DOPE【ドープ】 麻薬取締部特捜課
木崎ちあき/ビーズログ文庫
#1 doper-①
#prologue
虫の知らせ――などというものは、一切なかった。
その日、
一軒家の自宅に到着し、にわか雨に打たれながらタクシーを降りた。妻はさすがにもう寝ているだろう。起こしてしまっては申し訳ない。身重の体に負担をかけないよう、陣内は爆弾処理班の隊員のような慎重な手つきで鍵を回し、足音を忍ばせて部屋の中に入った。
雨音だけが響き渡るリビングは一切の
血だ。
蛍光灯のスイッチを入れた陣内は、それが血液であることに気付いた。北欧調の白い
酔いが一気に
二人分の命を宿した彼女の肉体は、
それでも、認めたくなかった。赤く染まった指先で、陣内は最後の番号を押した。
「0」ではなく、「9」を――――
「――陣内さん!」
名前を呼ばれ、陣内は目を覚ました。
はっと顔を上げて辺りを見回す。真っ先に目に飛び込んできたのは、スリープモードに入ったパソコンのディスプレイ。見慣れた光景だった。ここは自宅のリビングではない。職場だ。
また昔の夢を見ていたようだ。同僚のキーボードを
「大丈夫っすか、陣内さん」
後輩の男が陣内の顔色を
「ずっとビクビク
「……ああ、嫌な夢見た」
「魚になって海の中泳いでたら、いきなり漁師に釣り上げられたのよ。そんで、まな板の上に載せられてさぁ」
「いや何すか、その夢」
「やー、助かったわ。お前が声かけてくれなかったら、俺、あのまま
陣内はわざとらしく
夢見が悪く、寝た気がしなかった。「ちょっと仮眠してくるわ」と席を立つ陣内に、柴原は
「そんなんじゃ、新人に示しがつかないっすよ」
「……新人?」
「今日、新人が入ってくるって、
新人ねえ、と陣内は
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