第26話 08時10分

 現在学校へと向かっている俺と久梨亜。なんか久梨亜がいろいろなものに反応しているのは――まあよくあること。ガキなのでね。仕方ない。優等生の仮面を被ろうと中身がガキなので、人目がなければすぐにガキが顔を覗かせるのである。本当は近くに同じ学校の生徒が居てくれると。久梨亜も優等生になってくれるので、面倒なやり取りが減るのだが――今のところ居なくてね。遠くを歩いているのは見えているから早く追いつきたいのだが――久梨亜がね。進んで行かないんだよ。


「あっ。ゴウちゃん桜。綺麗だよ。舞ってる舞ってる」


 ほら。言っているそばから、今度は川の近くに咲いている桜の木を見て、久梨亜が立ち止まった。ちなみにここの川沿いの桜。俺と久梨亜は数日前。春休み中に見に来ている。久梨亜が「見たい見たい」と言いましてね。仕方なくお相手をしてやったのだった。まあその時は休日ということと桜まつりをしていたので屋台などもあって賑わっていた。今はその雰囲気はないがね。って朝っぱらから賑わっていてもだよな。まあそして今。散りだしている桜を見て久梨亜は――。


「ゴウちゃんせっかくだから反対側。桜の下歩いて行こうよ」


 早速寄り道の提案をしてきたのだった。


「学校向かえー!」


 うん。何で時間に余裕がないのにこいつは寄り道ばかり提案してくるのだろうか――謎すぎる。誰かマジで早急に久梨亜の頭の中を確認してほしい。


「いいじゃん。まだ大丈夫だよ。それに桜はこの時期だけなんだよ?レアなんだよ?短い期間だけなんだよ?散っちゃったらまたしばらく見れないんだよ?」

「なら立ち止まらないこと。立ち止まったらそのまま川に落とす」

「そんなことしたら私大騒ぎするからね!でも許可取れた。よし、ゴウちゃん行こう」

「——なんで笑顔なんだ……」

「ちなみにゴウちゃん落としてもいいよ?」

「意味わからん。落とされたいのかよ」


 ヤバいな。マジで頭がおかしくなったのだろうか?こやつ川に落とされたいらしい。ちなみにここの川水量は少ない。そして川底まではそこそこ高さがあるので――落とすということをすると、うん。打ち所が悪いと――大変なことになるのでね。そんなことはしないが――でも久梨亜は俺にそれを言わせたかったのか。俺が言うとすぐに歩き出した。そして歩きながら――。


「だって、落とされたら学校サボれるし。ゴウちゃんにケガさせられたー。で、責任とらせれるし」

「……ダメだこりゃ」


 うん。久梨亜は久梨亜。考えがおかしい。もう諦めることにした俺だった。それから結局俺と久梨亜は桜の木がある方を歩くことに――ちなみにその時の久梨亜は優等生になっていた。理由。近くに同じ制服の生徒が歩いていたから。誰さんか知らんが――もう少し早く登場してほしかった。反対側に移動する前に登場してくれたら――先ほどの謎なやりとりはカットされて、まっすぐ学校に迎えたのかもしれないのに……って、よくよく見ると前を歩く男女も桜の木を見ながら歩いていたので――もしかしたら同じ理由で歩いていたのかもしれない。まあ今だけっていうのは――あるのかね。

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