第31話 08時23分
俺と久梨亜はなんか長い旅でもしたような気がするが――とりあえず今年の教室へと到着した。ってか、久梨亜は何も感じていない様子だな。俺は疲れているのに久梨亜はむしろ元気になっているという感じだ。謎すぎる。俺から体力を奪い取っているのだろうか――考えるだけ無駄かな。まあこれがいつもの事なんだがね。ちょっと今日は休み明けで久しぶりの感じがあっていろいろ考えてしまう俺だった。
よし。今の事を話そう。久梨亜の事は置いておいて――って、もちろんだが。教室は教室だ。黒板があって、机と椅子。去年と階数は変わったが。中身はほとんど同じ。ちょっと違うのは―—まだ教室内が綺麗。無駄なものがロッカーとかに無いことだな。そういえば今学校はホワイトボードのところもあるのかね?俺のところは黒板だが――多分最先端とかはいかない学校だ。ってか今綺麗と俺は言ったが、多分数週間。下手したら数日したらごちゃごちゃと教室内はしてくると思うがね。
ちなみに俺が久梨亜に付いていく形で教室へと入ると――見覚えのある顔が半分くらいだったな。今年もよろしくというやつだ。まあ俺よりみんな久梨亜の方を見ているがね。
「おはよー」
久梨亜と言えば、こちらは優等生モードで友達の輪へとすぐに消えていった。マジでキャラが変わるんだよな。どっちが本当の久梨亜なのだろうか――である。
まあ俺は久梨亜たちの輪。女子会の輪に入ることはもちろんなく。自分の席の付いた。今回は当たりなのか。窓際の一番後ろだった。今は空席だが前が久梨亜だ。久梨亜の後ろということは――しばらくは久梨亜の世話をすることになるだろう。もしかして一番後ろの窓際は――俺へのご褒美か。まあこれくらいじゃもちろん足らないがね。久梨亜の世話はヤバいんだよ。マジで。ホントヤバいんだって、誰か経験――あれ?またなんか他の奴には――という気持ちがあった気がするが。気のせいだな。よし。寝て待とう。今の俺すぐ寝れそうだからな。ホントすぐ寝れるよ。もう1日働いた感じだし。
まあ現実は、俺が秒で寝る前にチャイムが鳴ったんだがね。俺と久梨亜はマジで時間ギリギリだったらしい。俺がそんなことを思っていると少しだけ友達の輪に入っていた久梨亜が俺の前の席に座った。目の前が久梨亜の背中――と思っていると。
「ゴウちゃんが朝のんびりだったからギリギリだったね」
「……」
くるりと向きを変えて喧嘩を売って来た久梨亜だった。
「ゴウちゃん?顔が――怖いよ?そんな顔しちゃダメだよ?」
「……」
悪戯っ子みたいな表情の久梨亜。ここが教室でなかったら――とりあえず何を俺は久梨亜にしていただろうか?
今まで俺が見た久梨亜が恥ずかしがるであろうことを順番に語りながら――証拠がある物は証拠も見せつつ久梨亜が土下座するまでいじめる。ちなみに今は持ってないが。俺の部屋にある昔のスマホには久梨亜の過去の秘密多数である。それをバラす日が近いうちに来るかもしれない。俺も馬鹿じゃないからな。普段使っているスマホに久梨亜の秘密。久梨亜母からの提供もあるが――そういうのは、ちゃんと移動させているのでね。いや、今普段使っているスマホでは、久梨亜が見る可能性があるんでね。まあ古い方も久梨亜は存在を知っているだろうが――たとえ見られてもそう簡単にファイルは発見できないはずだ。警備は厳重である。切り札が無いのはきついのでね。
あっ、そうそう、決して夜な夜な俺がニヤニヤしているわけではない。っか、間抜けな久梨亜とか。嫌でも毎日見れるからな。そんな夜な夜なまで見たくないよ。
「ゴウちゃん?無視しないでよー悲しいなー」
「——呆れてるんだよ。っか、誰かの相手で疲れたんだよ」
俺がつぶやくと、久梨亜がサッと俺の耳元に顔を近づけて来て――って、お前は教室で何をしているんだ!?近いからな?家でもそれは近いからな?などと思っていると。
「——じゃあ、あとで癒してあげるね?」
「……」
さらっとそんなことを言ってくる久梨亜だった。ちなみに小声――だろうが。まあ俺達の隣の奴とかには――聞こえてるだろうな。
ってか。俺にとっては、久梨亜がこんなことを言ってくる事もよくよくあることだ。ちなみに久梨亜の距離が近かったことにより。ちょっと周りでは驚き?みたいな表情。ざわざわがある気がするが――今は周りの事はどうでもいい。まあ確かに珍しく近かったけどさ。まあちょっと久しぶりに学校で久梨亜もテンションがおかしいのだろう。優等生がぶっ飛んだら――まあそれはそれで面白いかもだが。既に久梨亜はニコニコいつも通りの学校バージョン。優等生である。っか、周りも久梨亜が俺に対してこんなことを言うのは、今後普通にあると思うからな。慣れてくれ。俺ももう慣れすぎてプロだからな。毎回久梨亜の言葉に驚くことはない。行動は――ちょっと驚くかもだが。
とりあえずちょっと久梨亜が近くに来たことにより。一瞬ドキリはあったが。俺は一呼吸してから。
「——久梨亜。教室内ではお静かに」
「てへっ」
すると教室のドアが開き担任と思われる先生が入って来た。見覚えのない先生だ。新しい先生だろうか……俺はそんなことを思いながら一度音の方に向いた視線を戻し。って、久梨亜は先生なんて気にもしてなく。俺の方を見ていた。
「——先生来たぞ。久梨亜」
「おぉ。誰誰ー」
そう言いながらみんなとはワンテンポ遅れて久梨亜は前を向く。まあこれでやっと――平和ではないが。でもまあ久梨亜の背中は話して来ないのでね。平和な方か。顔がこっちを向いているといろいろ疲れるからな。
とりあえずこれが沓掛久梨亜という人物だ。
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