日本語ってむずかしいね、モサモサ…… ~パチもんスキルで異世界を生きていくことになりました
オーク_猫
タイトル未定
プロローグ
第1話 神に呼ばれて……ないようですな
部屋でソファーにバフッと座り、スマホを弄ってしばらくすると、何か違和感のようなものを感じて画面から目を離した。
そこにはどこまでも続くかのように奥行きのわからない真っ白な空間が視界いっぱいに広がっていた。
俺の部屋は白の壁紙とフローリングの木目の部屋だったのだが……。家具も今座っているソファー以外何も無くなっている、というよりも部屋が無くなったと言うべきか?
いや、それよりもここはどこなのだろうか? こんな何処に光源があるのかもわからない真っ白な空間は今まで見覚えが無いのだが……
カタ……と背後から物音が聞こえ、そちらへと顔を向けると金髪の女が何やら小首を傾げて不思議そうな顔をしてこちらを見つめていた。
見た感じ海外の方のようだが果たして日本語は通じるだろうか? 自慢ではないが俺の頭では英語すら意志疎通が出来る気がしないので祈るように話しかけた。
「あの、すいません。ここは何処なのでしょうか?」
ビクリと震え、なにやら考えるような顔をして暫しの間が流れる。
これは……通じていないと見るべきか? と落胆しかけたところで金髪の女性がようやく口を開いてくれた。
「に、ほんご……?」
おおっ! 求めた答えではないが発音は辿々しくも日本語と理解してくれたようだ。
これなら相手におんぶに抱っこで翻訳は任せても良いよな! と言うわけで頑張ってくれ見知らぬ金髪女性よ!!
「はい、日本語です。このソファーに掛けて、部屋に居たはずが、いつの間にか、ここに来てしまった、ようで……」
なるべく相手に聞き取りやすいようにゆっくり目に話しかけたが、自分で言ってて何言ってんだ? と思ってしまい、後半部分が尻すぼみになってしまったがたぶん声は届いていると思う。
「ソファー……」
「ええそうです。自室で、このソファーに、座っていたはずが、なぜかここのお部屋? に来てしまったよ……はぁ!?」
そうソファーを指差し再度説明していると、なぜか金髪女性が素早く土下座していた。
「すません! やちまたゲスっ!!」
「……はっ! いやちょっとなんで土下座?! なに仕出かしたのか知りませんが顔をあげてください! あとその語尾なんだ? どこでその知識仕入れた?」
イントネーションもさることながら三下な語尾(俺のことをゲス呼ばわりしたわけじゃないよな……?)に気を取られ呆気に取られてしまったが、とりあえず身を起こしてくれた。
「それで、何をやってしまったんですか?」
「あのぉ~……ソファー。ほしくて……」
うん? このソファーが欲しくて……?
このなかなか良いお値段ながら一目惚れして購入し、今日届いて設置が終わって、飲み物取りに行ってた時間も合わせて十数分しか自室に滞在していないこのソファーが?
「しんかい、とりよせ、ついてきた」
しんかい? 深海か? ……いや、さすがに惚けようもないか、こんな真っ白な空間でしんかいなんだから神界だろうな、知ってた知ってた。
なんか面倒事押し付けられそうだから察した当初からすっ惚けようと思ったけどもういいや。なんだよソファーて……
どうせコイツは駄女神で、ソファー欲しさに召喚したものの、俺が座ってるの気づかずそのまま呼び出したってことなんだろ?
「えぞー、どーき、おくれる、げいん」
はいはいなるほどなるほど、設置したばかりの新品を狙って召喚したは良いものの、神界からその様子を伺うと映像が遅れるせいで俺が座ってセット扱いとなった状態で呼び寄せた……と。
「つまりは窃盗犯か」
「マジサーセンしたぁ~!!」
コイツはいったいどこで日本語を習得したのだろうか? そういうところも駄女神たる所以なのだろう。
「なんで人ん家のソファー狙ったんだ? 販売店なり製造元から盗み出せば人が座ってない状況だったろ」
気になったところを土下座駄女神に聞いてみた。
「かんしカメラ、うつる、ちきゅー、かみ、ばれる、おこる」
ほんほーん、予想以上に情けない理由だな。証拠映像が残るせいか神が監視カメラ越しに見てるのか知らんが、それを避けるために個人宅から盗み取ったのか。
「それも失敗したんだし、これ以上怒らせる前に帰らせてもらうわ。あっ、言っとくけどソファーはやらんぞ?」
「…………ムリ」
「はははっ、コイツぅ~冗談はその空っぽのオツムだけにしてくれよー? 地球の神に怒られたいのぉ~??」
「……だす、かたん。いれる、むつかし。ばれて、けしずみ」
うん~?? 出すってのは盗み出すのは簡単で、入れるってのはここから元の世界に戻すのは難しいってことでぇ~。地球の神に察知されて送り出したものはけしずみ? あぁ、消し炭…か…………?
「はああぁっ!? 消し炭っ?! 消し炭どゆことっ!? 良純の間違いじゃ?! 意味わからんけど良純だよねっ?!!」
「マジサーセン、はらきるか?」
軽く顔の前に手を上げての謝罪をし、腹の前をスッと手を横切らせるジェスチャーをするのかこの駄女神。
「軽いんだよっ! なんでここの謝罪が軽いんだよっ!! 腹切ってもなんの解決にもならんわっ!」
「だじょぶよー? かみ、しなない」
「ますます意味わからんわアホっ! せめて死んで誠意見せろ! それより地球の神に交渉するなりしてお家帰してっ!!」
「おー……それムリー」
「なんでっ?!」
「たいのー、はらえ、いわれて、もぜんばらいよー」
たっ、たいのー? 滞納のことか……? なんの? てかさっきから馴れ馴れしくなってんなこの窃盗及び誘拐犯。
「なんの滞納か知らんけどさっさと払って交渉してこいこの駄女神」
「できたらやてるよー? ないそでふれないー。それにいほーしちょー、ぜたいいわれる、それもとこまるよー?」
金かはわからんが滞納を解消するまで交渉はムリ、だが解消手段も無し。おまけに違法視聴か? それが地球の神にバレているのかその事を問い質されるとますます交渉どころじゃなくなる……と。
いや、その件に俺関係ないやん……帰りたい。俺、お家に帰りたいよ……
「これまでの滞納を詫びて今後違法視聴しないとでも言って怒られてでも交渉してこい、俺に無関係すぎる」
「あー……そのてもうつかたねー。それやたら、このりょいきかみなりドーンよ? おかげでウチのかぐなくなたねー。ムカつくよー、だからゴミなげてたら、かてにけしずみなる、かわてたね」
もう使用済みかよ……。てか雷? それがドーン? 交渉についていくのも億劫なのにここにいても危ないの? おまけに今日届いたばかりのソファーとサヨナラの危機なの? てか消し炭もお前のせいかよ。
「それにあのじじー、かおあわせるの、じゅしんりょーはらえしかいわないよー。どうがやほんくらいタダでみせろよけちんぼー!」
おや? 地球の神とやらはN○Kの回し者の可能性が出てきたぞ? てか盗人猛々しいなこの駄女神。
「まぁなんでも良いから俺とソファーを安全なところに待避させてから交渉してこいよ」
「あぜんなとこー?……………………ともだちいないのムリのことよー……」
あー……金もなく集りそうな手癖の悪い奴と交流持ちたい奇特なのなんてそうそうおらんよなー。
それにしてもどうすりゃいいんだ? 留まるのは危険、待避もムリ、雷落とされるようなヤツと同席もヤバいだろうし……
「それに、あのじじーせきょうながいよー」
ん? そりゃそんだけやらかしてたら説教も長くなるだろうよ、当然だろ。むしろ引くほど怒られろ。
「いちにちつづくよ、せきょう。そのあいだにしょめつするね、それこまるよー」
ふーん、むしろ一日で終わるんだ。もっと長くてもいいのに。
それよりしょめつ? しょめつしょめつ……書滅?……いや消滅か?…………だから何が?
「なにが消滅するんだ?」
「んー? もちろん、おまえねー。しんかいのしんい、あてられ、じょーかみたいなあれなー。ここでしょめつすると、いかいかしてすめなくなるよー……」
へー、お前が消滅すんのか……いや俺かっ?!! なんでっ!? 俺なにも悪いことしてないのになんでっ!? 神威!? 浄化?! いかいかってなに?! まさか異界化?? 浄化されてんのになんで異界化してんだよ!
知らんがなっ!! 俺が消滅した後の事なんて知らんがなっ!!!!
「しょめつするくらいなら、けしずみなてよー。あれてきょりょうまえばらいよ、こまるよー」
しかも自分都合の所業のミス棚上げして消し炭になれとっ!? アホかお断りじゃボケえっ!! 消し炭になるくらいならここで消滅して異界化させて撤去料で苦しめどアホ!! そして家無き子になれ!!
いややっぱ消滅したくないよ俺っ!!
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