三六話
倒れている四人パーティーに対し、俺は『エリクシール』+『ラージスモール』でみんな一気に全快させつつ起こしてやる。
「――あ、あれ? 俺たち生きてる……? 瀕死だったのに……」
「ああ、それなら魔法で全員治しておいたからもう大丈夫だよ」
「「「「……」」」」
ん? 盾を持った男を筆頭に、みんな呆然としている様子。俺何か変なこと言ったかな?
「す、すげえな、あんた。高等な攻撃魔法だけじゃなく、同等の回復術も使えるのか……。礼を言わせてもらうぜ。俺はリーダーのファグだ」
「あ、ありがとう。僕の名前はね、ミアっていうんだっ」
「わしはキーンじゃ。お前さんのおかげで命拾いしたぞいっ」
「あたしは、リズっていうの。あなたは命の恩人ね……」
「喜んでもらえてよかった。それじゃ、お大事に――」
「――ま、待ってくれ!」
俺はその場から立ち去ろうとしたが、リーダーのファグという男に呼び止められた。
「い、いや、お礼の言葉を貰ったし、それでもう充分だから……」
「そ、そうじゃなくて、厚かましいかもしれねえが、あんたにお願いがあるんだ……」
「お願い……?」
「その、お、俺たちの仲間になってくれねえかなって」
「仲間……」
「あんたほど強いやつは正直、初めて見た。イモータルモニターは、一度絡まれたらもう助からないって言われてるくらいヤバいモンスターなのに、あんたはそれを一人で倒しちまった上、回復術も凄い。そんな優秀すぎる人材、見逃せるわけがねえ。どうか、なんでもするから頼む……!」
「…………」
あれま、リーダーがひれ伏しちゃってる。なんか、またとんでもないものを倒しちゃったみたいだな。でもよくよく考えたら、なんせ超高級モンスターの群れだし、一匹の虐殺級モンスター並みの強さだった可能性もある。
「僕からもお願い。あの誰にも媚びないファグがここまでするなんて思わなくて、感動してるってのもあるけど……。僕でよければあなたのお嫁さんになるから……!」
ミアっていう僕っ子も同じようにひざまずいてきた。おいおい、貞操と引き換えとか、俺はどこかの皇帝かなんかか。
「わしからもお願いする。この通り頭はツルツルだが、場を色んな意味で明るくできる上、鍛冶の腕では誰にも負けんぞ!」
キーンと名乗った男の台詞で周りから失笑が上がる。確かにムードメイカーな感じがするし悪くないな……っと、俺ってやつはもう流されつつあるな。ちょろすぎだろ。
「あたしも、よかったらあなたの恋人になるから、お願い。この世界では、強い人物ほど頼りになる存在はいないわ。だからこそ、リーダーのファグがプライドをかなぐり捨ててお願いしてるの。どうか、それをわかって頂戴……」
色っぽい女性のリズが懇願してきたことで、俺はますます断りにくくなった。
「でもなあ……俺としては、仲間や恋人っていうものはさ、出会ってすぐ決められるほど軽いものじゃないって思うんだよ。気が付けばそこに信頼があったっていうほうが素敵じゃないかな?」
「「「「……」」」」
がっかりしつつもみんな納得した様子だったが、俺はさらに続けて言い放った。
「だから、仲間になるかどうかは置いといて、まずは傭兵として同行するってのはどうかな?」
「「「「「お……おおおぉっ!」」」」」
ファグたちの歓声が耳に届いたとき、こっちまで嬉しくなった。
「自己紹介が遅れたが、俺はユートっていうんだ。よろしく」
「「「「よろしく!」」」」
なんとなくだが、彼らとなら上手くやっていけそうな気がするな……。
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