第8話 友達
「という事があったのよ」
「クリ姉ぇ~、それが背水の陣か~」
「背水の陣ってなんだ?」
「健流が教室を出た後に、直ぐにクリ姉ぇにメールして、帰って来たのが一言、『背水の陣』」
「アハハ、さすが久莉彩さん。桐芭はもう前に進むしかないな!」
「七瀬川さん、姉が迷惑かけてゴメンね」
「……いえ、あの……、嬉しいです」
七瀬川さんは俯いてモジモジしている。
「しかし、桐芭と七瀬川さんは公認カップルみたいなもんだな」
「はい? 何故そうなる?」
七瀬川さんは耳まで赤くして小さくなってしまった。
「恋愛に疎い桐芭には分からないかもしれないが、人は、特に女子は他人の色恋沙汰ってのが大好きなんだ」
慌てて星野さんがフォローに入る。
「あっ、でも大丈夫! クラスの女の子にはカップル準備中って伝えたから」
カップル準備中って……
「まぁ、明日には1年女子全員には伝わってるだろうな」
「はあ? まさかそこまでは……」
「お前は気が付いてないだろうが、お前は有名人だ」
「俺がか?」
「そりゃそうだろう。あの葵原姉妹の弟なんだから。しかもお姉さん達と同じDNAだけあって顔もいい」
「桐芭君は一年生男子イイねランキング2位だし、女の子達の間では、彼女を作らない超硬派でクールって有名だしね」
「何その設定?」
因みに一年生男子イイねランキング1位は健流だ。
「だってお前、女の子からのラブレターを何度も断ってるだろ。女の子の友達ゼロだし」
「お、女の子の友達ならいるよ。……ふ、二人……」
俺はドキドキしながら七瀬川さんと星野さんを見た。七瀬川さんは耳を赤くして俯いてしまい、星野さんはニコニコと俺を見ている。
「またしても大いなる進歩だな」
「良かっね芭月!」
「(ぼそっ)……はい」
「よし! それじゃ来週末のダブルデート第2彈について話しあおう!」
「ゴメン、健流君。今後の連休は駄目なんだ私」
星野さんが両手を合わせ誤っているが、健流はピクピクと固まっていた。
「さ、再来週は空いてる?」
ダブルデート第2彈(健流的に)は再来週の週末に決まったが、俺達四人で出かける事はなかった。
◆
「ただいま」
道中、今回の件でクリ姉ぇにありがとうと言うか、構わないでくれと言うべきか悩んでいた。
でもクリ姉ぇは俺の為にしてくれた事だ。2年前の事は忘れられない。でも……前に踏み出す勇気……。強くならないといけない。強く、心を強く……。
俺はクリ姉ぇにありがとうの言葉を告げる事にして、リビングのドアを開けた。クリ姉ぇはソファーに座りテレビを見ている。
「クリ姉ぇ……」
「ほえ?」
俺はありがとう……の前に告げなければいけない言葉があった。
「クリ姉ぇ、服着ろよッ!!」
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