縄文時代の楽器は素朴だがそれがいい
さて、縄文時代における仕事とは、主に実益と趣味を兼ね備えたものだ。
食料採取も砂浜の海岸へいって貝を拾う潮干狩りや川や海での釣り、雑木林に入っての山菜やタケノコ採りなど、食料採取は辛く苦しい労働ではなく、楽しい暇つぶしの手段でもある。
流石に鯨や獣の狩猟になると命がけになるので、楽しい暇つぶしとはいえなくなってくるけどな。
でも基本的には辛くて苦しいことを、誰かから強制されるようなことは殆ど無いわけだ。
昨日は川で釣りをして今日は海で海を探し、明日は雑木林で食べられる草やきのこを探し、食料が十分ならのんびり寝て過ごすなんてことを楽しんでできるわけさ、だからストレスも少ない。
しかし、雨が降ったり風が強くなったりすると外に出かけるのは危険が多い。
そういう時は基本家にこもって何かしてるわけだ。
単純に一日中ごろごろしていたり、土器を作るために粘土をこねたり、弓矢や石槍、釣り竿などのなどの石器や骨器、木器などを手入れしたり作ったりだな。
今日はそんな春の雨の降る日なのだが、なんとなく何もやる気がしない俺は、家の中でゴロッと寝っ転がっていた。
「とーしゃ、ひまー」
「とーしゃ、ひまー」
しかし、双子は家の中にじっとしてるのは退屈らしい。
俺の腹の上に乗っかってきた。
「おまえたち、ひまかー?」
「ひまー」
「ひまー」
むう、まあ数え3歳くらいだからな。
イアンパヌは上の娘と一緒に麻の編み物をしてるし、息子は石器のナイフを真剣な表情で作ってる。
うむ、他の家族は真面目に仕事してるから、遊んであげてくれと頼むのも悪いな。
ちなみにワンコも今日は来てない。
多分自分たちに食い物のために狩りにでも出てるのだろう。
「じゃあ、今日は楽器でも使って遊ぶか」
「わーい」
「わーい」
まあ楽器と言っても流石に素朴なものしか無いんだがな。
俺は双子に、丸っこい粘土を焼いて作った土鈴を手渡した。
「これはこうやって握って振るとな」
”カラコロ”
「とまあ音が出るんでやってみな」
双子はちっちゃな手に土鈴を握って一生懸命振り始めた。
”からころからころ”
「わー、おもろー」
「わー、おもろー」
双子は振る腕の角度を変えてみたり、ポーズを変えてみたりして、わきゃわきゃとはしゃぎながら鈴を鳴らして楽しんでいる。
しばらくして双子ははしゃぎ疲れて昼寝してしまった。
「うむ、まあ楽しそうでよかったな」
しばらく寝ていた双子だがムクリと起き上がって、二人で家の隅にある土器に小便をした後、戻ってきた。
脱水症状になっても困るので、一度沸かしたお湯を小さいコップの土器に入れて吹き冷まして双子に渡す。
「お前たちこれでも飲め」
「あい、のむでし」
「あい、のむでし」
やっぱ飲ませる水を徹底的に煮沸消毒するのは重要だよな。
乳幼児にとっては特に。
これは一年の昼夜を問わず、炉の火をたいてるから出来ることではあるんだが。
「じゃあ次は太鼓でも鳴らすか」
「ならすー」
「ならすー」
首のところに持ちやすいように鍔付になってる土器に、革を当てて首のところを麻ひもでギュッと縛れば原始的な太鼓だ。
木の棒で軽く叩けば”ぽん”と言う音がする。
「お前たちもやるか?」
双子たちは目をキラキラ輝かせてコクコク頷く。
「やるー」
「やるー」
双子に木の棒を一本ずつ手渡してやると、ぽこぽこ簡易太鼓をならし始めた。
「おもろー」
「おもろー」
やがて夕食の時間になり、食事が終わったら双子たちは寝てしまった。
とりあえず双子たちの暇は潰せたようだな。
時間をかければ長さの違う木片を並べて木琴もどきも作れるかもな。
今度暇な時に材料を集めてくるか。
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