第4話 06時31分

 戸締りと制服のボタンを確認していると、ちょうどいつも通りの時間に俺のスマホが鳴った。


 ♪~


 平日限定学校がある時は毎日俺のスマホにモーニングコールがかかってくる。相手は今留守の親。ということはない。あの親父がモーニングコールをしてきたら―—それは世界が滅ぶときだろう。ちなみに俺のところは先ほども触れたが親父だけ。母親は居ない。って、俺のところの話なんていらないか。そうそう今かかってきているモーニングコールの相手は、幼馴染の――母親だ。幼馴染ではない。幼馴染のだ。今スマホの画面に表示されているが。名前は沓掛くつかけ久実くみさんである。本人曰くと登録してほしいらしいが……俺はフルネーム登録をしている。うん。ここの家庭。ちょっと変わっているんでね。まあそれも後々わかるだろうということで、俺は通学カバンのところへと向かいながら電話に出だ。


「——おはようございます。久実さん」 

『ゴウくん。ちゃんと起きてた?さすがだね。今日から学校ってこと忘れてないわねー。偉い偉い』


 超子ども扱いをするような雰囲気なのは気にしないでくれ。これはこの人のいつも通りである。気にしたら負けというやつだ。俺は一息ついてから返事をする。


「——大丈夫です忘れていません。もうすぐ家を出ますから」

『ちなみに寝坊してもOKだよ?ゴウくん』


 そうそうゴウくんとは俺の事である。五知ごち剛輝ごうきというのが俺の名前なのでね。ちなみに今日から高校2年生である。あれ?これはさっき言ったか。同じことを言ってもなので――じゃ無駄な情報をここで出しておこう。俺の親父は、五知ごちごうという。今は――どこかにぶっ飛んで行っているから、この家には居ないが――この親父が幼馴染の母親とどうも大変仲が良く。親父は「ゴウさん」と呼ばれている。うん。めっちゃ無駄なことだな。数行分の時間を無駄にした。数行分?俺は何を言っているのだろうか?まあいいか。とりあえず幼馴染の母親と会話継続である。


「寝坊すると後々大変ですから」

『ちなみに、久梨亜くりあが待ってるわよー』

「待ってはないと思うのですが――もしかして新学期で心変わりして起きていた利します?」


 俺はちょっとした期待を持ちつつそんなことを言いながら玄関へと向かい。靴を履く。


『寝て王子様のお迎えを待ってるわよー』

 

ダメだった。俺の幼馴染まだ夢の中らしい。ちなみに王子様とは誰の事だろうか?俺ではない。決してない。単なるそこら辺によくよくいる男子学生である。


「——そろそろ起きて待っているってことになってほしいんですがね」

『昨日も遅くまで起きてたからねー』

「寝ろって言ったのに……何してるんだか」


 呆れつつ俺は靴を履き終え立ち上がる。


『ゴウくんが寝かせてくれないー。って、寝言で言ってたわよー』

「……それは嘘ですね」

『嘘だよー』


 力の抜けそうな声が返ってくる。まあこれが幼馴染の母のいつもの事である。朝から何の会話をしているのか。


「はぁ……まあいいやか。じゃ、いつもの学校がある時のように今から向かいます。よろしくお願いします」

『朝ご飯作って待ってるわねー』

「いつもすみません」


 ここで俺が朝ご飯を食べない理由が判明する。俺が朝ご飯を家で食べないのはそういうことである。基本休みの日なら、俺は自分の家で食べているが。学校のある日は、をしに行く必要があるので、昔からこうなっている。あることのついでで、気が付いたら幼馴染の家で朝ご飯を食べることになっていたのだ。


「2分くらいで行きます」

『はーい。早く久梨亜に会いたいのねー。ラブラブねー』

「違います」


 冷静に答える俺。


『まあまあ、久梨亜が聞いたら喜ぶと思うわよ?』

「人を執事のようにしか思ってませんよ。昔から甘やかしすぎた結果ですね」


 過去を少し思い返し――ミスった。と今日も思う俺だった。


『ふふふっー。いいわね。じゃ、ゴウくん気を付けて来るのよー』

「はい」


 ホント。朝のバタバタを忘れさせてくれるようなまったりした声だ。俺はそんなことを思いつつ通話を終了してスマホをカバンに入れる。って、本当はこれで落ち着く、のんびりと――になれると嬉しいのだが。間違ってもここでのんびりしてしまうと、新学期早々遅刻してしまうため。俺は玄関のドアを開けて外へと出る。

 外は――快晴。いい天気だ、新学期の朝というのに完璧だろう。雲一つないからな。そんなことを俺は思いながら鍵を取り出して玄関のドアにカギを締める。戸締り良しである。

 

 それから俺は数軒隣の幼馴染の家へと向かい歩き出したのだった。ちなみに制服のボタンは取りました。たったり座ったりしていたらさらにゆるゆるになったのでね。

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