三四話
「た、助けてくれえぇぇっ!」
「「「「「嫌ぁーっ!」」」」」
俺はそのあと、仮面を剥いだ偽仮面とその取り巻きを『ストップ』で宙に並べて、さらに『グラフィティ』という魔法を作り、こいつらの今までの悪行を宙に書いてみせた。
連中は言い逃れしようとしても『コンフェッション』がかかってるから嘘がつけないし、俺には《仮面の英雄》というカリスマ性が上がる称号もあるから有利だ。
不良グループのような、修正ができないくらい捻くれた連中はともかく、基本的に学校の生徒たちはこいつらより俺のしたことを信じるってわけだ。
「ね、ねえ見て、あれ……」
「う、嘘。なんて酷いことをするの!?」
「仮面の英雄さまを騙って犯し放題、殺し放題とか……人間じゃないわ、こいつら」
「おい、違うならなんか言ってみろ!」
「……そ、その通りだっ! 僕たちは犯罪者だし、弁解する余地はない!」
「「「「「この落書きは正しいです!」」」」」
あいつら、何か弁明しようとしてもできないから汗ダラダラだな。
「素直に認めやがったぞ!」
「よーし、こんな連中、殺っちまおうぜ!」
「おうよ!」
「賛成!」
「「「「「殺せっ!」」」」」
「…………」
正義の炎ほど怖いものはない。窓際に集まった生徒たちは次々となんらかの武器やスキルを使い、宙に浮かんだ極悪人どもをじわじわと追い詰めていった。
「「「「「――うぎゃあああぁぁぁっ!」」」」」
うわ……俺がやっておいて言うのもなんだが、これはあまりにも無惨すぎて吐き気さえ催してくるな。とはいえ、いいことをしたあとは気分がいい。
お、《ダークヒーロー》っていう称号を得たぞ。どんな効果かと思ったら、悪党にも支持されやすくなるんだそうだ。
まさか、あの不良グループにも? 俺は連中の反応を確かめるべく、『ワープ』で教室へ戻ることに。
『み、皆さまに報告がありますっ。仮面の英雄さまが、ご自身を騙っていた偽仮面の男を見事に退治してくださりました!』
着いた途端、天の声が耳に届く。あれ、やたらと情報が早いし、まるで近くから見てたみたいだ。そういえば俺が偽仮面から助けたあの子、頬を染めながらありがとうございましたと言って急に消えたんだが、タイミング的にまるで同一人物のような……まさかな。
ちなみに、不良グループはみんな至って不機嫌そうだった。そういや、よく考えたらこいつらは悪党っていうよりクズだったな。懐かれても困るし安心した。
そのあと俺は【ダストボックス】へ戻ると、ラビが目を輝かせて弾むように駆け寄ってきた。
「おかえりなさい、ユートさまっ」
「ああ、ただいま、ラビ」
「クンクン……あれれ……」
「ん、どうした?」
ラビが訝し気に俺の体の匂いを嗅ぎ始めた。な、なんだ……?
「以前嗅いだことがある人と、同じ匂いがしますねえ」
「っ!?」
おいおい、それってまさか、例の子の匂いか? そういや、今日助けたあのお下げ髪の子……以前廊下でぶつかった子だった。衝突したときとは髪型が違うので気が付かなかった。
そんなこともわかるなんて、兎って相当に嗅覚が発達してるんだな……。
「ユートさまあぁ……」
「……ごくりっ……」
な、なんかラビの背後にゴゴゴッて文字が浮かんでるような……。
「ひしっ!」
「えっ……」
ラビに怒られるかと思いきや、抱き付かれた。
「私の匂いでこの人の匂いを消しますので、ユートさま、一日中抱き付かせなさいっ!」
「お、俺は抱き枕か………」
「ユートさまあ?」
「は、はあぁ、ラビさま、仰せのままに」
「あうあう……ほかの人の匂いが消えるまで、絶対に放しませんからねえ。すりすりっ」
「ははっ……」
まったく、ラビは独占欲が強い子だなあ……。
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