第21話 07時48分

 沓掛家から五知家へ移動した俺達。ホント忙しい朝に棟なことをしている。


「お邪魔しまーす」


 まるで遊びに来たかのような雰囲気の奴がいるが――もちろん遊びに来たとか言う状況では全くない。とっとと久梨亜の通学カバンをこの家から発見し。家を出る。これがミッションである。とっとと終わらせるべきミッションである。ここで時間を使うと新学期早々2人で遅刻である。


「どこだよ、タンスだったか?」


 室内へと入りながら俺は久梨亜に再確認する。


「ゴウちゃんの部屋ー」

「マジでなんでそんなところに――俺毎日寝てるのに気が付かなかったぞ?」


 そんなことを言いながら俺は自分の部屋に入り――俺の身長より少し高いタンス。まあクローゼットと言った方がいいかもだが。服とかいろいろ入っているところをジャンプしつつ確認すると――。


「あったよ。埃まみれだよ」


 俺はジャンプしながら上に乗っていた久梨亜のカバンらしきものを取る。うん。数日。数週間タンスの上にあったからだろう。黒いはずのカバンの一面。上部になっていた所だけグレー。白くなっていた。まあ当たり前のことだな。そうなるに決まっているよな。


「ぎゃああ。何でー!?」

「当たり前だろうが。まあ埃だから払えばいいだろ」


 俺はそう言いながら自分の制服に埃が付かないようにしながら窓へと移動して――窓を開けて――払う。払う。パンパンパンである。めっちゃ埃が――だった。そして綺麗になったら久梨亜に渡す。


「ほら」

「まあ中身は無事だよね。ノートと筆記用具しか入ってないし」

「財布とかスマホは――ポケットか」

「そういうことー」


 俺が確認するとちゃんと制服のポケットから貴重品だけ見せてきた久梨亜だった。ってか――気が付かないということは。こいつは休みの間学校に関しては何も気にしていない。まあ宿題とかがあったわけじゃないから気にしなくていいけど――昨日の時点でも全く学校の事が頭になく。準備していなかったことが確定したのだった。予想はしていたけどさ。こいつ――俺が居なかったらまだ寝ている。休みの気分でいる気がするよ。

 まあそんなことを思いつつ予定通り見つかったので、さあ出発と俺が思いつつ玄関の方に行くと――。


「にしても、相変わらずゴウちゃんの部屋は綺麗だねー。汚したくなる」

「バカか」


 ガキが居る。マジで困ったもんだよ。


「なかなか入れてくれないからねー。絶対何か隠してるよねー」


キョロキョロしながら久梨亜が言う。ちなみに俺の部屋にはそんな変な物は何も隠されてはいない。


「なんもねえよ。久梨亜が入ると帰らなくなるから自然と物も少なくなったしな」

「わかった。エロ本どこかにたくさん隠してるなー。私が居ながらホントにゴウちゃんは」

「——人の話聞いてないし。ってか朝から何言ってるんだよ。学校行くぞ!50分すぎてるから!」

「出発前に――ゴウちゃんの香りを私に付けないと。ってことでベッドにダーイブ」


ボフッ。


先ほど俺が渡してやったカバンを床に落とし。そのまま久梨亜は俺のベッドにダイブして――転がりだした。クズだろ。馬鹿だろ。何してるんだよ。俺の部屋に入るとよく見る光景だが……何度見ても謎な行動――。


「おい、何してるんだよ。毎回毎回。って、マジで時間を気にしろ!」

「ゴウちゃんの匂いが私からしたいら、変なの寄って来ないでしょ?」

「馬鹿なことしてないで立て。早く立つ」


寝転がる久梨亜を引っ張る俺。


「もうちょっとー、うんうん。ゴウちゃんのところ落ち着くー」

「……」


 完全なる無駄な時間。俺のベッドにて転がる幼馴染。俺が引き剥がそうとしてもベッドに顔をすりすりしているのだが――マジでなんだこいつである。普通こんなことする馬鹿居るか?あっ。だらけたいだけか。っか。最悪このままだと寝る可能性が久梨亜はあるので――。


「——」


 どうしたものかと考える俺ってか……久梨亜。今気が付いたが――お前パンツ丸見え。さっきの外ダッシュ時のスカートは全く乱れていなかったのに、俺の部屋では乱れまくりという。異性の部屋で何をしているんだ。異性の部屋こそ注意しろなのだが……。


「——そっか」


 そんなことを思いつつ俺はこの後の行動を考える。


「うん?どうしたのゴウちゃん?もしかして今日は学校サボっちゃう?」


 考える俺を見ながら寝ころんでいる久梨亜が休んじゃおうよーみたいな誘いをしているが――もちろん俺にそんな考えはない。


「——いや、今日の久梨亜は可愛いパンツ履いてるなーと。水色で――シンプルなのいいな。変な柄とかよりシンプルなのいいぞ。あと太ももすべすべそうだなー。と」


 とりあえず見えている感想を何も考えず口にしてみる。うん。見たままの感想を述べた。変態とか言われるかもしれないが。見せられているので感想を言っただけである。すると――。


「ぎゃあああ。何で!?何で私の知ってるの!?ってか丸見え!?。ゴウちゃん!!何普通に見て普通に感想言ってるの!?そんな変態さんにゴウちゃんを育てた覚えはないからね!ちょっとそこに正座!」


 バタバタしながら制服のスカートを抑えながら立ち上がる久梨亜。顔真っ赤である。っか、あの姿で見えてないと思っていたのだろうか……見せていた。というレベルなのだが。まあよくよく俺は昔から、久梨亜のこんな姿は見ているので――今まではっきり言うことはなかったが。うん。今までなら目を逸らすだけだったが。たまにはそのままの状況。見えていた物を言ってみたら――意外と効果があったのか。久梨亜は立ち上がり。俺の目の前まで歩いてきたのだった。


「よしよし。来たな。行くぞ久梨亜」

「ちょっと!何でゴウちゃん恥ずかしがるとかないわけ!?言ってて恥ずかしくないの!?変態さんだったの?今のお巡りさん案件だからね!?」

「久梨亜——今更だが。常に見せてるじゃん」

「——なっ!?」


 俺が言うと久梨亜がフリーズする。あれ?まさかの――見えてるの知らなかった?そんなことないよな?わざとだったんだろ?いやこの久梨亜の表情――まさかね。


「……まさかの――気が付いてなかったと?」

「そ。そんな見せてたとか――そんな変態じゃ私ないからね!?」

「——俺の記憶にある久梨亜の下着言ってやろうか?」


 うん。春休み中――くらいならどんなの履いていたか知っているぞ?そこそこ部屋行った時に見えてたし。転がってたら丸見えもあったし。


「やめてー!絶対言わないで!」

「じゃあ歩け。行くぞ。来ないなら俺は匿名で学校内に久梨亜の下着について流す可能性がある」


 もちろんそんなことしないがな。俺が社会的に終わるだろうし。


「ちょ。マジでやめて!そんなことしたら私お嫁にいけな――あっ。それはいいかも。ゴウちゃんが責任とってくれる。そうじゃん。それいいじゃん」


 あれ?俺の予想外の事に話が進んでいる……。


「……ミスった。調子乗ったらミスったー。今のはなしだ。ってことで、久梨亜の仲良い奴に久梨亜のだらだら寝顔写真を見せられたくなかったら。今すぐ歩け」

「ちょっと待って!?なんか今重要な事言ったよ!?ゴウちゃんそれ学校どころじゃないから。何してるの!?写真?ちょっと真面目に正座。お話しよう!ゴウちゃん!」

「早く行くぞ」

「ちょっとダメだって。学校で私は優等生キャラ!そんなだらだらとかバレたらだめだから。あと、パ、パンツとか絶対ダメだからって。パンツ丸見え写真ゴウちゃん持ってるの?ちょっとそれホントお巡りさん。ゴウちゃん!」

「自分でキャラとか言ってるよ。ってパンツの写真とか言ってねよ。勝手に増やすなよ。どんだけポンコツなんだよ。っかそんなの撮る奴ヤバい奴だよ。うん。って、久梨亜。マジで家でも優等生してくれよ」

「ヤダ」


 なんでそこは即答なんだよ。他に即答することあるんじゃないのか?


「……どうやってばらすか。男子は久梨亜の寝顔とか喜ぶかもな」

「ちょ、ホントに今のゴウちゃんやりそう……ゴウちゃんホントにこれやるよ。誰かー!って、ホントゴウちゃんスマホ確認。今すぐ確認させて!チェックチェック!早急にチェック!」

「騒いでないで行くぞ」

「ゴウちゃん!学校どころじゃないから!」


 結局俺と久梨亜、無駄な時間をそこそこ過ごして――やっと俺の家を出たのだった。顔を赤く騒いでいる奴は外へと出れば――顔は赤いままだったが。優等生となっていたのだった。

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