてもらいますよ」


 そして上の娘のアシリレラがよく煮込んでほぐした魚の汁を石匙に救ってイアンパヌに差し出す。


「はい、おかあさんあーん」


 イアンパニは勿論それに従う。


「あーん、ん、美味しいわね」


「まあ、お母さんやお父さんに仕込まれましたから」


 そう言って母娘が笑っている様子は見ていて微笑ましい。


 このように上の娘がイアンパヌの面倒を見てくれながら、もう一人の妻のチニタは生まれたばかりの子供の面倒を見てくれるし乳もやってくれる。


 縄文時代は村全体の共同社会なので子供を集落のみんなで面倒を見るのは当然なんだが、こうやって家族として、親密な状態でお互いに補助し合えるのはなかなかすばらしいと思うぜ。


 二人の息子もなんだかんだで張り合いつつも仲はいいし、下の娘たちもまるで三つ子のように仲良くしてる。


 アシリレラとチニタに後は任せて、俺たちは二人の息子と3人の幼い娘を連れて釣れて今日も潮干狩りだ。


 小さな子供でも比較的怪我などの可能性は少ないし、毒と間違う可能性もないしな。


 イアンパヌは採取のスペシャリストだが俺はちょっと心もとない。


 まあ、イアンパヌも2週間から一ヶ月位で普通に歩けるようになるとは思うけどな。


 その間は植物や茸はあんまり手を出さずに魚や貝や海藻を中心にしておこう。


「とーしゃー、こっちこっちー」

「とーしゃー、こっちこっちー」

「こっちー」


 娘達は楽しそうに砂を掘って貝を探しては小さな手で貝を捕まえて俺を呼び寄せている。


「おー、取れたかー」


 三人がコクコク頷く。


「とれたー」

「とれたー」

「れたー」


 チニタの娘は俺とイアンパニは勿論にてない。


 けど、ちゃんと俺を父親としてなついてくれてるし全く問題はない。


 家とか血筋とか戸籍なんてものがないゆるい時代であればこそとも思うが、こういう関係は悪くないんじゃないか?


 連れ子だからと差別したりするのは良くないよな。


 ちなみに息子たちは釣りをしてるぞ、鱚なんかを結構釣ってるみたいだ。


 息子たちに関しての関係は仲良く喧嘩する仲、だな。


 まあ、将来嫁さんをもらうときは他の男と比べられたりするわけだし、今のうちから同性の競争相手がいるほうがいいだろうしな。

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