第15話 07時23分

 パン焦げた――でも大丈夫だった。うん。ちょっと燃えただけ。うん。食べるには問題無さそうだった。ので、少し焦げたところを久梨亜が落としてから――あんバターを塗って今食べている。まああんこが塗られるので、苦くても大丈夫だろう。


「いつもより苦い」

「サラダもあるわよー」

「何で焦げてるの教えてくれないのー」

「あっ。ゴウくん制服のボタン取れてるわよ?」

「母と娘の会話がおかしい。かみ合ってない――ってそうだった。取れかけてるの忘れてた。頼もうとしていたんです」


 朝から忙しすぎて俺は自分の事を忘れていた。ポケットから制服のボタンを取りだして久梨亜母の前に出すと――。


「ちょっと貸してねー」


 すると久梨亜が朝ご飯を食べている横で久梨亜の母が――超高速で俺の制服のボタンを直してくれた。うん、こういう能力はすごいんだよな。久梨亜の母。超万能。時間にして1分弱。超高速であった。糸と針はどこから出てきたんだろうな?突然現れるが――まあいいか。そして俺の制服を直し終えた久梨亜母は俺に制服を渡しながら――。


「そういえばゴウくん。ゴウさんはいつ帰って来るの?」


確か少し前に触れたと思うが。ゴウさんとは親父の事である。今は――県外か海外か知らんがどこかに居るだろう。もしかしたら家に向かっている途中かもしれない。


「えっと――多分明日の夜には、帰って来るとは言っていたかと思うんですが――どうなるか」

「じゃあ晩ご飯作っておかないとねー。ゴウさんの好きな物作っておかないと」

「……」


 何故にあの親父が久梨亜母に気に入られているのか。うん。ホント昔からなんだが――何故か俺の親父と久梨亜の母仲良いんだよな。親父なんて――俺と同じで目立つことなく。普通のおっさんなのに――ちなみに少し前にも触れたが、俺のところは親父と2人。何故母親が居ないかと言うと……遠い昔。親父が遊び過ぎて出て行かれたとか。一方久梨亜のところは久梨亜が生まれる前に離婚したとか。だったな。って、なんで久梨亜母みたいな万能で美人さんと別れた。というのも俺は気になるが……でもいろいろ問題もあるのでね。もしかしたらそれが原因。まあ他にも何かあるのかもしれないが――まあとりあえず、何故か仲の良い2人。マジで何で仲が良いかがわからんが。趣味とかも違うだろうし。久梨亜の母なんて親父なんかよりもっといろいろな人がすぐに声かけてきそうなんだが……まあいいか。俺は関係ない。


「えっと――とりあえずありがとうございます。助かります」

「ママはゴウちゃんのお父さん好きだよねー。イチャイチャして再婚しちゃうの?」


 すると焦げたパンを食べている久梨亜がそんなことを母に言っていた。もちろん俺が知っているくらいなので。久梨亜も久梨亜母が俺の親父と仲が良いのは、ずっと前から知っている。そしてそんな茶々をいれているが――まあ母強しである。


「久梨亜に言われたくないわねー。毎朝イチャイチャするために」

「黙れー」

「イチャイチャ」

「黙る!」


 すぐにヒートアップというのか。朝から元気な親子である、っか――久梨亜。話してないで、食べたら学校行くぞ?である。早く食ってくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る