おやつを食べる博士と助手の話


「うぅー、お腹空いた~。」


僕と博士しかいない研究室では、今日も博士の情けない声が響く。


「うーん、まぁ、時間も時間ですしおやつにでもしましょうかね。」


「お、本当かい。」


「えぇ、そう言えば以前買って冷蔵庫に入れっぱなしになっていた苺があると思うのでそれを食べましょう。」


「……それ腐ってたりしない?」


「買ってきたのが2日前なので多分大丈夫でしょう。それじゃあ、ちょっと持ってきますね。」


「う、うん、分かった。」


少し心配そうな顔をしている博士を余所目にキッチンへと向かう。


うん、大丈夫そうだ。

腐っていない。


僕は苺を一回ボウルに入れて水洗いをして、お皿にうつして持っていく。



「博士持ってきましたよ。」


「おぉ、これは美味しそうだ。……腐っていないよな?」


「えぇ、大丈夫ですよ。ちゃんと確認しましたし、水洗いもしましたから。」


「それなら良かった。じゃあ、早速頂こうかな。」


「あ、1人6個ずつですからね。」


「分かってるよ。」


そうして、博士は苺を一粒口に入れる。


「……」


「……?急に黙り込んでどうしましたか?」


「……」


「博士、大丈夫ですか?」


「……」


「も、もしかして腐っていましたか?」


そう言うと、博士は首を横に振る。


「違う?それじゃあ、どうしたんですか?舌でも噛みました?」


すると、博士は近くにあったスケッチブックにペンを走らせていく。


「?」


そして、書き終わるとこちらにドンと見せてくる。


「えっと……『苺が思ったよりも大きくて噛めないから、1回出したい。だから少し後ろを向いてくれ』、あ、なるほど……、分かりました……。」


僕は書かれた通りに後ろを向く。



「……博士、大丈夫ですか。」


「あぁ、もう大丈夫だ。こっちを向いても良いよ。……いやー、まさか苺がこんなにも大きいとは思ってもいなかったよ。」


「確かに立派なものだとは思っていましたが、まさか噛めないほどとは……」


「私もびっくりだよ。口も動かないから、苺を出したいのに君に後ろを向いてもらう事も出来なかった。」


「それは察しが悪くてすいません。」


「まぁ、いいよ。それにしても途中で筆談を思いついた私はやっぱり天才だな!」


「それじゃあ、この苺、食べやすいように小さく切ってきますね。」


「えっ、無視?」


「ん?なんか言いました?」


「い、いや、何でもない。」


「それじゃあ、切ってきますね。」



そうして、僕は何故かシュンとしている博士を余所目に苺を切りにキッチンへと向かう。



そして、苺を2人で美味しく食べたとさ。

……何故か僕が食べた苺の数4個だったんだけど。



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