三十話
『生徒の皆さま、おはようございます! 前回学校を救ったあの仮面の英雄さまが、またしてもやってくれました。食糧難の問題も解決していただき、私からもお礼を言わせてください。ありがとうございまふっ! か、かんじゃいまひたー……』
「……ははっ……」
あくる日の朝、まだ薄暗いうちから俺は天の声に癒されていた。
いやー、正直ガラじゃないと思ってたが、いいことをするのって意外と気持ちがいいんだな。
そうだ、前回同様に仮面の男が天の声から褒められたってことで、不良グループがさぞかし不機嫌かと思いきや、逆に揃ってニヤニヤしていた。な、なんだ? 気味が悪いな。
俺は天の声を聞いたあと、すぐにでも落ち着ける【ダストボックス】へ戻るつもりでいたが、あいつらが機嫌を良くしている理由がどうしても知りたくなったので、しばらくここでこっそり様子を窺うことに。
それから少し経って、虎野たちが煙草を吸いながらリラックスした様子でしゃべり始めた。
「プハー……ふむ。仮面の男は早くも、化けの皮が剥がれた。あの間抜けな天の声の主はそんなことも知らないのだな」
「っ!?」
な、なんだって? 俺は虎野の台詞に衝撃を受ける。仮面の男の化けの皮が剥がれただと。まさか、こいつらに俺の正体を知られてしまったっていうのか……?
「ボスウ、やっぱりおいらたちの見立ては正解だったぜ。仮面の男がまさかあんな非道なやつだったとはなあ」
なっ……。
近藤の台詞でさらに緊張が走る。あんな非道なやつって、まさか、俺が一方的にズタズタにした原田との戦いを見られていた……?
「本当よね。今までバカみたいに英雄面してたくせに、その正体が最低のクソ野郎でしたーとか、超受けるー。キャハハハハッ!」
浅井が顔を赤くしながら笑い転げ始めたが、その時点で俺は逆に冷静になっていた。
よく考えると、もし俺が仮面の男だってバレたならこいつらに余裕はないはずで、露骨に警戒心を覗かせてくると思うがそれがまったくないんだ。
「散々悪いことをやってきた俺たちから見てもよ、マジで胸糞わりいよな……。自分が英雄だってことをひけらかして物を強奪したり女を犯しまくったりしてるらしいし、浅井さんの言う通り最悪のクソ野郎だぜ……」
「いやはや、学校を守ったり食料問題を解決したりしたのも、全てはこの鬼畜行為のためだったというわけですか。これはまさにアンビリーバボー、もしくはオーマイガッですかねえ。アヒャヒャッ!」
「…………」
影山と永川の言葉を聞いて、こいつらが俺について話してないってことはよくわかった。
ってことはつまり、俺のほかに仮面を被った男がいて、そいつが虎野たちの言うように英雄の振りをして好き放題やってるってことだ。
仮面を被って、なおかつ制服姿であれば、誰でも英雄に成りすますことができるわけだしな。ふざけやがって。俺はこんなド畜生のために頑張ってきたわけじゃないぞ。
これは絶対に放置なんてできないし、必ずや犯人を見つけ出して原田のように地獄へ突き落としてやらないとな……っと、その前に『フローズン』を『ラージスモール』で弱体化させ、虎野たちに凍えそうな空気を放ってお仕置きしておこう。
「「「「「さっ……さぶっ……!?」」」」」
うわ……手加減したつもりがみんな青い顔で震えてるので、【慧眼】でステータスを覗いたらHPが半分以下になっていた。
もし『フローズン』じゃなく『エターナルスノーデス』のほうを使っていたら、効果を小さくしても間違いなく全員死んでたな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます