冬はやはり危険な季節だな・双子が熱を出したので看病しつつ物語を話してやろう
さて冬になって、しばらくたって双子が熱を出した。
子供が熱を出す事自体は勿論珍しくないが、この時代は熱を出すことが致命的なことになる場合もあるから怖い。
「大丈夫かお前たち」
弱々しく答える二人。
「だーじょ」
「だーじょ」
この双子はなぜか病気も同じ時にするのだ。
なので心配も2倍でなかなかきついものがある。
咳や嘔吐はないからそこまでひどい症状ではないと思うがな。
まずは体を温めるために布団に寝藁を重ねて双子の身体をあたためてやる。
「あつー」
「あつー」
双子が汗をかきはじめたらよく絞った濡れ布をおでこに乗せて脳が高熱で炎症をおこすのを食い止めつつ、首や脇、手首や足首にもよく絞って冷やせるようにした布を当てる、また手足を麻布の袋に海藻を詰めた赤ん坊ぶとんから出してそこから熱が逃げられるようにする。
「きもちー」
「きもちー」
うん、あとはとにかく安静にするだけだ、しかし子供は熱が出ているのに元気な時があったりする。
こういう時は完全に熱が下がるまでは退屈しのぎに、話を聞かせたり子守唄を歌ってやったりして落ち着かせてやるのがいい。
俺は伝わる神話を一つ語り始めた。
「昔々のことだ。
神の住む天界にオキクルミという神様がいた。
オキクルミは勇敢で知恵も力もある若い男の神様だった。
ある日オキクルミは
下界の人間界の話を聞きました、そこは山が美しく、
川は透き通って川底の石が虹のように輝き、
小鳥の声は神の国でも聞くことが
出来ないほどの美しさだと言う話でした。
ただ、世界と共に創造された人間は、
未だ火の起こし方も弓矢の作り方も知らないというのでした。
これを聞いたオキクルミは、人間はとても困ってるだろうと考え
どうしても人間界に行きたくて堪らなくなりました。
彼は
人間たちに火の起こし方や弓矢の作り方を教えようとしました。
しかし、
そして下界へ行くためにはまずひどい暑さに耐え、次にひどい寒さに耐え、
最後にどんなことがあっても笑ってはいけないという試練を与えました。。
いままで下に降りていって暑さや寒さで死んでしまった
神様がいっぱい居たからです。
オキクルミは頑張って耐えるといって其れに挑戦しました。
すっごい暑さとすっごい寒さに頑張って耐えました。
でも、最期の絶対に笑わないという試練に失敗して
くすっと笑ってしまったのです。
オキクルミは悔くて泣いてしまいました。
そしてオキクルミは、密かに下界に行こうとしました。
しかし、其れを犬が見つけてしまいました。
「オキクルミが下界へ行くぞ!」
オキクルミを見つけた犬は大声で叫んだのです。
怒ったオキクルミは咄嗟に灰を掴むと、犬に投げつけました。
「お前なんか、もう二度と口がきけないようにしてやる!
そして下界に行って、人間が鹿や猪を追いかける手伝い
をするんだ」
そうして、オキクルミは人間界へ向かって飛び出し、人間に火の起こし方や弓矢の作り方を教えて
くれたのです。
「そしてこれ以来、犬は灰色の毛皮に包まれて
口がきけなくなってしまい、ワンワンと吠えながら
人間の狩りの手伝いをするようになったのでした」
双子は目をキラキラ輝かせていう。
「わんわー」
「わんわー」
まあ、この話の天界というのは多分ユーラシア大陸なんだろう。
もしかしたらずっと昔は犬と人間は普通に意思疎通が出来たのかもしれないな。
やがて双子はすやすや寝息を立て始めた。
苦しげな様子もないし、熱も下がったようだ。
そして翌朝
「とーしゃ、おはー」
「とーしゃ、おはー」
双子はまだ眠い俺の腹の上に乗ってぴょんこぴょんこ飛び跳ねていた。
元気になりすぎだろう。
「お、おう、元気になったようだな」
「げんきー」
「げんきー」
とりあえずはイアンパヌにも起きてもらって乳をやってもらうことにした。
まあ、双子に大事がなくてよかったぜ。
この時代まじで熱から肺炎や脳炎で死ぬからな。
適度に温めて適度に冷やす対処療法を知ってるだけでもだいぶ違うぜ。
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