第24話

 終わった。終わらせた。頑張った。

 私の耳に歓声が聞こえてくる。私を讃える声が聞こえてくる。私の努力を認める声が聞こえてくる。

 私は……。私は……。私は……!


「ァ?れ?」

 

 体の感覚が消える。

 

 視界が暗転する。

 

 その次の瞬間には私の視界に砂利が広がっている。


「……ァ……ァ……ァ」

 

 体が震える。

 激痛が走る。

 消えていく。


「え?……ァ?」

 

 体を動かし、足掻く。

 体は震えいている。激痛は走っている。体の感覚が消えている。

 でも砂利は音を立て、視界は変わる。

 私の視界に映ったのは恐怖を表情一杯に広げている……民衆の姿だった。


「なんで……?」

 

 私は無意識のうちに一歩を踏み出す。

 逃げ纏う民衆に向けて一歩を踏み出す。歩き出す。


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


「来るなよッ!こっちに来るなよォォォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!}

 

 それに対して悲鳴を上げて私から逃げ出す民衆。

 武器を持っている人たちは私の方へと武器まで向けている。


 え?なんで……?

 

 理解できない。わからない。認識できない。認めたくない。わかりたくない。

 なんで?なんで?なんで?

 何が悪いの?私は魔族を倒したよ?みんなを救ったよ?当初の誕生理由のようにアレイスター帝国の秘密兵器として力を振るったよ?頑張ったよ?圧勝したよ?全滅していたと考えられるみんなを救ったよ?あの時倒せなかった魔族を倒したよ?ちゃんと強くなったよ?ちゃんと力を得たよ?ちゃんと敵を倒したよ?

 

 なのになんで? 

 

 なんで逃げるの?なんで恐怖しているの?なんで武器を向けているの?なんで化け物を見るような目で私を見ているの?なんで魔族が現れたときよりもひどい反応を見せるの?なんでそんなにも私に対して優しくないの?なんで私に意地悪するの?なんで私を褒めてくれないの?なんで私の頭を撫でてくれないの?なんで私を見てくれないの?なんで私を愛してくれないの?なんで私を一人にするの?なんで私は一人で立っているの?

 

 わからない。わからない。わかりたくない。

 

「ァ」

 

 私は一歩踏み出す。


 その時。

 

 私の視界に映る。

 

 地面に転がっている武器が。

 

 私の姿を反射している武器が。

 

 醜悪な見た目の怪物が。

 

 私じゃない何かが。

 

 爛れ。輝き。崩れ。

 下劣。賎陋。醜悪。


「……あっ」

 

 そこに映っていたのは間違いなく私で。

 そこに映っていたのは何よりも醜悪で。

 そこに映っていたのは誰よりも孤独で。


「私……」

 

 誰も居ない。

 誰も……誰も……誰も……。


「ふむ……」

 

 私の前に人影が降りた。

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