タイムマシンと博士と助手の話


「助手君!とうとう出来たぞ!」


僕と博士しかいない研究室では、今日も博士のそんなハイテンションな声が響く。


「えっ?いきなりどうしたんですか?」


「出来たんだよ!とうとうアレが!」


「いや、だから一体何が出来たんですか?」


「まぁ、いいからちょっとこっち来てよ!」


興奮した様子で、僕の手をグイグイと引く博士。

何一つ分からない僕は黙って、引かれていく。






そうして、引かれた先にあったのは丸くてデカい球体。


「……博士、これ何ですか?」


「これは、なんと!タイムマシンさ!」


博士はまあまあある胸を張りながら、そう言う。


「……こんなガ〇ツに出てきそうな球体がですか?」


「あぁ、そうさ!」


「……本当に?これがタイムマシン?」


「……何だか信じてないようだから実際に乗ってみよう!」


そう言い、博士はそのタイムマシンという名の球体に乗り込んでいく。

僕も少し戸惑いながら、中に入る。


中はコックピットのような感じになっていて、意外としっかりとしていた。

それに中から外の様子が見えるマジックミラーのようになっている。


「試しに3年先とかに飛んでみようかな。」


「これって博士、実験とかしたんですか?」


「……よーっし、やっていこうか!」


「やってないんですね、博士。」


「……いや、まぁ、理論と設計通り行けば、上手くいくはずなんだよね……。」


「いくはずって……、はぁ、ホント博士という人は……。」


「まぁまぁ、いいじゃない。何事も実際にやってみないと分からないからさ!」


「博士のその自信は何処からやってくるのやら……。ま、そこまで言うのなら付き合いますよ。」


「うん!それでこそ助手君だ!じゃあ、行ってみよう!」


「はい」



そうして、博士は手元の機械を操作する。



「じゃあ、3年後にレッツゴー!」




すると、外の景色が急に真っ暗にフェードアウトしていく。


「は、博士?こ、これ大丈夫ですよね?」


「う、うん、多分大丈夫なはずだよ?」


「こういう時の『多分』は怖いですよ!もう、なんかあったら博士の事恨みますからね!」


そう怯えながら待っていると、また急に辺りの景色がパッと映る。


「……おっ?上手くいったのかな?」


「辺りの景色は全く変わってないですね。」


「まぁ、3年後だからね。そんなに変化無いかもしれない。」


「……それ、本当にタイムスリップしたか分からなくないですか?」


「いや、この世界に私たちとは別の私たちがいたら、ちゃんとタイムスリップしたか分かると思うぞ。」


「確かに。じゃあ、ここから出て探しましょうかね。」


「そうしよう。」



そうして、僕たちはタイムマシンから出て、この世界の自分たちを探すことにした。


やはり、3年の月日ではあまり変わってなく、いつもの研究所内も迷わなかった。

そして、いつもいる実験室に向かおうとした時、声が聞こえてくる。



「おっ、もしかして、いるのかもしれないな。」


「そうですね。そーっと行ってみましょう。」



忍び足で、そーっと近づいていく。

そして、覗き込んで見てみようとしたその時。



「えっ?」



バッと博士が僕の目を塞いでくる。



「は、博士?何をしてるんですか?見えないんですが。」


「あ、いや、君は見ない方が良いかなと思ってね。」


「えっ?どういうことですか?いいからちょっと見せてくださいよ。」


「あ、ちょっと!暴れたらバレてしまうよ!静かにしてて!」


剝がそうと思ってもギューと押さえつけてくる博士。

それにそんな事を言われたら、落ち着かないといけなくなるじゃないか。


「よっし、じゃあ帰ろうか!ちゃんと実証できたことだし。」


「いや、僕見てないんですけど。」


「いいからいいから!帰ろう!」


「あ、ちょっと、博士!」


また、グイグイとタイムマシンの方へ手を引かれていく僕。

博士は何故か顔が真っ赤だ。



そうして、タイムマシンの方へ帰ってきた僕。

有無を言わさず、現代の方へ戻されてしまった。



「で、結局、博士は何を見たんですか?僕に見させられない光景って一体……?」


「ま、まぁまぁ、その話はもういいじゃないか。ちゃんとこのタイムマシンの効果が実証されたのだから。」


「え、いやいや、でも……」


「あっ!そうだ!この間の実験結果を纏めておくのを忘れていた!あぁ、忙しい忙しい!」


「あ、博士……」


そう言い、博士はまた別の部屋へ向かって行ってしまった……。



結局、博士が未来で見た光景って何だったんだろうか?

あの様子だと絶対に教えてくれないだろうな……。




そう思った僕は、諦めながらさっきの実験で使った用具を洗いに行くのだった。








********







言える訳がない、言える訳がない!




未来で見た光景が、多分私と助手君との子供であろう子と一緒に私と助手君がイチャイチャしながら食事していたなんて!!!



こんな事、助手君に言える訳がない!




私は真っ赤に染まっている顔を手で押さえながら、そう思う。




……で、でも、将来こんな未来が待ってるなんて……。

う、嬉しすぎる……。

こ、これはこれからの生活が楽しみだ!




そうして、私は顔を真っ赤にさせながらもニヤけながら、別の実験室へ向かうのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る