第14話 長女

 闇が晴れ……その闇の中から一人の美しい女性が姿を表す。


「お姉ちゃん」

 

 僕は姿を表した女性のことを呼ぶ。


「死になさい」

 

 姿を表した女性……お姉ちゃんは僕の姿を見るなり、地面を蹴ってその刃を向けてくる。


「却下」

 

 僕はその刃を素手で受け止める。

 お姉ちゃんのその刃は僕の薄皮一枚切ることもできない。


「ふぐっ!大人しく殺されなさい!あなた!一体何人の命を無駄にしたの!」


「何百億やない?」


「なんということを……!私を救うなんて無駄なことを!多くの命を助けなくては!」


「え?そう……僕を止めるのがお姉ちゃんの役目。お姉ちゃんが復活したことによって救われる人の数の方が多いかもよ?」


「あなたが誰も殺さなければ済む話よ……!ここで一度天誅を下してやろうかしら?」


「え?出来ると思う?まだ病み上がりのその体で?」


「ぐぬぬ……あなたを殺せない私の無力さが許せない!あなたが死にさえすれば何人もの人が救われるのに!」


「残念でしたー」

 

 僕は悔しがっているお姉ちゃんの姿を見て嗤う。


「ふふふ」

 

 そして、僕は笑い声を漏らす。

 良かった……かつての日常が戻ってきて。


「……懐かしい日常」


「え?あれが日常なの?」


「……」


「正気?」


「はぁ……はぁ……はぁ……随分と素晴らしい家族じゃないか!」

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