第6話 女神様と雷様の降臨
月曜日の昼休み、早速健流から特別ランチ券をもらい、豪華なランチを食べ終え、教室で呆っと微睡んでいた。
「眠そうだな、桐芭」
「お陰様で美味しいランチを頂いたんでね」
「それだけか?」
「……それだけだ」
俺はプイっと健流から目を背けてしまった。それが敗因だった。
「昨夜は七瀬川さんの事を考えて眠れなかったとか?」
ニヤリと笑う健流。
「……何で分かる?」
「俺が今まで見たことが無い顔をしている! ズバリ恋だろ!」
「ちげーよ。ただ他意がなかったにしろ、俺は七瀬川さんの手を握ってしまったから……。その件では俺と七瀬川さんに大きなギャップが生まれている事が分かった……」
「天然桐芭君も気が付いたか」
「クリ姉ぇに聞いた」
「久莉彩さん、他に何か言ってなかったか?」
「お前も踏み出せって……」
「だろうな。他には?」
「……俺の退路を断つって」
「頼もしいな!」
「はぁ~、どうしよう……」
「七瀬川さんは合いそうにないか?」
「いや、一緒にいて楽しかったよ」
「大いなる進歩だな」
「何で?」
「桐芭、女の子の友達いるか?」
「……いないな」
そこで午後の授業5分前になる予鈴がなった。
授業が間もなく始まるって時に健流のスマホが鳴動していた。スマホの通話は家庭での緊急時等以外では禁止されている。しかし健流が話した相手は
「星野さん、どうしたの?」ータケル
「えっ、久莉彩さんが1組に現れた!」ータケル
「いやいや、今聞きたい、直ぐ聞きたい、今からそちらに行くよ!」ータケル
通話を切った健流。
「1組に久莉彩さんが現れたらしい!」
「クリ姉ぇが?」
「ちょっと俺、行ってくるわ」
「授業始まるぞ」
健流は俺の声など気にせず走って行ってしまった。
クリ姉ぇが……。嫌な予感がする……。慌ててクリ姉ぇにメールを入れた。そして返信にはこう書かれていた。
『背水の陣!』
「………い、嫌な予感しかしない」
午後一の数学の授業が30分過ぎた辺りに健流がこそこそっと戻って来た。
教室の後ろの扉が静かに開き、当然近くの生徒達は目線が動く。それは波紋の様に広がり、数学の武田先生も気付く事となった。
健流は四つん這いになり、そっと自分の席に着こうとするが、仁王立ちの武田先生が行く手に立ち塞がる。
「……こんにちは武田先生。良いお天気ですね(汗)」
「こんにちは金山君。所により雷が落ちるみたいだよ(鬼)」
かくして健流は職員室へと連行され、授業は自習となったのだった。
アホが。
結局、健流が解放されたのは午後2限のギリギリで、クリ姉ぇの一件は聞けないまま放課後となった。
俺達は駅に向かうバスを途中下車してファーストフード店に立ち寄った。
一本遅れて七瀬川さんと星野さんも合流し、今日の事件についての全貌が明らかになった。
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