第16話地下闘技場
キラは大きな課題に直面していた。
キラークイーンは確かに強大な力を持っている。でもキラはどうだろうか?
ただのちっぽけな小学五年生だ。キラークイーンの力で強くなっても、自分が強くならなきゃ、成長しなきゃ何の意味もない。頭脳明晰なキラはそれに気づいていた。
「たしか四号マンションの地下だってライネスは言っていたな」
ノッチの友人である「グローランプー」の称号を持つ男、ライネスはその場所にジムがあると言っていた。
「PSI研究所とか言っていたな」
超能力を育てる研究所なのだろうか? でもジムと言っていた。そこでこのひ弱な体を鍛え直し、ある程度は強くなりたい。そう考えたのだった。
じっと手を見た後、キラは決意新たに四号マンションのエレベーターのボタンを押す。
エレベーターがきた。キラは乗りこむと、地下へのボタンを押そうとする。
「あれ? どっちだ?」
地下行きのボタンは二つあった。どちらだろうか? 考えに考えた結果、一番下のボタンを押すことにした。
「大丈夫だよねキラークイーン」
キラークイーンはなにも答えないが、キラは一人ではないことを思い出し、勇気を出してエレベーターのドアが開くのを待った。
エレベーターは四号マンションの最下層へとキラを運んだ後、その重い扉を開いた。
「ここかな?」
キラはキラークイーンに周囲を警戒させつつ、目の前に現れた道を進んでいく。
一向にPSI研究所の看板は見えない。
ただ薄暗い道が続くだけだ。
本当にこの階だったのだろうか? 一抹の不安がよぎる。
歩いていくこと二分と少し。キラの行手に光が見えてきた。
「アレがそうなのかな?」
扉には「白虎」と書いてある。ライネスが言っていた「PSI研究所」ではないのかもしれない。
「戻るか」
そう思いつつも、興味本位で白虎と書かれた扉を開けてみる。
開いた先にあったものそれは……!
「闘技場?」
キラは行ったことがないが、図鑑か何かで見た、ローマのコロッセオのような、闘技場だった。
「白虎の方角から選手が入場してきました」
そんなアナウンスが流れる。白虎の方角? キラはなんだか嫌な予感がしてきた。
「ここはどこです?」
そんな疑問を口に出しながらも、闘技場の真ん中に立つ。
「えっ? えッ?」
すると、青龍と書かれた方から、一人のマッチョが現れた。
「青龍の方角、れつーかいーおー!」
劣海王と呼ばれた浅黒い褐色肌の戦士は、正に武闘家という感じの雰囲気で、その筋肉はしなやかにして豪胆。正しく中国四千年の武術家を体現したような屈強な体だった。
するとレフェリー役だろうか? 僧兵と言っても過言ではないような屈強な坊主頭の男がキラと劣海王の間に立つ。
「武器の使用以外全てを認める!」
まさか試合が始まるというのだろうか? このいかにも屈強そうな、中国四千年の体現者を相手に? キラは一瞬死を覚悟する。
しかしキラは出た。前へ! 一歩を踏み出したのだ。
「はじめ!」
レフェリーの合図とともに、太鼓が一つ大きく鳴らされる。そして観客たちは歓声を上げた。振動がキラの腹に響いた。
劣海王は、カンフーシューズを脱ぎ捨て本気のかまえを見せた。
「決まっているさ。逆転の可能性は皆無ッ!」
すると、劣海王は腕をぐるぐる回し、駄々っ子パンチを繰り出してきた。
「ウワアアアアオオオオウウウウウ!!」
迫り来る劣海王をキラはじっと見つめる。
「キラークイーン!」
劣海王が駆けてきたことによって、彼は既にキラークイーンの射程距離に入っていた。
キラークイーンは右手で劣海王を触る。
次の瞬間、劣海王は爆ぜた。文字通り爆発したのだ。
「じょおすけぇー」
という断末魔を残しながら。
「僕は……殺したくなんてなかったのにぃー!」
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